この時代に、あえて「クローズド」なSNSを React株式会社 槙野祐太さん(16年環境卒)インタビュー【PR】
「飲み会の席に人を加えたいけど、近くに誰かいないかな~」と思う日はないだろうか? 位置情報コミュニケーションアプリ「Poisy」は、そのような私たちの素朴なニーズに応えてくれる。SFC CLIP編集部は、アプリ開発に携わった槙野祐太さん(16年環境卒)を取材した。
気軽に、友達とだけ、位置情報のシェアを! アプリ「Poisy」
「Poisy」は、友達としてつながったユーザーに対して自分の位置情報をシェアできる、クローズドな位置情報コミュニケーションアプリだ。投稿型のサービスであるため、自分が位置情報をシェアしたいと思った時にだけシェアできる。投稿は3時間で自動的に削除されるので、気軽な気持ちで投稿できるのが特徴だ。
自分や友達がシェアした位置情報はすべてマップ上に表示され、誰がどこにいるか一目で確認できる。位置情報に写真やテキストも加えて投稿できるほか、投稿された位置情報についてメッセージのやり取りをすることも可能だ。
槙野さんは「Poisy」を開発したReact株式会社の創業メンバーの1人で、「Poisy」のデザイン領域全般(UI・UX)等を担当した。アプリ開発の背景やSFC生時代の思い出、起業に至った経緯などについて話を聞いた。
オンライン上の位置情報から、オフライン上の出会いが生まれる時代に
—— はじめに、「Poisy」ができた背景を教えてください。
友達と飲んでいる時に「いつも同じメンバーでいるから新しい人がほしいよね」という話になったのがきっかけでした。ですが、そこで、友達が今どこにいるか分からないという問題を実体験として感じたんですね。その日その場のノリで会うという機会をきちんと提供できるツールがまだ生まれていないと思ったんです。
例えば、「湘南台で飲みたいけど近くに誰かいないかな?」「今キャンパスのどこに誰がいるんだろう?」といったことを知りたいというニーズにソリューションを提供していこうと考えて、「Poisy」という位置情報共有SNSを作りました。
—— 「Poisy」の魅力はなんですか?
「Poisy」は投稿型のサービスなので、自分の位置情報を人に教えたい時だけ共有できる点が一番の魅力だと感じています。今世の中で提供されている位置情報サービスは常時共有のものが多くて、常に友達同士でどこにいるのかが分かる状態になってしまっているんです。位置情報を常時共有すると「家がバレちゃった」「本当は教えたくないけどバレちゃった」という状況も生まれてしまいます。ですが「Poisy」の位置情報は3時間で消えるので、リアルタイム性が高く、自分の情報がいつまでもネット上に残ることもありません。また、マップ上で位置情報を共有するSNSも今まで他のサービスでは出てきていないので、それも魅力ですね。
—— 不特定多数というよりは、クローズドなSNSなんですね。
そうですね、知っている人同士という感じです。最近、TwitterやInstagramのようなオープンネットワークのSNSがすごく多いですよね。だからこそなんでしょうか、意外とクローズドな繋がりって求められていると思います。Twitterでアカウントに鍵をかけたり、複数のアカウントを持っていたりする人って結構多いですよね。鍵をかけたり、コミュニティごとにアカウントを変えることによって、オープンネットワークをむりやりクローズドにしていたり。時代は逆流してきていて、今後は仲間内でやっていくのがどんどん主流になっていくのかなって気がしています。
身近な課題へのソリューションを作りたい
—— React株式会社を起業するまでには、どのような経緯があったのですか?
まずは「作ることが好き」っていう気持ちが自分の中で一番大きくて、身近な課題に対して、自分が作りたいと思ったものを作ろうと考えていたんです。大学にいる時からいつかは起業することを見据えていました。ただ、僕はビジネスとデザインの両方をやりたくて。大学時代にデザインはやっていましたが、数字を見て分析をするようなビジネスは全く知らなかったので、ビジネスを知るために一度会社に入ってから起業しようと思いました。
僕は今デザイナーとして仕事をしているんですが、前職では営業をやっていました。その時の営業の経験は今でも本当に役立っています。例えば、今回のサービスも、広告をバーンと打つ前に、知人や学生に地道に「こういうサービスがあるので使ってください」と当たっているんです。営業って人にどれだけ気持ちよく動いてもらえるかってところが大事なので、人間関係のやりとりをするうえで、経験が役立っています。
—— そうなると、槙野さんとしては起業する前に一度会社に入るのがオススメですか?
いや、オススメはしないかな(笑)。やりたいことがあるならすぐに起業した方がいいと思います。起業って、やっぱりやってみないと分からないことがすごく多いんです。例えば、インターネットや本から得た情報は自分の経験として確証が持てないから、「違う気もするし合ってる気もするし分からない」という状況が生まれてくるんです。結局そのモヤモヤは経験でしか埋められないので、若いうちにやった方が成功しやすいと思います。今、投資はしてもらえる時代になっているので、お金に関してはあまり困らないと思いますし。
あとはメンバーを集めてチームを作ることですね。SFCにはスタートアップを支援するKBCみたいなサークルがあるし、プログラマーもデザイナーもいるし、きっとアイデアマンもいっぱいいる。メンバーを集めやすいって意味ではすごく良い環境です。
—— SFC生時代に戻ったとして、メンバーとお金が揃っていたら起業しますか?
起業します!(笑) ただそれにも条件があって、急に突拍子もなく起業するとかじゃなくて、スタートアップをやっている人たちのところに1回入って、スタートアップがどういうところかを早めに分かっておいたうえで大学のうちに起業するっていう感じですね。経験がないままやるよりかは、経験したことのある人の下について1回大枠をわかったうえでやるかな、という感じです。スタートアップの人の話を聞いてみるとか、インターンに参加するとか、というのをやらないで起業するのはやめた方がいいかな。机上の空論でなく実践で身につけることが大切かなと思います。
—— 起業して働き方の変化はありましたか。
自由度という点が一番大きく変わったと思っています。働き方と意思決定、2つの部分が自由になりました。
まず働き方というところで言うと、一緒に起業したメンバー同士が何でも知っているような仲なので、「それぞれの自己管理の下できちんとした結果を出せるのであればOK」という信頼があり、時間的により自由に働けるようになりました。意思決定という部分では、組織に入っているのか自分たちが組織を作るのかで全然違います。今は自分たちが事業をしているので「こういうことをこういう理由でやろう」と意思決定ができるんです。
—— ちなみに、「React」という会社名の由来は何ですか?
「React」という名前は、「real」と「connect」を合わせたものです。位置情報という現実世界(「real」)の情報によって、オフライン上で人と人とが出会える(「connect」)環境を作りたいと思い「React」にしました。
デザインを学びに海を渡る
—— 学生時代はデザインをどのようにして学んだのですか?
主に、アメリカの大学とデンマークの大学院で学びました。アメリカでは海外のトレンドのUIデザイン、デンマークでは「ユーザーが求めているものは何か」という点にフォーカスしたUXデザイン・Service Designを学びました。僕たちのようなスタートアップは自分たちの提供しているサービスがユーザーに合っているのかを繰り返し検証するので、デンマーク留学で培った仮説検証の方法論が今とても役立っています。
—— 日本と海外で、デザインの違いなどはありますか?
海外のデザインはページごとの要素ができるだけ少なくなっています。どういうことかと言うと、1つのページに1つの目的しかない。例えば、このページはコンテンツを見るページ、となったら、そのページにはコンテンツのことしかないんです。
一方、日本のデザインはごちゃごちゃしていてシンプルさに欠けるところがあります。テレビのリモコンもそうですが、「これも必要だよね、あれも必要だよね」と衝動買いみたいな詰め込み方をしてしまうことが多いです。日本人は慎重であるが故に、あれもこれもと詰め込みすぎて複雑さが生まれます。海外は、デザインがシンプルというよりも、思考がシンプルです。
—— 留学で印象深かったエピソードを教えてください。
始めは僕、全然英語が話せなかったんです。アメリカに留学して初めて寮に入った時はルームメイトがアメリカ人だったんですが、「お前どこから来たの?」「……、ジャパン」みたいな感じでしたね(笑)。趣味を聞かれても答えられないくらいに話せなくて、あまり英語を話そうとしなかったんです。でも、12月末にニューヨークにリフレッシュしに行って年越しをしたんですけど、その時に新年の抱負を考えるにあたって「逃げちゃダメだな」と思ったんです。喋れないなりにもっと一生懸命話しかけないと、って。
それで、ニューヨークから帰って来た後に、とりあえずニューヨークであったこととかをルームメイトに一生懸命話しました。そこから彼と仲良くなって、最後に日本に帰る前には1週間学校を休んでカリフォルニアまで一緒にドライブしたりして。空港では彼が「お前は本当に最高な奴だ、幸せになれ」みたいなことを言ってくれたんです。最初は英語が全然喋れなくても、ちゃんと向き合えば信頼が生まれて、そういう言葉をもらえるまでになれる。そんなことに気付けました。言葉の壁があって辛かったけど、留学してよかったと思っていますね。
—— 槙野さんにとって、SFCはどんな場所でしたか?
SFCは、今の会社と同じで、自由。フリーダムで、みんな素直な場所だと思います。キャンパスにも緑が多かったりだとか、学校も学生に「君たちが自由に選んでいいよ」と意思決定の機会を与えてくれているだとか、たぶんそういう自由な環境が与えられているからこそ、素直な人たちがやりたいことに素直にやっていけるんじゃないかと思います。自由が故の素直ですね。他の学校だったら結局自分がやりたいことに素直になれないこともあるかと思うんですけど、SFCは自分のやりたいことに対して素直になれる環境だと思います。
—— 最後に、SFC生に向けて一言お願いします。
とにかく、自分のやりたいことを自由にやってほしいです。大学時代にやったことはすごい財産になるので、自分に素直に一生懸命やってもらいたいです。あとは、もし起業したい人がいれば、僕に会いに来てください!
—— ありがとうございました。