ビットコイン等の仮想通貨の話題が熱くなる中、インターネットの未来を先取るイベント「Interop Tokyo 2017」が6月7日(水)-9日(金)に開催された。SFC CLIP編集部は、SFC関係者も多く参加した本イベントの様子を取材した。

ビットコインの先に待つブロックチェーンの形

カンファレンス「ブロックチェーンを理解する~解説と実演~(第1部)」では、斉藤賢爾SFC研究所上席所員、日本植物燃料株式会社の合田真氏、みずほ証券の小川久範氏、SBIホールディングスの藤本守氏を招いたパネルディスカッションが行われた。

モデレーター(司会者)を務めたのは斉藤所員。普段はSFCで「ブロックチェーン」の授業を行っている斉藤所員だが、モデレーターを務める様子には普段とは違う緊張感がうかがえた。

新技術としてのブロックチェーン導入の重要性

カンファレンスでは、まずはフィンテック(ファイナンス・テクノロジー)そのものへの注目度について語られた。SBIホールディングスでブロックチェーン推進室長を務める藤本氏は20年前から金融ITに従事しているが、「今は『フィンテック』と言ったほうがウケがいい」と語った。いずれ債券の発行をブロックチェーンで置き換えたいものの 、業界内の標準規格が確立されずに導入されればガラパゴス化に至るだろうという懸念も示した。SBIホールディングスでは多種のブロックチェーンへ積極的に参加しており、多額の出資も行っている。ネットバンクを本業としているからこその技術対応の柔軟性をアピールし、ブロックチェーンという新領域を先駆して覇者になることを目指す姿勢を表した。

みずほ証券などのメガバンクでは、すでに旧来技術を活用しているため、ブロックチェーン導入のハードルが高い。しかし、「新技術がもたらす利便性はコストを上回る」とみずほ証券の小川氏は語った。注目は金融界にとどまらず政界にも広がり、先日仮想通貨法が交付されたことにも言及した。これにより「仮想通貨」の概念が法的に定義され、日本はフィンテックを進める国々に仲間入りできたという。

黎明期にある仮想通貨 その未来は?

フィンテックの未来については、パネリストで反応が分かれた。藤本氏によれば、まだ黎明期にある仮想通貨の世界では規格の乱立が見られるという。詐欺まがいのものを排除する仕組みがないため、業界全体のイメージ悪化の危機も想定し得るという。それに同調する小川氏は法律上の仕組みに未熟な点が多いと指摘したが、「法律の成立が普及のきっかけになる」と期待を込めた。発展途上の技術に対して、SBIホールディングスは「よく分からなくてもひとまずやってみよう」という理解する努力の精神を持っているという。証券マンの見識として小川氏は、仮想通貨によって近頃インドが取り組んでいる課税強化と地下経済の撲滅の実現が容易になると分析し、国家にも検討のインセンティブがあると提言した。合田氏はトランプ旋風などに見られる反グローバリズムの勢力にもフィンテックが迎え入られると認識し、中央銀行等の国際的な金融勢力とそれに対立する地域勢力による乱立を予見しているという。

現状ではフィンテックの捉え方が揃っているとは言えないものの、業界の存続を意識した関心は明白であった。

中村修教授が推すクラウドサービスの賢い活かし方

「Interop Tokyo 2017」では、中村修環境情報学部教授による基調講演も行われた。中村教授はラスベガス発祥のこのイベントを日本に持ち込んだ当人であり、多くのSFC教員がこのイベントに参加していたのも彼の影響力あってこそ。そんな教授はイベント内最大の舞台に立つのに適していたと言えるだろう。

中村教授の講演は義塾におけるクラウドテクノロジーの活かし方についてであった。現在義塾のITインフラは公のクラウドサービスが支えているが、導入にあたって中村教授の見識が用いられた。クラウド事業者の選定にあたっては、技術面と契約関係が重視された。技術面においては、技術公開、およびエンジニアと良好なコミュニケーションが取れることが必要だと感じたという。また契約関係では、万一業者と争うことになった場合の係争地域についても考慮したそうだ。

この導入にあたっての最大の教訓は、「1つの業者に囲い込まれないこと」だったという。これにはかつて日吉キャンパス近くの神奈川県白楽に存在した図書館書庫の事案が参考になったという。この書庫は地理的な利便性に優れていたものの、再開発を理由に地主から撤退を要求された。書庫の移動問題は山中湖近くに書庫を1棟建てることで解消したが、この件から、提供者へ過度に依存しないようにインフラを構築する必要性を痛感したという。

現在、我が校ではさまざまなクラウドサービスを利用している。そして、セキュリティーに配慮してなるべくkeio.jp経由でログインできるように設計している。おかげで多くの事業者を選ぶことができるのだそうだ。取引先としては、Google、Box、Ciscoなどが挙げられる。

このイベントではクラウド事業者が来場者の大多数を占めたが、そんな観客層を相手に「あえて利用者の事情を代弁したつもりだ」と中村教授は付け加えた。かつてインターネットを先進的に導入したSFCだが、今後も積極的な通信技術が導入されることを期待したい。

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