11月11日(金)から12月24日(土)に渡って代々木上原のMDSギャラリーで、坂茂環境情報学部教授と坂研究室の取り組みを紹介した展示が行われている。MDSギャラリーも坂教授による設計によるもので、会場では坂研究室による紙管(しかん)を用いた建築の数々が紹介されている。

会場となっているMDSギャラリーは、94年に設立された「紙のギャラリー」で、紙管と呼ばれる紙の筒が立ち並ぶ特徴的な構造だ。代々木上原駅から徒歩10分程の井の頭通り沿いに位置し、高い天井と開放的なつくりが目立つ。今回はギャラリー最後のイベントとして、建物と同様に紙管を用いた災害支援の建築などが様々な形で紹介されている。

坂教授は、ルワンダでの難民キャンプのための紙管を用いたテントの考案を行ったことを始め、阪神淡路大震災(1995年)、トルコ西部地震(1999年)、インド西部地震(2001年)、新潟県中越地震(2004年)、インド洋大津波(2004年)などで被災地のための施設を設ける取り組みを行っている。坂研究室でも、災害支援の現場で活動するなど、学生も様々な場面で活躍している。

ルワンダの難民キャンプでは、木材を用いるテントが森林伐採に繋がったことから、紙管のフレームを代用とした。さらに、阪神淡路大震災の外国人向けの避難施設では紙管を壁面に使い設置した。この、紙管によるログハウスは発注から完成まで10日程という機動性の高さも持っている。

紙管を用いるメリットは、仮設の施設を取り壊した後に再利用できることや、紙管工場が世界各地に存在しているため多様な紙管が安く入手できること、災害時は通常の建材が高騰しやすいこなどにあるという。ウレタン系の塗料で加工すれば湿気を防ぐことができ、管の中に紙くずを入れれば寒さを防ぐことも可能と十分な機能性を持つ。会場のMDSギャラリー自体の垂直の荷重も、立ち並ぶ紙管によって支えられている。

新潟県中越地震の際には、避難所の体育館の中に紙を用いた閉鎖空間を構築することで、高い天井や夜間も点いていた照明による不安の解消を図り、固い床の体育館であるにも関わらず畳の部屋にいるような安心感を演出した。スリランカでの津波の被害を受けた村の復興住宅では、現地の風土に適した1つの屋根の下が2つの棟に分かれる構造を取り入れ、日陰の空間を作り出している。

今回の展示物はSFCの学生によって建築・製作されており、これは建築に特殊技能を必要としない建築ならではのこと。坂研究室の南木隆助さん(環3)は「学生のうちに、実際に建築物を建てられることは少ない。構造の勉強にもなり、建築の過程で生じる問題を解決することも貴重な経験になった」と、SFC CLIPの取材に対して語った。

会場ではこの他、SFCの坂研究室などの建築物の模型、紙管でできた椅子、普段は入れないギャラリーのバックヤード、MDSギャラリーの過去のイベントの様子などを見ることが出来る。なお、日・月曜・祝日は休館日となっている。

MDSギャラリー 〒151-0065 東京都渋谷区大山町36-18
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