3日(火)、SFCに多くの高校生が訪れた。今年から始まった未来構想キャンプに参加するためだ。未来構想キャンプとは創意工夫がカタチになる体験を通して、SFCが求める「実行力」について高校生が主体的に考えることを目指して開催されたワークショップ(以下WS)である。SFCと学生は、それぞれ相思相愛の関係になれたのだろうか。今回はWS2を取材して、未来構想キャンプの実態を調査した。

WS2:リトルプレス・ワークショップ

WS2は「取材力」「編集力」「表現力」を体験的に学ぶことを目的として開催。キャンパスで実施される他のWSを取材したうえで、実際に「かわら版」の出版を行います。半日で取材から編集まで行わなければならず、時間的制約を見据えた計画的な行動が求められたWSだったと言えるでしょう。
 
 WSは和やかな自己紹介から始まりました。印象的だったのは、初対面の高校生がすぐに打ち解けて計画を立てていたこと。在学生の先導なくともてきぱきと動いていました。また同様に各グループでリーダーとなる人がすぐに出てきたのもおもしろい点。前半はまったりとした空気の中で作業が進められていきましたが、後半になって締め切りが迫ってくると緊迫が感じられました。

高校生はどう思う?

では高校生はこのWSをどうとらえていたのでしょうか。優秀賞をとったある女子高生の方にインタビュー形式で聞いてみました。

Q.いつも通ってる高校と違う点はありますか?
A.はい。まずSFCを目指す同年代の高校生だけで集まっているということが刺激的です。やっぱりみんな個性的で積極的だし、行動力があるなって感じます。
Q.周りの高校生を見てどうですか?
A.自分にもっていないものをもっていると思います。WSを通じて、常に斬新な視点を得ることができました。それから自分に自信をもってる人が多い!素直にすごいと思います。
Q.最後にこのWSはどうでしたか?
A.とにかく楽しかったです!時間的に厳しかった中での取材・編集作業はつらかったですが、いろんな教授のお話も聞けたし実践的な体験もできたので、すごく有意義でした。

教員はどう思う?

それでは教員はどう思っているのでしょうか。WS2の担当である加藤文俊環境情報学部教授にお話を聞きました。

   「高校生にはもっと時間に留意してやってもらいたかった。最後の最後でギリギリになるようなことにはならないでほしい。また、在校生がひっぱりすぎだとも思う。もっと高校生自身が動いて、自分から求めていってくれることを望んでいる。」    WS2の後半では、時間的制約のため急いで仕事を片付けるといった場面も見られました。教員から見るとこういった点が目についたようです。またアドバイザーとして配置された在学生が方向性を定めてしまうこともあったようで、未来構想キャンプの理想と乖離した面もあったかもしれません。

高校生はSFCの「学び」を体験できたか

 長い準備期間と多くの情熱を傾けて企画された今回の未来構想キャンプ。高校生からは「楽しい」という声が、運営側からは「楽しそう」という声が多く聞かれました。高校生にSFCを好きになってもらうという眼目に照らしあわせると、未来構想キャンプは成功であったといえるでしょう。    ですが「学び」の観点から見た時、未来構想キャンプはどうだったのでしょうか。「本当のことに接するための未来構想キャンプ」とは村井純環境情報学部長の言葉です。高校生は今回のWSを経て「本当のこと」に接することができたのでしょうか。

   まず、今回の未来構想キャンプには時間的制約の問題がありました。当初、泊まりがけで開催される予定だった未来構想キャンプは震災の影響で1日に短縮され、高校生がWSについて考える時間が短くなってしまったのです。高校生は「カタチにおとしこまなければならない」という焦燥感に駆られ、WSの意味やプロセスについて考えることなく「とりあえず」アウトプットしてしまっていたのではないでしょうか。    また「優秀賞」を選ぶという制度そのものにも問題があったのではないかと思います。「優秀賞」に選ばれた高校生にはAO入試C方式の受験資格が与えられます。未来構想キャンプの対象は高校生、すなわち受験生です。SFCに来たいと強く望んでいる高校生です。AO入試の中でも比較的有利な条件で受験することができるC方式の受験資格は非常に魅力的であったことでしょう。「優秀賞」の存在は、SFCの「学び」に触れるという未来構想キャンプの理念を薄め、目的主義の競争意識を煽ってしまったのではないでしょうか。  SFCで「学ぶ」意味について深く考える者をSFCは受け入れます。高校生は目先の報奨にとらわれ、互いにライバル意識を燃やすのではなく、未来構想キャンプが行われた意味を考えてはどうでしょう。また運営側は高校生に対して、もっとSFCの「学び」についてアプローチしていくべきだったのではないかと思います。