「慶應線」と呼ばれた相鉄東急直通列車 本当に便利なのかを徹底シミュレーション
※これは2023年3月17日に「CLIP記者のあたまのなか」に掲載された、筆者の主観も多分に含んだ記事です。
SFCは遠い、それが我々SFC生を含めた全塾生の常識だ。そんななか、2000年以降準備が進められてきた新横浜線は、3キャンパスの最寄り駅である三田駅・日吉駅・湘南台駅をひとつに結ぶ期待の新路線だった。
一部では「慶應線」などと揶揄されたこの路線は、果たして本当に塾生の役に立つのか。ダイヤをもとにシミュレーションをしてみた。
SFC・日吉・三田の各キャンパスの最寄が直通
新横浜線が「慶應線」などと呼ばれる最大の理由として、慶應義塾大学の3大キャンパスとも言える三田・日吉・SFCが直通すること、さらには芝共薬キャンパス・志木高校・幼稚舎の最寄り駅にも直通するという点がある。周りから何かとやっかまれやすい弊大学の特徴もあいまって、一部の週刊誌などで「慶應の陰謀」などとからかわれている様子を目にした方も多いだろう。また、新宿から八王子などを結ぶ某鉄道会社にも掛けられており、これを最初に思いついたひとは満面の「したり顔」をしたに違いない。
そんな「慶應線」こと相鉄東急直通線・新横浜線が明日18日に開業するのにあたって、この直通列車が (自明に慶應生である) SFC生にとって便利なのか、時刻表を元に徹底的にシミュレーション・検証してみた。
イメージ。ちなみにこの車両は車体が大きいため東急へ直通できない。
新横浜線の概要を確認
湘南台から直通の列車は少ない
新横浜線が相鉄本線・いずみ野線、東急東横線・目黒線のそれぞれに直通するということは、かなり前から分かっていた。では、さぞかし多くの列車が「慶應線」を行来するのであろうかと思うと、そうでもない。昨年12月に発表されていた運行計画によると、湘南台などいずみ野線方面からの列車は東急東横線方面へ向かう列車が主であり、目黒線へ向かう列車は少ない。さらに目黒線に向かう列車の過半数は東京メトロ南北線に直通してしまい、湘南台-日吉-三田を直通する列車はわずか6本 (休日は3本)で、ほとんどが朝に集中している。
上り列車の運行本数
始発 | 東横線方面 | 目黒線方面 | ||||
---|---|---|---|---|---|---|
平日 | 休日 | 平日 | 休日 | |||
いずみ野線 湘南台 | 35本 | 34本 | 11本 | 目黒から 南北線に20本 三田線に30本 | 9本 | 目黒から 南北線に14本 三田線に31本 |
相鉄本線 海老名,大和など | 11本 | 3本 | 43本 | 42本 |
また日中の時間帯には湘南台-新横浜-日吉を直通する列車自体が30分に1本しかない。多くの場合、二俣川などで乗り換えることなるだろう
運賃は割高
新しく開業した路線であるため、相鉄新横浜線、東急新横浜線、そして相鉄いずみ野線には各社の距離あたりの運賃にプラスされる「加算運賃」が設定されている。仕方ないことだが、運賃面では割高になりがちだ。個人的には、新横浜や日吉までなら新横浜線が便利だろうが、三田まで行くのであれば横浜で乗り換えるかな…などと思ってしまう金額になっている。詳細は少し下の表を見てほしい。
いずみ野線が、とにかく遅い
新横浜線が運賃面で不利なのは仕方ない。では、所要時間面ではどうだろうか。
たとえば平日日中ダイヤの例として、10:25に湘南台を出る新横浜線方面の列車 (新横浜から急行となる渋谷経由 川越市行) に乗ったとする。この列車は11:03に新横浜、11:10に日吉に到着し、これらの駅には従来よりも早く行くことができるようになる。
一方で、同時間帯の列車をYahoo!乗換案内で検索してみると、他の従来からあるルートのほうが安くて早く着くケースが散見される。相鉄東急直通の列車は東急線内では急行として運転されるにもかかわらずだ。
10:25前後に湘南台を出たときの到着時刻
行先 | 新横浜線経由 10:25湘南台発 | 他ルート | |
---|---|---|---|
新横浜 | 11:03着 433円 | 10:26発 11:17着 430円 | 横浜市営地下鉄 |
日吉 | 11:10着 683円 | 10:25発 11:29着 590円 | 相鉄-(二俣川)-相鉄-(横浜)-東横線 ※ |
渋谷 | 11:31着 791円 | 10:24発 11:19着 611円 | 小田急-(中央林間)-田園都市線 |
三田 | 11:44着 ※二俣川乗換 969円 | 10:25発 11:29着 769円 | 相鉄-(横浜)-JR |
10:35発 11:39 912円 | 地下鉄-(上大岡)-京急-(泉岳寺)-地下鉄 |
※ 新横浜線経由のケースと同じ列車で湘南台を出発
筆者としては、やはり日中のいずみ野線に速達列車がないことが影響しているように思われる。いずみ野線では、平日朝に3本設定されている「通勤特急」を除くと全列車が全駅に停車するため、時間がかかってしまう。実際に通勤特急は湘南台-新横浜を28分ほどで走破するが、ほかは34分ほどかかってしまう。以前のように昼の特急も復活してほしいものだ。
SFC生の役に立つのか?時刻表でシミュレーション
では、実際にSFC生、とくに湘南台に暮らしている学生にはどのような影響が出るのだろうか。時刻表の情報をもとに、いくつかのシチュエーションでシミュレーションしてみた。
日吉の1限には少し便利に
日吉キャンパスで朝9:00に始まる授業に出席しようとすると、湘南台を8:03に出て日吉駅に8:37に着く「通勤急行」がちょうどいいタイミングだろう。ただしこの列車を逃すと次の電車は20分後だ。
一方で、17日までの旧ダイヤでは7:48に湘南台を出て、相鉄線から横浜で東横線に乗り換えるルートで8:44分に到着していた。これに比べると15分ほど支度する余裕が増え、しかも直通列車に座って向かうことができる。
新横浜が便利に 都内への移動は影響少ないか
当然かもしれないが、湘南台-新横浜の移動はかなり便利になる。これまで新横浜に行くには「ブルーラインに乗り続ける派」「横浜からJR派」など様々な派閥があったが、新横浜線が決定打になるだろう。名古屋や関西への帰省や旅行には、非常に便利になりそうだ。
しかし、前述のとおり都内で移動する際には時間・運賃の両面で不利なケースが多く、この点で恩恵を受けるケースは少ないだろう。
渋谷からの終電が延長!
渋谷近辺で飲み会などに参加する人にとって、湘南台に帰る終電は常に気にかかるものだ。従来のダイヤでは23:46に渋谷を出て、品川・戸塚を経由して湘南台に至る列車が渋谷を脱出する最終列車であった。しかし、新横浜線の開通によって23:53に渋谷を出る急行が利用できるようになった。二俣川にて湘南台行きに乗り換える必要はあるが、この7分は大きいと感じる経験をした人も多いだろう。(※筆者何年も前に20歳を超えています)
あんまり慶應線ではないかも
今回の新横浜線開通・相鉄東急直通によって湘南台-日吉は少しだけ便利になるものの湘南台-三田には (直通列車があるのに) あまり影響がなく、日吉-三田に至っては全く影響がない。むしろ日吉駅が始発駅でなくなるため、法経商文学部あたりの学生にはネガティブなケースさえあるだろう。慶應線と呼ぶにはあまりにもコスパが悪い。
やはり今後は真の慶應線の完成に向けて、いずみ野線のSFCまでの延伸に期待したい。その頃には私も含めて読者のほとんどはSFCにいないと思うが…