SFCでの盗難事件が一向に現象の傾向を見せない今、「大学の中だから安全だ」と、安易に考える傾向に、生協が警鐘を鳴らしている。


 SFC内で多くの塾生や教職員が利用する慶應義塾生協藤沢店。昼頃には店内が多くの利用者で賑わうこの店舗内では、しばしば学生による万引きの犯行現場が発見される。生協職員の努力によって、その件数は年々減少傾向にあるものの、一時期は、1日に平均1~2件の万引きが発見されることもあったと言う。そして、大抵の場合その犯人はSFC生だという。
 特集第3回目の今回は、生協店舗内で起こる学生による万引きを通じて、学生が加害者になりうる現状を検証する。
 慶應義塾生活協同組合の遠山専務理事と藤沢店の一瀬店長、さらに事務室の村松さんからお話を伺ったところ、万引きの被害に合う品物はパンやおにぎりから高額書籍関係まで様々だ。商品の種類だけ動機も様々なのかと思えば、実際に万引きを行って れが見つかった学生に動機を聞くと、大抵の場合は特に金銭的に困っているわけでも なく、一時的な精神不安定が理由だという答えが返ってくるという。例えば残留して研究を行った後の疲れや、大学生活の中でのストレスによって、善悪の判断が鈍るこ とがあり、最初から犯行に及ぶ気はほとんど無くても、一瞬の言わば「気の迷い」が 原因で過ちを犯す、という。
 生協店舗内で万引きが明らかになった場合、生協は店舗への反省文提出を求めると 同時に保証人への連絡を行った上で、その後の対応は生協から事務室に一任される。 事務室では、注意を行った後で本人に反省の色が見られない場合は、カンニング などの他の学内不正行為と同じく学部学則第188条が適用され、謹責や場合によって は停学という処置が取られることもある。しかし、結局のところ警察に報告が行くわ けではなく、あくまで学生自身の反省を促すことに留めるのが、大学側の姿勢である。
 学生がそのことを知っていて行うとも限らないが、特に切羽つまった要因を持たな いにも関わらずに犯罪行為を行ってしまうというという裏には、このような大学の特 殊な雰囲気に守られた学生の甘えが見え隠れする。生協店舗側が、学生に万引きの件 に関して保護者への報告を促すと、それを拒否しようとすることからも、善悪の判別 は出来ていると考えるのが妥当だ。
 万引きの被害額が高かった2年前から、生協店舗内では掲示による注意と巡回の強 化を行い、防止に努めている。また大学側でも、注意を促す掲示や教授会での話し合 いの結果、学生の自覚を促していく方針を固めた。その結果、万引きの件数はかなり 減少するに至った。しかし、生協外での盗難で明らかに学生が関わっているのではな いかと思われるケースもあり、学生のモラルが問われる状況は続く。
 取材の最後に、学生に対して遠山専務理事は「警察沙汰にはならないにしろ、大学の中にだって中なりのルールはある。そういった中での甘えは許されないし、何より 生協は組合員の全員の出資金で運営されていることを考えると、そこから物を取ると いうのは共有財産を奪う二重に悪いこと。そこを理解して欲しい」一瀬店長は「万引 きという行為が周りをどれだけ悲しませるかを自覚してほしい。安易に万引きをして しまう前に、やっぱり物事をつきつめて考えることをしてほしい」村松さんは、「大 学から一歩出た社会では、認められないこと。学生自身が意識を高めるべき」と語っ た。