全塾協議会事務局長次長選挙が投票終了後に中止されていた件について、SFC CLIP編集部が引き続き調査を行ったところ、新たに選挙管理委員会副委員長の佐野心一氏(文4)と、岸信千世事務局長候補(商3)の2人から、詳しい事情を聞くことができた。ずさんな選挙管理運営や、候補者陣営による不正行為疑惑は、なぜ生まれたのか。選挙管理委員会(以下選管)の絶対的な人員不足と、全塾協議会組織内部の不適切な関係が見えてきた。



選管委員はたったの8名。事務局からの批判に対し佐野氏「悲しい」



 選管副委員長の佐野氏によれば、今回の選挙で選管には8名の役員しかいなかった。全塾協議会の関係団体から半ば強制的に集められたため、士気はそれほど高くはなく、引き継ぎ資料なども存在しない。そのなかで、昨年度の運営に関わってノウハウを知っていたのは、佐野氏一人だけだった。関係各所への書類提出や選挙告知はがき・メールの送付など、すべての業務を佐野氏が監督したのだという。

 今回の選挙の前、佐野氏は全塾協議会にて「人員不足から毎年発生している様々なトラブルを避けるため、上部7団体で選挙管理委員長を回していき、引き継ぎ資料を残してノウハウを伝承し、円滑な選挙運営を行えるようにすべきである」と提案した。しかし今年度に限っては、昨年度の選挙を唯一知る佐野氏が運営に携わってほしいという依頼を受け、副委員長という形で業務に関わることになったという。

 そもそも、選挙管理委員会は通年の団体ではない。選挙前の10月に臨時で結成され、選挙後に解散することになっている。一昨年までは事務局員や事務局と繋がりの深い人物が選挙管理委員長になり、今回以上に公平性に欠ける行為は当たり前だった、と佐野氏は証言する。投票所の運営なども、応援指導部や体育会などの下級生が、上級生に頼まれ無理をしてシフトを埋めるような状態だったという。

 不公正であったり杜撰な運営があったのは事実かもしれませんが、これが現状の選挙管理委員会であり全塾協議会です。ここまで個人的に貢献してきたのにも拘わらず、「外部から」の立候補である岸陣営から非難があるのならばともかく、昨年の選挙では委員長として、今回は副委員長として私がそれなりに貢献してきたことを知っている伊藤くんや事務局にここまで批判されたのは不本意であり非常に悲しく思っています。


不公平と指摘されたツイートに関しては「許容せざるを得ない」


 TwitterやFacebookにおいて不適切とされた投稿に関して、佐野氏は以下のように釈明した。

 基本的にTwitterやFacebookは補助的な広報手段であるので、極端に偏りがあるもの以外は問題ないと考えます。また、全塾協議会の認知度は著しく低いので、投票率確保の為には、語弊がありますが多少ふざけた内容(貴団体(※SFC CLIP)が指摘されていた東京都の選挙管理委員会云々のものや絵文字顔文字を使ったもの)も必要と判断しました。必要というのは、「しても良い、問題ない」というニュアンスではなく「投票率の確保の為には許容せざるを得ない」という意味です。
(※は編集部注釈、他は佐野氏注釈)


規約上はセーフ? 両陣営によるギリギリの選挙活動


 今回の選挙では、規約上は許されるが一般的に考えて不可解、不適切な行為が多々まかり通っていた、と佐野氏は証言し、その例として各陣営の以下の様な行為を指摘している。

【伊藤陣営】
・選挙の運営に携わる全塾協議会所属団体の代表や委員長等、団体トップの個人から応援コメントをもらい、ビラに記載した。選挙管理委員会は一度は許可したものの、その日のうちに取りやめるよう改めて連絡をした。ところが、要求が受け入れられなかったため、これらのビラを黙認した。
・「学内に掲示するポスターは1団体7枚まで」という大学側のルールをクリアした上で大量のポスターを貼るために、全く同じデザインのものを掲示団体名だけを変えて掲示していた。選挙管理委員会が指摘したところ、「各団体が任意で掲示したものなので、選挙管理委員会には止めさせる権利はない」と事務局員に言われた。
・立候補してから投票終了までの間、伊藤候補と事務局員個人はTwitterで、岸陣営や選挙管理委員会に対する批判、罵詈雑言の投稿を行っていた。
・今回の不正投票疑惑について、事務局員と称する匿名の人物からの内部告発、音声ファイルと、「運営に携わった事務局員が、投票箱の鍵を知っているという発言をしていた」という証言があった。

【岸陣営】
・投票所を運営している全塾協議会所属団体のメンバーと個人的に親しい体育会部員が、呼び込みを手伝ってくれた際に、岸陣営に投票するよう指示した疑いがある。これを見ていた人物に確認をしたところ、問題視するほどのものではなかった。
・SFCの投票所を運営している体育会部員が、知り合いにその日何票くらい入ったか教えてしまった。規約に規定はないものの、好ましくないため注意を行った。

 「これらの行為は規約上縛れないものが多く、私としては出来る限りの公平性の保持に努めました。その上で公平じゃないと言われても、というのが正直なところです」と佐野氏は言う。

脅しか、提案か……「個人対個人」のやりとり


 これらの問題点に関して、佐野氏は伊藤候補とメールで連絡を取り合っていた。しかし、全塾協議会の関係者であり、もともと互いを知っている2人は、「選挙管理委員会と一候補」ではなく「個人対個人」としてのやりとりを行ってしまった、と佐野氏は自身の「暴走」を認めた。
 (※「再選挙を認めなければ不正投票の証拠を各塾内メディアに公開する」という佐野氏からの連絡を、「脅しである」と伊藤候補が主張したメールについて)このメールは伊藤くんと私個人間のメールであり、選挙管理委員会という団体から候補者である伊藤くんへのメールではなく、私個人から事務局長である伊藤くんに送ったメールです。その為、正式な提案ではなく、飽くまでも個人間の相談です。

(※ビラの承認を取り消したメールを、伊藤候補が「選挙妨害とも受け取れるような不当な規制である」と主張した件について)「突如」というタイミングだとは思っていません。ビラに関しては許可した日の夜に取り消し依頼のメールを送りました。…(中略)…ニュアンスとして「規約上セーフでも普通に考えて変だから第三者から批判されると思う。なので一年間現職として行なってきたことなどをアピールしたほうが効果的だと思う。」といった提案を行いました。(※編集部注釈)


岸候補は静観


 一方、伊藤候補の対立候補である岸候補は、冷静だ。
 人員不足を補うために、投票受付や投票箱管理等の運営業務を候補者両陣営にも依頼していたと伊藤氏が証言しているというお話でしたが、私自身はその件に関しましての依頼は一切受けておりません。おそらく依頼を受けていたのは事務局の方々だと思います。…(中略)…まあシステム的には確かに今考えると不正ができるものではありますが、もしそのような事が日常的に行われているならば、そんなものは選挙とは言えませんね。


 また、選挙管理委員会と伊藤候補については、以下のように述べた。

私の個人的な意見では、そもそも現在の全塾協議会の知名度から言って、SNSを積極的に使用し投票の呼びかけをしないと、投票率10%超えすら難しいと思いましたので、仕方がないと思います。ポスターに関しては伊藤氏側が大量に貼り付けてはいましたが、特段気にはかけませんでした。


選挙管理委員会や全塾協議会からの公式発表は未だなし


 14日(金)に、SFC CLIP編集部が選挙中止の記事を公開した後も、選挙管理委員会や全塾協議会からの公式な情報は未だ発表されていない。今後、中止された選挙はどう再開されるのか、また再開した場合、どのように次期事務局長次長が決定されるのか。これからの全塾協議会の動向に注目したい。