3年前のあの日、国立大志望の浪人生だった私には悪夢のようなセンター試験が待っていた。自己採点をしなくてもわかるほどの大失敗。未来が閉ざされた気がした。しかし私は今、ここSFCで誰よりも充実した大学生活を送っている自信がある。どうしてSFCに来たのか、来れたのか、体験記兼ちょっとしたアドバイスをお送りする。

臭いものには蓋をして、メンタルを立てなおせ!

ちょうど3年前のこと。あの日のセンター試験は当時国公立大志望の浪人生だった私にとって一世一代の大勝負だった。現役の時もセンター試験で失敗し、あまり良いイメージはなかったが、1年間を費やして準備をしてきたつもりだった。

 しかし、結果は自己採点をしなくてもわかるくらいの大失敗。得意なはずの倫理でリズムを崩すとあとはドミノ式に倒れていった。2日目も立てなおす事が出来ず、物理が終わる頃には私の第一志望の受験も終わっていた。



 終わったその日は会場の青山学院大学から代々木にあった下宿までどう帰ったかすら覚えていないくらいショックを受けた。そして帰宅してから自己採点をしておもいっきり泣いたことが唯一残っている記憶だ。

 しかし、その翌日以降「ああすればよかったな」などと、センター試験の事を悔やんだことはなかった。悔やんでも始まらないのだ。足切りで出願すらできないのならば、臭いものに蓋をしてしまえばいい。違うところに出願するのなら、なぜかこんな一次試験の持ち点持ってるけどなんでだろう?といった感じにとぼけるくらいで構わないのではないだろうか。

 受験が終わった後の3月は引越しくらいしかやることがなく暇だ。反省したいならその時にでも私大とまとめてすればいい。

もう一度受験戦争の戦場に戻るために…

それでも勉強には手がつかないだろう。まずモチベーションを高めなければ残り1ヶ月を駆け抜けることができない。私がその時やってよかったなと思うことが2つある。

 1つ目は願書書きである。願書を書くという事務的な作業はどこかのタイミングでこなさなければならない。願書を書くことの能率は勉強に対するモチベーションに左右されないので、モチベーションが上がらない時に願書を書いてしまおう。

 また、願書を書くには必然的にパンフレットを見ることになる。そこには「この大学、こんなこと出来るんだ」とか「この大学楽しそう」など、新たな発見がきっとある。これが私大へモチベーションを切り替えるきっかけとなった。



 2つ目は散歩がてら実際にキャンパスへ行ってみることだ。きっとセンター試験で2日間、思いっきり緊張して、更には寒さも手伝って肩も首もバリバリだろう。ちょっと散歩に出かけたい気分になったら、下見を兼ねて大学のキャンパスに潜りこんでみるといい。学食でご飯でも食べたらそこで生活している自分の姿など容易に想像できる。

 ちなみに私はこの時ちょっと遠いが代々木からSFCまで来てみた。この瞬間私はここは面白そうだ、と感じ、ようやく私大受験に切り替えることができた。

可能性を消さない出願を

私とSFCの出会いは前述した「願書書き」の時である。その前はおぼろげに存在こそ知っていたが、詳しくは知らなかった。だからSFC対策など全くしておらず、センター試験が終わるまでSFCの小論文を1本も書いたことがない。

 ただ、「もう1年浪人は絶対に嫌だ!」と思ったのでちょっとでも興味のあるところは出願することにした。早稲田と慶應はあわせて9学部出願。7日連続受験だった気がする。ちなみに環境情報学部は早稲田大学の政治経済学部と受験日程がかぶっていたが両方出願した。どちらを受けるか決めかねていたが3万ちょっとの金額を惜しんで可能性を消したくなかった。

 当日受けなくても構わない。だけど後から受けたくなっても出願することはできない。出願の際、受ける可能性のあるところはすべて出すべきだ。もし、私と出資者である私の両親にこのマインドがなかったら私は今、SFCにいない。

持っている武器をSFC仕様に

願書書きが終わり、私大受験へと切り替えることに私は成功した。それと同時にSFCは受験形式が特殊で問題にも対策が必要だということもわかった。様々な人から情報を入手して、私が1ヶ月弱でしたSFC対策は以下のとおりだ。

・受験科目

 「小論文と英語及び数学」にすることにした。いわゆる英数受験である。私大を数学受験で受けられるのは国公立文系組の有利な点であるといえるだろう。また、数学受験ならば多くの理系と戦わなければならず、英語受験ならSFCの英語を1年間研究しつくした相手と戦わなければならない。例年英数受験は合格最低点が最も低く、国公立に向けて勉強してきたならば英数受験がいいだろう。

・小論文

 個人的な意見だが小論文を書いたことがないという理由でSFCを避けるのはもったいないと思う。「現代文の論説文は文章から言いたいことを読む。小論文は言いたいことを伝えるための論説文を書けばいい」と当時習っていた現代文の先生から言われた。この意識を持てば、論説文がしっかり解けて、ある程度の文章力のある受験生なら合格ラインまで届くはずだ。また、国公立用に準備していた社会や理科の知識はきっと小論文に生きる。

・数学

 選択問題でプログラミングを選択するべく、準備をしよう。参考書はいらない。高校の時の教科書を一読して過去問を解くだけで十分対応できるレベルの問題だ。

・英語

 英語に関して、私は何も言えない。元々苦手科目だったということも手伝って、本番ではコケた。ずっとSFCの対策をして、高い語彙を身につけてきた受験生にはおそらく勝てない。だからわからない単語があっても推測する能力と割り切って読む勇気が必要なのではないだろうか。

SFC受験から入学、その後…

他の受験に追われつつも急場しのぎの対策を行い、SFC総合政策学部の入試を迎えた。英語で大きくミスをして自己採点3割程度だった。数学と合わせても130点ほどしかなかったが、現役の時にセンター試験用に準備していた政治経済が上手く生きて小論文を書き上げることができた。ノーチャンスではないと思った。翌日、環境情報学部は結局受けずに早稲田の政治経済学部を受けた。

 結果、なんとか合格してSFCに来ることになった。後に知ることだが、この年の「英語及び数学」科目の合格最低点は128点。きっと私のことだろう。あの悪夢のセンター試験からSFCに来たことはもはや運命だったと感じた。

 あれから3年。SFCに来てよかったと心底感じる。これをやりたい、と心から思えばプロジェクトを立ち上げることができるし、授業も楽しい。先生方も非常に生徒と近く、親しみが持てる。また、湘南台駅周辺には友人がたくさん住んでおり、血の通った関係を築くことができた。

 他の大学に行ったことはないので比べようがないが、大学選択が何点かと聞かれたら私は間違いなく100点、と答えるだろう。

最後に

私のようにセンター試験で1つの扉が閉まる音が聞こえた人もいるかも知れない。だが同時にどこかで別の扉が開いている。終わったことはもうどうしようもない。それが例え人生を左右するセンター試験だとしても。だから可能性をなるべく消さず、そのひとつひとつに対して真剣に向き合ってみよう。実はそっちの道のほうが自分にあった道だったということは往々にしてある。

 残りを全力で駆け抜けたら4月から始まる大学生活はきっと楽しい。