12月9日の特集「湘南藤沢キャンパス35年のバス考古」にて、今までであまり振り返られることのなかったキャンパスと交通機関の関係を記しました。今まで書かれてきたキャンパス史にあっては、ずっと共にいたはずの交通機関や神奈中バスに関する記述がほとんど見られず後世への懸念点と考えていましたので、このたびSFC設立35周年に寄せて、ようやく交通機関に関する記録を少しばかりでも残すことができてよかったと感じるばかりです。
しかし、湘南藤沢のバスについて35年をまとめて振り返るにあたり欠かせない前史が嵩んでしまい、2025年現在の記録を残すことができませんでした。本記事では、「CLIP記者のあたまんなか」をお借りして、2025年現在のキャンパスのバス事情を記録します。




神奈川県藤沢市以下の地名が「遠藤5322」※1である我らがSFC=湘南藤沢キャンパスは、鉄道計画こそあれど開通する気配がなく、旅客輸送をバスに頼り切っている郊外型キャンパスです。当サイトでもバスに関する特集が何度か出ており、2009年6月5日の特集(旧SFCずかん)バスの玉手箱やぁ! -SFCのバス事情-では、SFCではたらく神奈中バスたちが紹介されています。
この時代には「ふじみ号:ふ01~03系統」と呼ばれたフィーダー路線バスが走っており、今では遅刻ギリギリを救ってくれることでお馴染みの湘19系統も存在していませんでした。また、ツインライナーの運用される湘25系統は綾瀬でなく茅ヶ崎が担当しており、そもそも綾瀬には大型ノンステップバスなど配置されていませんでした※2し、リーフサス※3で出っ張りバンパー※4、新ステップ※5装備のニューエアロスターやキュービックも健在だった時代です。
ち202 Gottlob Auwärter ネオプラン・セントロライナー(N4421) / 報道発表時の写真。2018年まで茅ヶ崎営業所が担当していました。 ち202 Gottlob Auwärter ネオプラン・セントロライナー(N4421) / 報道発表時の写真。2018年まで茅ヶ崎営業所が担当していました。
せ205 三菱ふそうエアロミディ(PA-ME17DF) / ふじみ号。綾瀬初のノンステップバスとなりました。 せ205 三菱ふそうエアロミディ(PA-ME17DF) / ふじみ号。綾瀬初のノンステップバスとなりました。
せ18 三菱ふそうエアロスター(KC-MP317M) / 大型バンパーと新ステップが特徴的。綾瀬最後のKC-MPとして2012年まで稼働したのち、鹿児島県へ移籍し活躍中。 せ18 三菱ふそうエアロスター(KC-MP317M) / 大型バンパーと新ステップが特徴的。綾瀬最後のKC-MPとして2012年まで稼働したのち、鹿児島県へ移籍し活躍中。
せ5 いすゞキュービック(KC-LV380L) / 2010年まで活躍したのち東南アジアへ輸出、安否不明。 せ5 いすゞキュービック(KC-LV380L) / 2010年まで活躍したのち東南アジアへ輸出、安否不明。
せ16 いすゞ(KC-LV380L)富士重7E架装 / 晩年は津久井へ移り、引退後は大分県へ移籍。5年ほど活躍しました。 せ16 いすゞ(KC-LV380L)富士重7E架装 / 晩年は津久井へ移り、引退後は大分県へ移籍。5年ほど活躍しました。
せ33 いすゞエルガ(KL-LV280L1) / 2003年式 小田急グループマテリアルズ統一仕様になる直前の短尺車です。 せ33 いすゞエルガ(KL-LV280L1) / 2003年式 小田急グループマテリアルズ統一仕様になる直前の短尺車です。
それから16年が経過したわけですが、かつて新車だった新短期規制※6のバスたちが大きく数を減らしている今※7、SFCをとりまくバスの世代はほとんど丸一周したことになります。そこで本稿では「バスの玉手箱 ver.2025」と称し、16年前とは全く変わったSFCを支えるバスたちを紹介します。これから十何年後あるいは数十年後か遠藤苅込に悲願の鉄道がやってきたときに、かつてSFCを支えた交通機関として伝えられていくことを願って……。

SFCを通るバス路線:9系統?

湘南台駅西口~慶応大学/本館前/中高等部前

  • 湘23系統(新道経由)
     [湘23]はSFC開設当初から運行されている系統です。下りは湘南台駅西口1番乗り場→慶応大学BT→慶応大学本館前→慶応中高等部前、上りは時間により本館前または大学BT発となります(日曜休校日は全便大学BTまで)。また、現在は設定されていませんが本館前23:15発の深夜バス(湘26)も存在しました。

    バスマップ:湘23系統
  • 湘24系統(笹久保経由)
     SFC開設当初から運行されている湘23ですが、まだ高倉遠藤線の遠藤~大学前間が開通していなかった初年度は笹久保経由で運行していました。湘23が現行ルートに移った際、旧経路として残されたのが湘24です。湘25ツインライナー運行開始までは毎時3~6本、以降は毎時2~3本から徐々に本数を減らし2025年度からは平日のみの運行となってしまいました。下りは昼過ぎからの運行で湘南台駅西口①→大学BT→本館前→中高等部前、上りは昼過ぎまでの運行で大学BT発となります(日曜休校日は全便大学BTまで)。

    バスマップ:湘24系統
  • 湘25系統(急行)
     [湘25]は2005年3月に開業した、湘23の経路で急行運転する系統です。途中は南大山にのみ停車します。連節バス車両で運行されており、日本で初めてノンステップの連節バスが運行された系統でもあります(回送経路が狭隘である都合で長らく茅ヶ崎営業所が担当しており、綾瀬に移ったの2018年と最近です)。現在の車両は当路線では2代目(神奈中全体では3代目)、価格は一般バスの3~4倍と言われる赤塗りの高級外車です。 実は全長・軸重だけでなく車幅も保安基準+50mmオーバーしています。なお当路線に充当される車両は原則、初代ツインライナー(ネオプラン・セントロライナー)を置き換えた2019年度式の2次車グループ(せ209-212)と、同年度式で輸送力増強のため増車された3次車グループ(せ201-204)が指定されているようで、通常使用しない中扉の整理券発行器にはカバーをかけられています。

    バスマップ:湘25系統
  • 湘28系統(中高直行)
     [湘28]は湘南台駅と中高等部前(下り)/本館前→湘南台駅(上り)を直通する系統です。かつて運行されていた湘23の直通便を別系統化したものとなっています。方向幕には「慶応中高等部」と表記されているほかキャンパス内では「中高専用」などと案内されていますが、運送法上は一般の乗合バスとなっています。スクールバスにしてしまえばいいとも思える不思議な存在ですが、運送法上はスクールバス即ち貸切バスと一般乗合バスの混成運用ができず運行効率が悪くなってしまうために生まれた妥協の産物なのかもしれません(情報求む!)。

    バスマップ:湘28系統
  • 湘19系統(宮原経由 綾瀬車庫)
     [湘19]は湘南台駅西口から湘23・25の経路で慶応大学BTまで来たのち、さらに西進し宮原・用田辻経由で綾瀬車庫まで行く系統です。かつて慶応大学~藤沢市北西部方面へのフィーダ路線として運行されていた「ふじみ号」を集約した路線で、その名残として慶応大学以西では運賃が調整されています。昼間は毎時1本のマイナーな路線ですが、上手く時間が合えば空いているバスで登校できます。 ただし綾瀬車庫行きでも湘20の方に乗ってしまうと笹久保から歩く羽目になるので要注意。

辻堂駅北口~慶応大学/本館前/中高降車場

  • 辻34系統(大庭隧道)
     [辻34]は辻堂駅北口から湘南ライフタウン地区を南北に縦断してSFCまで来る系統です。下りは湘南台駅西口①→大学BT→本館前→中高降車場、上りは時間により本館前または大学BT発となります(日曜休校日は全便大学BTまで)。辻バスの終点は中高前でなく"中高降車場"というロータリーとなっています。刈込~慶応大学は元々SFC側の細道を通っていましたが、辻35の開業に合わせ新道経由となりました。

    バスマップ:辻34系統
  • 辻35系統(急行)
      [辻35]は辻34の経路で急行運転している系統で、2018年5月より運行されています。朝夕には辻堂~湘南ライフタウンの区間便(辻23)も設定されています。綾瀬営業所には現在12両のツインライナーが所属していますが、辻堂系統では整理券発行機を使用する都合で運用グループが固められており、原則として2017年度式で座席モケットが黒色の1次車(せ205~せ208)が充当されているようです。

    バスマップ:辻35系統
  • 辻33系統(刈込・矢崎経由 綾瀬車庫)
     辻堂駅から綾瀬車庫を結び、SFCの南側を通ります。一日数往復のみの運転で、知る人ぞ知る系統です。

鴨池急行SoKanKan

SFC総環政メと看護医療学部・SFC-IVを結ぶシャトルバスです。SFC研究所・大前研による自動運転の実証運行が行われており、神奈中が運行を担当しています。

無くなった系統

  • 湘26系統(深夜バス)

    バスマップ:湘26系統

     湘23の終車が終わった23時台に颯爽と現れる深夜バスで、運賃は通常の2倍。本館前を23:15に出発する真の最終バスとして運行されていましたが、コロナ禍の2020年12月にあえなく廃止となりました。

  • ふじみ号(ふ01, ふ02, ふ03系統)
     基幹バスの位置づけとして開業した湘25のフィーダーバス(支線)として、時を同じくして開業した系統です。幹線バスとフィーダーバスがバスターミナルで接続するという理想的なハブアンドスポーク方式(ゾーンバスシステム)でしたが、利用者の低迷や小型車両が車椅子利用者には狭いなどの問題があり、湘19へ再編する形で2014年8月に廃止されました。

SFCで見られるバス:18車種?

全部同じようでよく見ると違うバスたち。SFCに入構するバスは現在18車種で、2023年に神奈中バスのデザインが刷新されてからは順次、新デザインの新車に置き換えられています。近年の神奈中バスは16~20年ほど活躍しますので、当面の間はいろとりどりのバスを眺めることができます。
なお、ツインライナーの担当が移ってからは、SFCへ入構するバスは全て綾瀬営業所が担当しています。神奈川三菱ふそう自動車販売を子会社に持ちふそうヘビーユーザーとして知られる神奈中ですが、綾瀬・藤沢・茅ヶ崎・中山の各営業所は現在でも一定数のいすゞ車を有しています※8。また、日デOEM時代のエアロスターSなども所属しており、事実上、日野(とトヨタ)以外の国内メーカー車が定期でSFCに乗り入れることとなります。

メルセデス・ベンツ

  • シターロ ノンステップ 連節バス
    • シターロG C2 O530G
シターロG C2 連節バス

いすゞ

  • エルガ ワンステップバス PJ-LV234N1・PKG-LV234N2
  • エルガハイブリッド ノンステップバス QQG-LV234N3
  • エルガ ノンステップバス 2DG-LV290N2・2DG-LV290N3・2KG-LV290N4
いすゞエルガ ワンステップバス いすゞエルガ ノンステップバス いすゞエルガノンステップバス ノンステップバス

三菱ふそう

  • エアロスター ワンステップバス PJ-MP35JM・PKG-MP35UM・LKG-MP35FM・QKG-MP35FM
  • エアロスター ノンステップバス PJ-MP37JM・QKG-MP38FK・2PG-MP38FK
  • エアロスターS ノンステップバス PKG-AA274KAN
三菱ふそうエアロスター ワンステップバス・エアロスターS ノンステップバス 三菱ふそうエアロスター ノンステップバス

鴨池急行SoKanKan

  • 三菱ふそう ローザ TPG-BE640G
  • 日産ディーゼル シビリアン PA-AHW41
三菱ふそうローザ

毎日バスに乗る生活も大学まで?

ここまでSFCに関わるバスをやや詳しめに紹介してきました。日々バスに乗って通学されている読者の皆様は、もう倦厭しているかもしれませんね。かくいう私も中学からバスで登下校しているので、まさか遠く離れた遠藤の地でさらに4年間(?)バス生活を送るとは思ってもおらず……(× × )
とはいえ、多くの方は大学を卒業してしまえばこれほどバスを使う機会も無いでしょう。「バス/bus」の語源はラテン語の「オムニバス/omnibus」=「全ての者のために」だと言われていますが、みんなで乗って、みんなで降りて、一人でも乗り降りする人がいたら停まる、こんな可愛らしくて素敵な乗り物には、今のうちに乗れるだけ乗っておいた方が良いかもしれませんね。


※1-1 看護医療学部は「遠藤4411」、中高等部は「遠藤5466」
※1-2 学生証や義塾発行の資料等に記載される住所はこの通りですが、厳密には「苅込(敷地の中央部)」「諸之木(敷地の東部)」「西谷(体育館~グラウンドのあたり)」「打越(ベータビレッジのあたり)」「矢崎(中高等部)」の5つの小字に跨る形でキャンパスが設置されています。本館=アルファ館が字苅込に位置するため、一部の資料には「藤沢市遠藤字苅込5322」と記載されています。ちなみに神奈中バスの停留所名はそれぞれ「刈込」「諸之木」「遠藤西の谷」「遠藤打越」「矢崎」になります。
※2 ふじみ号以外の大型ノンステップバスが綾瀬にやってきたのは2012年、湘27系統(湘南台駅東口~ドリームハイツ)が戸塚から移管された際にやってきた横浜市のノンステ補助金車3両(KL-MP37J系)が初となります。ドリームハイツ線での運用が基本でしたが、間合い運用でSFCにもやってきていたそう。後に他営業所からやってきたPJ-MP37J系に置き換えられますが、綾瀬を含むインター地区の新車がノンステ指定になったのは神奈川県のノンステ補助金制度が始まった2015年以降の話で、それまで大型ノンステは扁平3両とエルガハイブリッド1両のみの異色な存在でした。
※3 リーフサスペンション。サスペンションとは車輪軸と車体の結合部に設置されるばねのことで、かつては板ばね(リーフサスペンション)が主流であったが現在はほとんどの車が空気ばね(エアサスペンション)を搭載しています。
※4 路線バス専業としては日本一の車両数を保有する神奈中ではメーカー標準仕様ではない独自の特注仕様を数多く備えており、その代表が出っ歯のように手前に突き出した大型のフロントバンパーと、運賃の前払い/後払いを示す幕でした。
※5 同じく神奈中の独自仕様で、ステップ車の前扉において、開扉時に床面が20cmほど下がり地面との段差をなくすものでした。現在はエアサスの普及によりニーリング機構(バス自体の車高が下がり左側に傾く)が標準装備となったため、姿を消しました。
※6 ディーゼル車の排ガス規制のひとつ。新短期規制(平成16年排出ガス規制)は2003年~2005年製のバスに課されていました。
※7 神奈中バス一般車両の使用年数はコロナ禍前で約15年、近年は19年前後。
※8 伝統的に、綾瀬・藤沢・茅ヶ崎・中山(←大和)ではいすゞ車を、伊勢原では日野車を一定数有しています(ハイブリッド・連節などの特殊車を除く)。ただし、2017年以降においては三菱ふそうが中型バスの製造を終了したため、中小型バスについてはいすゞ車の導入が進められています。