ORF1日目の10:00から、プレミアムセッション「ライフクラウドの時代がやってくる」が行われた。これからの医療情報のあり方をテーマに、村井純環境情報学部長や黒岩祐治神奈川県知事など、様々なフィールドの第一人者が熱い議論を交わしあった。


■パネリスト

・黒岩祐治氏 神奈川県知事

・堀部政男氏 一橋大学名誉教授

・坪田一男医学部教授

・村井純環境情報学部長


バラバラの医療情報


 現在、医療機関において使用されるカルテや検査結果、処方箋などの情報はバラバラの状態で管理されており、必要な時に必要な情報を取り出すのが困難だ。患者は自分自身の情報が知りたいし、医師や看護師も適切な治療のために患者の細かい情報が欲しいが、すべてを一度に知るということが難しいのが現状である。
 黒岩知事は、これから医療の無駄をなくして効率化させ、よりよいものにしていくには、医療情報を積極的に活用していくことが望まれるために、バラバラの医療情報をひとつにまとめて、ひとりひとりの情報を詰め込んだ「マイカルテ」という形で電子的に管理していきたいと語った。今まで置き去りにされていた情報を、電子的に管理することで、それらを統計的にも有効活用できるようになり、社会にも大きな利益をもたらすと説明した。

(無題)



情報による医療の革新


 続いて坪田氏は、そもそも医療情報が「その人(患者)自身のもの」でありながらも「病院で保管されている」ことが不思議だと語った。誰もが自分自身のマイカルテに容易にアクセスできるようになれば、自分でも健康状態を管理できるため、予防医療にも活用できるという見方も示した。
 とはいえ、マイカルテの実現にはいくつもの障壁が存在する。マイカルテの医療情報はすなわち個人情報であり、社会的に利用するにあたっては、患者のプライバシーの保護という課題を無視することはできないだろう。これに関し堀部氏は、個人情報を守りながら医療情報を活用するために、第三者機関の存在が不可欠であるとして、政府や自治体から独立した個人情報保護に関する第三者機関の必要性を訴えた。

(無題)坪田一男医学部教授



日本と世界のモデルに


 神奈川県は、情報通信技術を用いた診療情報の利活用に関して様々な先進的な取り組みを行ってきたという。マイカルテの実現に向けた第一歩として、現在は「おくすり手帳」の電子化を目指しているそうだ。黒岩知事は、神奈川県において今後急速な高齢化が見込まれていることについて言及し、「今まで陰に隠れていた診療情報を活用し、来る日本の高齢化社会でますます重要になる医療について、神奈川県こそが日本のモデルとなり、やがては世界のモデルとなることを目指している」と語った。

 情報、医療のスペシャリストから、実際にアクションを起こしている知事まで、問題の様々な分野を担うパネリストが集まったこのセッション。聴衆にとって、ライフクラウドの全貌と広がりを実感するセッションだったに違いない。