4月20日(月)、学生ITベンチャー Goods株式会社は、生協食堂やコンビニから各教室へ商品を配達するサービス、「ラビデリー」をリリースした。Webサイトでほしい商品を選び、自分が受け取りたい教室を指定すると商品を届けてくれる。生協が閉店する18:30から21:30まで営業。本当にこのサービスは便利なのか? SFC CLIP編集部が実際に使ってみた。

まずは会員登録 購入までの流れ

生協のメニューやコンビニのパンやホットスナックが並ぶ。

まず購入までの流れを説明しよう。最初にサイト上部の新規会員登録から会員情報を登録する。表示される入力項目は全て必須だが、特に電話番号はあとで必要になるので、普段つかっているものを登録しよう。
 次にトップページ、もしくは[ジャンルで探す]ページから商品を選択する。購入できるものは最寄りのコンビニ「スリーエフ遠藤店」の商品で、食べ物や飲み物、文房具がある。また、19:45まで食堂のテイクアウト商品の配達も行う。アルコール類の販売は行っていない。
 商品が決まったら、サイト右上の決済ボタンから購入画面に進む。ここで商品がなかった場合の対応と届け先教室を選択する。決済方法は現在、代金引換しかない。また詳細入力フォームで、自分がいる席や服装を伝えることでより細かい届け先を指定することができる。
 

本当にラビデリーは30分で届くのか

今回は「商品がなかった場合、電話連絡後に代替商品を購入する」を選び、ι11教室を届け先に指定した。待機すること20分、配達員の方から電話がかかってきて、コーヒーが売り切れているとの報告。類似商品をいくつか提案されたので、同じメーカーのカフェオレを注文する。また数分後にホットスナックが売り切れているという連絡が来たので、同じように類似商品を頼んだ。
 さらに10分後、ついに商品が到着。商品の代金と配達料216円を払う。注文から30分強、キャッチコピーの「30分でお届け」に偽りはなかった。届いたホットスナックはまだ温かかった。

https://sfcclip.net/wordpress/wp-content/uploads/2015/05/uketori.jpg受け取りの様子。ちゃんと指定した教室に届いた。

ちゃんともうかってますか? 配達員さんに聞いてみた

サービスが始まってから約10日、注文は来ているのだろうか。配達員の方に聞いてみると、「多くて日に3件ほど」とのこと。1回の配達が216円なので、1日の売上が多くて約600円、もうかっているようには思えない。大丈夫なのだろうか。率直に疑問をぶつけてみると、「リーダーはこのサービスで本格的に利益を出す予定はないようです。これをもとに何か新しい事業を起こすらしいです」という答えが返ってきた。
 ということは、ラビデリーはその事業のための大掛かりな実験なのだろうか。ラビデリーの真のねらいはなんなのか。SFC CLIP編集部はラビデリーを運営する株式会社Goods代表取締役、石川聡彦さん(東京大学工学部・3年) に取材した。
 

ネットの上に新たな地縁を築く ラビデリー運営 石川聡彦さん

— あまりラビデリーで利益を出す予定はないという話を聞きました。それでは、このサービスは一種の実験なのでしょうか?

確かに利益が目的ではありません。ただ実験とも少し違います。僕たちには新しいサービスのビジョンがあって、そのサービスの最初の一歩がこのラビデリーです。ラビデリーを皮切りに、今後いろいろなサービスをリリースする予定です。

— 新しいサービスのビジョンというのはどのようなものですか?

一言でいうならば「C2C助け合いアプリ(C2C: Consumer to Consumer
の略語。消費者同士の取引を指す)」によって、インターネット上に日本の古き良き「むら社会」をつくりあげることです。
 手紙がメールに、商店街がアマゾンや楽天にとって代わられたように、いまいろいろなものがネットの上で合理化され、代替されていますよね。そのなかで、いまだ代替されず、消えていこうとしているのが、地域の付き合いとか助け合いです。そういうものは、これからどんどんなくなっていくというのが一般的な意見ですが、僕はそうは思いません。それもまたネット上で代替されていくんだと思うんです。

— ものだけでなく地縁のような目に見えないものもネットのなかに入っていく、おもしろい考えだと思います。もう少し具体的なイメージを聞かせてください。

例えば、お金を持っているけど体が不自由なお年寄りの近くに、お金はないけど時間と元気がある若者が住んでいるとしますよね。普通はお互い出会わないけど、うまくマッチングすれば、若者が家事を手伝う代わりにお年寄りがお小遣いをあげたりとか、新しい関係ができるかもしれない。
 お年寄りじゃなくても、引っ越しなどで人手が必要な人と、小遣い稼ぎがしたい時間がある人をつなぐことができれば、お互い得ですよね。企業からサービスを買うのではなく、近所のひと同士で助け合いをしたほうが楽な場面というのがたくさんあると思うんです。

— 最初の実践の場所にSFCを選んだのはなぜですか?

理由は二つあります。SFCが閉鎖性の高いコミュニティであることと、インターネットサービスへの関心が高いことです。
 そもそも大学というのは閉鎖的なコミュニティですし、SFCは地理的な要因やマインド的な要因も重なって大学のなかでもかなり特殊な場所です。そういう場所では相互の助け合いが重要になるのではないかと思いました。そして、総じてインターネットへのリテラシーが高い。そういう意味で、僕たちが目指しているネット上の助け合いの社会というのを達成するうえで、SFCというのが一番実現されやすい場所だと思ったのです。

— 今後はどのようなサービスをつくる予定ですか?

さっき「C2C助け合いアプリをつくる」と言いましたが、実はラビデリーはまったく「C2C」のサービスじゃないんです(笑)。なので、今後はいろいろなSFC生が仕事の担い手になれるようなサービスをつくりたい。
 短期的には5月上旬にLINEを使って、買い物だけでなくいろいろな注文ができるサービスを始めます。いまはweb上で商品の注文をすることしかできませんが、実はコピーをとってきてほしいとかFAXを送ってきてほしいという要望があるんです。なので、そういう要望に柔軟に応えられるサービスをつくりたいと思っています。
 また、早ければ7月上旬、遅くとも夏休み前には、誰でも自由に依頼を投稿して、時間がある人がおつかい感覚でそこから仕事を選べるようなアプリケーションをリリースする予定です。

— お話ありがとうございました。最後に何かメッセージがあればどうぞ。

みなさんにぜひラビデリーを体験してほしいです。よくツイッター上で「こいつら怪しい」という意見を聞くんですよね。急にリリースしたので疑う気持ちはわかるんですが、いま新規会員登録で300円分のポイントプレゼントという超太っ腹企画をやっているので、ぜひ試してみてください。全然怪しくないので。
 今後アプリ開発もしていくので、デザイナーやiOSエンジニアの方がいたら、声をかけてください。いっしょにラビデリーを盛り上げていきましょう。
 

石川 聡彦(いしかわ あきひこ)
東京大学工学部休学中。Softbank Academia在籍。Goods株式会社代表取締役CEO。小学生時代、歌舞伎子役として約6年間活躍し、中高時代はネットとリアルの価格差を生かしたビジネスを展開。リアル上で行われているビジネスをインターネット上で代替し、日々の生活を最適化することを軸に据える。2015年4月20日にC2C助け合いプラットフォームを目指したサービス「ラビデリー」をリリースし、今に至る。