SFCに新たな建築物が現れた。デザインスタジオ棟やテニスコートを利用している学生であればゲストセミナーハウスの横を通る際に見ているであろう坂茂研究室が建築している「仮設シェルター」である。

この建築は、坂環境情報学部教授が提案する紙の管(紙管)を構造材として用いて作られており、坂研究室の大学院生を中心に常時6-7人の学生が作業を行っている。作業は2002年8月1日に開始され、現在はドームの骨組と外装が完成した状態であり、今後は垂直の壁面と内装の工事を予定している。
プロジェクトに参加している坂研究室の長谷川卓治さん(環4)はSFC CLIP編集部の取材に対し「学生たちの手で紆余曲折を経てプロジェクトは進んでいます。僕自身実際に建物を建設することによって様々なことを学びました。このプロジェクトはAUDプロジェクトの更なる発展の第一歩といえるでしょう。ORFには中を見られる状態に仕上げるので楽しみにしていて下さい」と答えた。
以下、メールの応答によって行われたSFC CLIP編集部と長谷川との一問一答を掲載する。

SFC CLIP:何をつくっているのですか?

長谷川:作品名[仮設シェルター]を作っています。

SFC CLIP:どのようなテーマを設けているのですか?

長谷川:我々のスタジオのセルフビルド。国内、海外問わず、建築学校では、創作の場として学生一人一人に広いスペースが与えられています。しかしながら、SFCのED(環境デザイン)クラスターの学生には十分なスペースが与えられているとは言い難い状況です。このような状況を打破するために、「建築学科の学生ならば自分たちの場所は自分たちの手でをつくる」というテーマのもと仮設的にスタジオを建設しています。また、仮設シェルターとしての居住実験、建築施工からものづくりを学ぶという意味もあります。

SFC CLIP:コンセプトは何ですか?

長谷川:建築の環境性や経済性、施工の簡易性に対し、紙管という素材をドーム形態に組むことによって空間としての実用性を検証します。また、建築学科の学生の学習として、更にはスペースの増加を目的として建設を行います。

SFC CLIP:紙の建築について説明して下さい。

長谷川:建築家である坂茂教授が提案した紙の管(紙管)を構造材として用いた建築です。紙といっても強度は強く、木造建築に匹敵する強度を持っています。坂教授は、構造設計家の故松井源吾氏に研究協力を得て、過去に「紙の家」「ハノーバー万博日本館」など多数の作品で紙の建築を実現させました。

SFC CLIP:主体となって建設を行っている団体はどこですか?

長谷川:慶応大学政策メディア研究科 坂茂研究室と、環境情報学部 坂茂研究プロジェクトです。

SFC CLIP:工事に業者は参加しているのですか?

長谷川:以下の業者に参加してもらっています。
タイヨー建設 (施工の総合的指導をして頂いています)
TSP太陽 (外装に使う膜(テント)の設置指導をして頂きました)
テクノソイル (基礎(建物の土台)につかうソルパック(土嚢)の作成器具をお借りしました)

SFC CLIP:学生はどの程度参加しているのですか?

長谷川:基本的に研究室の大学院生が中心となって作業を行っています。夏休みや授業の時間割の都合などで、全員が集まることはできませんが、コンスタントに6~7人以上の学生が作業を行っています。また、坂先生の事務所に研修に来ている国内外からの学生たちにも手伝ってもらっています。

SFC CLIP:AUD/SFC内での位置付けはどうなっていますか?

長谷川:SFCの一クラスターであるAUDは、建築学科として歴史が浅く、規模が小さいものです。AUDを発展させ、SFCや社会にアピールするプロジェクトとして期待を持たれています。

SFC CLIP:施工期間はどうなっていますか?

長谷川:2002年2月末その間、話し合いにより、2回も敷地が変わり、結局、セミナーゲストハウス前に落ち着きました。

SFC CLIP:工事を始めた時期はいつですか?

長谷川:2002年8月1日です。

SFC CLIP:現在の進行状況?

長谷川:ドームの骨組みと外装が完成しています。完全に自立しているので中に入れます。

SFC CLIP:今後のスケジュールはどうなっていますか?

長谷川:垂直の壁面をつくることと内装があります。
長谷川:このように、学生たちの手で紆余曲折を経てプロジェクトは進んでいます。僕自身、実際に建物を建設することによって、様々なことを学びました。このプロジェクトは、SFCのAUDを更に発展させる為の第一歩といえるでしょう。ORFには、中を見られる状態に仕上げるので楽しみにしていてください。