プレミアムセッション「SOIアジア~ネットワーク基盤構築、教育連携、そして産業創造への挑戦~」
 両学部長をはじめ、ITを基盤にアジア諸国との連携を試みる先駆者たちが討論を行った。


■パネリスト
・Sureswaran Ramadass(Professor, Univ Sains Malaysia)
・石黒憲彦氏(経済産業省商務情報政策局長)
・浜口友一氏(株式会社NTTデータ相談役/社団法人情報サービス産業協会会長)
・國領二郎総合政策学部長
・村井純環境情報学部長
・梅島真樹政策・メディア研究科講師
・大川恵子メディアデザイン研究科教授
 現在ではアジア全域で27の大学が連携している、慶應義塾大学SOIアジアプロジェクト(以下SOIアジア)は日本のインターネット商用化黎明期の1996年に、アジア各地の先端大学をつなぐネットワーク基盤の構築から始まったプロジェクトである。今は衛星技術を用いたアジアの教育ネットワークとして機能するようになり、このネットワークにより連携している大学は、それぞれの大学の授業を共有できるようになったと、大川教授は切り出した。Sureswaran氏は、SOIアジアは国際活動としては珍しい成功例と話した。
 続いて、石黒氏がアジアにおける快適性の向上と省エネを両立した新しい街づくり、スマートコミュニティーの展開について語った。石黒氏はスマートハウスや次世代自動車などのグリーンイノベーション(省エネ技術)は、技術を売りとする日本が強みを生かせる分野であると主張。まだ各企業とビジョンの共有がなされていない点、アジア各国の企業との協力が現状では不十分であるのが問題点であるが、アジア各国がお互い協力しながら成長して行くことが重要とコメントした。
 浜口氏は、日本には世界に誇れる技術がたくさんあるが、ガラパゴス化してしまっている点が問題と指摘。世界標準へ適応し、グローバル展開の速度を早めていくことが日本が世界の技術革新を先導する必要条件であるとした。
 後半のディスカッションで村井学部長が、グローバル社会、とりわけ言語や宗教の多様性に富むアジアでは多様性が必ず付いて回ると発言。また、スマートコミュニティーのような社会作りには産、官、学の連携が重要で、初めの取っ掛かりとしてSOIアジアのような、教育をつかさどる大学間での連携が大切だとした。
 今回のセッションは、冒頭で司会を務めた國領学部長が「幅広いテーマ」と話したように、様々な問題や取り組みについて触れた。しかしそれらが討論を通してまとまっていく様子に、SFCの理念の1つである分野横断を感じた。