ORF初日の22日(火)、田中浩也環境情報学部准教授が主催したセッション「情報革命からものづくり革命へ」が行われた。このセッションでは、田中准教授が目指すものづくり革命と、ものづくりの未来について参加者を巻き込みながらの熱い議論が交わされた。

FabLab ものづくりのためのインフラとして

田中准教授は鎌倉でFabLabというものづくり運動を展開するほか、研究室では「作る文化をつくる」をテーマに、ものづくりのプロセスを開発・洗練する研究をおこなっている。
 FabLabとは、おおまかに言うなら「3Dプリンタやカッティングマシンを備えたオープンな市民工房(公共施設)」だ。図書館が知識を市民に広めるように、Fablabはものづくりを市民に広めていく。そんなFabLabはすでに世界20カ国以上50か所以上に展開しており、海外では市民がものづくりをするという状況が半ばあたりまえとなっている。

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世界に押し寄せる「ものづくり」の波のなかで鎌倉に登場した日本初のFabLabは、20世紀を通じて大量生産社会がとりこぼしてきた「個人のためのデザイン」を実現するための施設を目指す。「ものづくりを市民へ!」という意気込みのもと活動を展開するなかで、見えてきたものは何なのだろうか。

UserからMakerへ 情報革命をふまえた「21世紀のものづくり」を考える

これからのものづくりを考えるにあたって、やはり「情報革命」は避けて通れない。セッションではインターネットを「情報発信の民主化」、FabLabを「ものづくりの民主化」ととらえ、オープンデザイン×デジタルファブリケーションを礎とした「21世紀のものづくり」の在りかたが提案された。

(無題)「21世紀のものづくりのキモ」となるコンパクト3Dプリンター

「20世紀のものづくり」では大量生産-大量消費-大量破棄の流れを前提として、つくるひととつくらないひとの極端な分断が行われた。これはいうなれば「職能の分断」と言うべきものであり、ものづくりの世界において、メーカーとユーザーはきっぱり区別されていた。しかし、情報革命によってすべてのひとが情報を手に入れられる状況になった現在、ものづくりの技術や知識がユーザに行き渡らないことにも疑問が投げかけられている。
 そこでFabLabは、ものづくりにおけるメーカーとユーザーの垣根をなくすことを目指す。これまでユーザーでしかなかった人が手軽にメーカーになれるという「21世紀のものづくり」を理想として活動を展開する。

インフラゆえに多様 FabLabが展開するさまざまな活動

市民が利用することを前提としたFabLabの目的は、オープンなものづくりの場の提供ということだけにとどまらない。インフラであるがゆえに、さまざまな文化活動の軸となることができる。適正技術(途上国への技術支援)、教育、まちづくり、研究など、FabLabが活躍できる場は多い。
 セッションでは、こうした「ものづくり」の可能性について「分断」をなくすということをかかげ、ホスト-ゲストの垣根をなくした議論が展開された。ワークショップ形式で、ゲストも積極的に議論に参加する姿は未来の「ものづくり」の姿に重なって見えた。さながら「ものづくり革命」がはじまる予感を感じさせるセッションであったと言えよう。

垣根をこえて……

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参加者も活発に意見を出し、プレゼンまでおこなった今回のセッション。ある参加者は「わからないことがたくさんで、なにを言えばいいのか見当もつかなかったが、なにか言ってみるとそこから議論が展開していくのがおもしろい」と話していた。スキルを持った人が「教える」ことも重要だが、そうした垣根をこえたコミュニケーションから生まれることも確かにあるようだ。