ここSFCは様々な分野の勉強ができることがウリ。「学際教育」をキーワードに掲げていることに魅力を感じて入学を決断した学生も多いのではないでしょうか。しかし、「学際教育」であるがゆえに専門的な勉強ができないのでは…?という不安もよく聞かれます。たしかに専門的な領域を専門的に勉強する他大学の学生を見ていると、このまま「広く浅く」の勉強でいいのか、という気持ちにもなりますね。

 そこで今回は、特にその専門性について美大や専門学校などと比較されがちな「デザイン」の領域を「SFCで」学ぶ意味について注目。「学際」と「専門」のありかたを考えてみました。

デザイン = 体験の設計

(無題)

デザインとはなにか、という問題はデザインを考える際、必ず議論されることです。方々でさまざまな観点から多様な考え方が提示されていますが、私はデザインとは「体験を昇華させること」であると位置づけています。

 人が生活する上で体験することをすこしでもよいものにする。そこに自分の価値観をも反映させていく。社会との接点をさぐる作業。デザインとはそのようなものではないでしょうか。

 こう仮定したとき、デザインに必要になってくるのは、作り手が体験を理解し考えることです。なにかをつくりだそうとするとき、作り手には体験を生みだすために幅広い知見と分野を問わない膨大な経験が必要となります。体験すること、つまり使い手の気持ちを理解することなしにはデザインはできません。

 私はこの「幅広さ」にSFCの可能性があると思います。「幅広さ」は「学際」の長所であり短所でありますが、うまく生かすことができれば「専門性」とはまた違う知見が得られるのではないでしょうか。

具材をとりそろえるということ

(無題)


 つまり「学際」に身を置き、さまざまな分野の研究に触れるということは、デザインをするために必要な具材を多様にとりそろえるということだと思うのです。もちろん美大や専門学校でしか得られない具材もあるでしょう。
 学生時代に取り揃えた具材は社会に出てからの資源となり、そのひとのスタイルとなります。限られた時間の中で、自分が得たい具材の種類はなにか。それを見極めて道を選ぶことが必要なのだと思います。
 元も子もない話になりますが、SFCではSFCでしか得られないことがあり、専門学校や美大ではそこでしか得られないものがある、ということを認識して勉強することこそ重要なのではないでしょうか。
 幸い、SFCには自分の関心領域とはまったく異なる分野を勉強している人がたくさんいます。学生はもちろん教授もしかりです。自分とはちょっと違うことを考えているひとたちと触れ合うことができるのも、「学際」のいいところ。自分の幅が広がりますね。
 今回は筆者がデザイン系研究会に所属していることから「デザイン」に焦点を当てて考えてきました。しかし、この話はSFCで学ぶすべての人に言えることだと思います。  「学際」に身を置いているということや幅広い人があつまっているということを頭のすみにおいて、SFCでの学生生活を送ってみるとすこし違った日常が生まれるかもしれません。