SFCオープンキャンパスの翌日、キャンパスはオリーブのTシャツを着た高校生で一杯だった。この集団とは、今年から開催された未来構想キャンプの参加者。SFCの理念である「問題発見・解決型人間」の形成につながる授業のひとかけらを、高校生と一緒に紡いでいこうというこの試み。私はWS5に、取材という形で参加してきた。

WS5:外国語教育環境デザイン・ワークショップ

 このWSは、多言語教育を持ち味の一つにしているSFCから、新しい外国語教育の形を提案しよう、というものだった。それこそ、参加者は日本の英語教育に疑問をもつ生徒で一杯。海外経験のある生徒がほとんどで、その出身の豊かさたるや、ただただ圧倒されるばかり。しかし、実はこれが後程課題となることも。

まずは問題の発見

 新しい学習環境を提案するこのWS、まずは既存の教育の疑問や不安、改善点を見つけることから始まった。

 自分たちの言語経験も活かしつつ、日本の英語教育の問題点を彼らなりに挙げていき、「こうすればいいのでは?」をグループごとに発表。

 とある班の出した解決法は、趣味などの好奇心を主軸に置いた学習法。しかし、この班の発表に対し、生徒からの指摘があった。 「その学習法は、学習意欲のない生徒には効果がないんじゃないか」

立ちはだかる壁

 実はこの指摘、講師陣の間でも課題となっていた。  この教室にいた生徒は、みな日本の教育に何らかの疑問を持ち、このWSへの参加を強く希望した、いわゆる「(良い意味で)意識の高い」生徒たちだった。しかし、本当に学習環境を考え、与えてあげねばならないのは、自分たちで学習法を見つけられない生徒たち。  今回の講師陣の間でも、WSを設計する際に、「このWSは、もともと学習意欲のある生徒よりも、そうでない生徒を対象にした方が効果があるのでは」というジレンマに直面したという。  しかし、集まったのは問題意識のある生徒たち。この指摘は、彼らに解決すべき問題を、たった一つ増やしたにすぎない。

問題の解決へ

 昼食のあとは、様々なツールを使って、新しい教材のデモを作成した。

 案がまとまった班から、外へ出て教材のムービーを撮影に。

 そして、撮影したムービーと、タブレットPCを武器に、各班ごとに学習環境の提案プレゼン。各班の独創的なアイデアを支える、若い発想力には舌を巻くばかり。

 問題発見→解決のプロセスを、ギュッと一日に濃縮したこのWS。どちらかが一方的に教えるのではなく、講師は課題を与え、フィードバックを受けることができる。彼ら高校生の、柔軟な発想力には、講師陣も多くのことを学べるとのこと。  このWSで教えていたのは、何も講師陣だけではない。ここは、生徒と教員、お互いが学びあっている「半学半教」の場であったに違いないのだ。

意識の壁を越えて

 今回のWSでは、誰もが十分に得るものがあったであろう、一つの素晴らしい学びの場を見ることができた。参加した生徒たちには、是非ともSFCの「問題解決」の味を覚えておいてほしいと思う。  しかしながら、すでに問題意識のある生徒たちだけでは、問題発見、問題解決は完成しない。このことは、講師陣たちも次につなげるための課題としている。いわゆる「意識の高い」生徒たちの集まりだけ、という殻を破る必要が出てくるのだ。  もちろん、そんな生徒たちをSFCは歓迎しているはずだ。しかし、新しい学びを実践できるのもまたSFC。今回の生徒たちのような「未来からの留学生(の卵?)」と、そうとは限らない生徒との邂逅すら、ここでは学びの形に昇華するのでは、と、来年以降に期待が持てる。