奥田敦研究会では、11月3日(日)-17日(日)の2週間にわたり、アラブ諸国からの学生を日本に招き、日本語研修や文化交流を行う「アラブ人学生歓迎プログラム(ASP)」を実施する。今年で第12回目を迎えるASPを目前に控え、奥田敦総合政策学部教授に話を聞いた。

奥田先生(3)




ASPの意義とは?



 2002年に、アラビヤ語インテンシブの研修でSFCの学生が初めてシリアを訪れました。現地の学生が熱心に学習の手助けをしてくれたことに、当時の日本人学生達は強く感銘を受けたようです。「彼らに何か恩返しをしたい」「活動の資金も自分たちで工面する」といった学生達の熱意を私も応援したいと思い、奥田研の活動としてASPを始めることになりました。

 シリア等のアラブ諸国は、文化的にも地理的にも日本と近いとは言えない場所です。しかしシリアには現在160人の日本語学習者がいます。宗教や社会は違うとしても、「勉強したい」という気持ちに変わりはありません。ASPでは、その共通の思いを持った学生たちが、研究という知的好奇心を軸にして交流ができると考えています。



「魂(ルーフ) ~世界を繋ぐ、平和を紡ぐ~」というテーマにには、どのような思いが込められているのでしょうか。



 ルーフとは、アラビヤ語で「人間であれば誰しもが必ず神(アッラー)から分け与えられている心の内側の部分」という意味です。人々が互いのルーフを引き出しあって、国籍や民族、文化、伝統、状況などの違いを乗り越え、人間としてのつながりを持つ。それは「おおきなわれわれ」と呼びうるもので、その繋がりは美しいし、とても強い結束になると思います。

 しかし生命の危機に晒されている状態でもあるならまだしも、人間同士としてのつながりを持つというのは、並大抵ではありません。強い気持ちを持たなければなりません。奥田研では、それを「知」の追究を軸にして進めていこうとしています。ASPは、まさにこのテーマを実践する場なのです。


ASPに際して大変なことはありますか。



 ASP自体は2週間という期間ですが、準備は半年前から行っています。この2週間は、研究会メンバー全員で長い時間をかけて育ててきたプログラムの仕上げであり、集大成ですね。

 またムスリムの学生を受け入れるにあたって、礼拝や食事のことや病院のこと、はたまた普段の服装に至るまでたくさん留意することがあります。日本人が見落としがちな文化の違いに細心の注意を払って、まさに「家族のように寛いで」もらえるようなもてなしを実行委員全員で心がけています。

 現在東南アジアからのムスリム観光客の受け入れに関して、観光庁も積極的にプロジェクトを進めています。その一環で神奈川県観光課にもそうした動きがあり、11月22日には、SFCのORF2013において同課からも登壇者を得たハラールビジネスについてのセッションを企画しています。12年間のASPの蓄積を生かす段階に入ってきたなと感じています。


ASP2011年プログラムの様子




普通のSFC生がASPに関わりたい場合、どのような方法がありますか?



 金曜日4限の「現代文化探究」という授業の中で2回、ASPに触れる機会があります。1週目の11月8日(金)には、「アラブ人が語るアラブ諸国」ということで、アラブ人学生たちが出身国と出身地について日本語でプレゼンしてくれます。

 2週目の11月15日(金)には、アラブ人学生たちが期間中に日本語で書くレポートの発表があります。この日本語レポートはASPの活動の柱のひとつであり、1人のアラブ人学生につき5-6人の日本人チューターがつき、フィールドワークや文献調査のサポートをします。その成果をみなさんの前で発表する予定です。

 今回は、レバノン、エジプト、モロッコから計4名の学生が来日します。大学の都合で急きょ来日を取りやめざるを得なくなったアレッポ大学の学生の分も含め、プログラム参加者の間に、果たして人間同士としての繋がり、そして人間として尊重し合える平和が実現できるのか。プレゼンに足を運んでいただき、SFC生の皆さんにぜひ確かめていただきたいと思っています。



 奥田教授のASPにかける熱い思いがほとばしり続けるインタビューだった。奥田研、アラブ人学生のたくさんの努力のもと毎年着実に開催されるASP。今年もアラブ人学生と日本人学生の間に素晴らしい交流が生まれることだろう。



【2013年11月2日17:02 編集部追記】

記事内容を一部変更致しました。