ロシアによるウクライナ侵攻から1年が経った今日、岸田首相は「核兵器使用があってはならない」と今年行われる「G7 広島サミット2023」に関連付けながら会見を行った。まだまだ終わりの見えない戦争にやるせなさを感じつつも、「ロシア語ベーシック」など昨年一年間のSFCでの学びから私が感じ、考えたことを書き留めた。

【2/24 固有名詞を訂正しました】

伝える立場としての幸せ

と、本題に入る前に「私が誰かを伝えることが先だ」と先輩にご執達を受けたので改めて。

中高6年間を新聞部で過ごした私は「大学では新聞以外の伝え方をしてみたい!」と、学部1年からWEBメディアサークル「SFC CLIP」に所属した。自分以外の誰かの人生を、取材という切り口で知れることが楽しくて、そして何より、田島くん取材時に開口一番、「実は、僕自身に取材をしてもらえることがあまりなかったので嬉しいです!」と伝えてくれたことなど、「取材を通して相手にも喜んでもらえること」が今も編集長として、取材を続けている理由だと思う。

前置詞の「вとна」から見えるロシアの姿勢

そんな日本語で伝えることを続けている私にとって、ウクライナ侵攻当時は、SNS上で初めて「ロシア語」に触れる機会だった。「そんな言葉を、少しでも身近に感じたい」と、春学期から「ロシア語ベーシック」を履修した。

担当教員の八島雅彦先生からロシア語の前置詞である「вとна」を学んだ回では、国名などの前に使われる"в"と地名などの前に使われる"на"と違いを学んだ。ロシアでは「ウクライナ」の前置詞に"на"を使っており「ウクライナのことを国ではなく、(ロシアの)地域として捉えていると読むこともできる」という言葉こそ、言語として学んでいるロシア語が今の時事問題の理解に繋がった瞬間だった。

翻訳機能で意味の把握はできても、こういったニュアンスの違いは「その言語を学んで初めて知れたこと」だった。言葉には、発信者の細かなニュアンスが含れている。だからこそ、その違いに気づいた上で伝えられる人になりたいと感じた。

意識次第で、授業同士が結びつくと感じた2022年

それこそ、SFCで言語を学ぶ意味は「窓」に例えられ、言語を入り口に、新たな言語をもう一つ学ぶことで、これまで知らなかった価値観・世界観に遭遇し、ひいては多様な研究やグローバルリーダーに繋がってほしいという思いがあるという。

言語をもとに学びへと繋がっていく(サイトより引用) 言語をもとに学びへと繋がっていく(サイトより引用)

今学期の清水唯一朗教授の「古典と現在」で学んだ「歴史の地層の上に、生きているんだ」という言葉が改めて物事を多面的に捉えるためのきっかけになり、中浜優子研究室では言語を学ぶことには目的や興味がある方が学びやすいことを知る事ができた。

学部3年生として、大学生活が折り返しになった2022年度。「自分のプロジェクト」を意識することで、やっとバラバラなSFCでの授業の学びの繋がりと広がりを感じることができた。

目の前の人を伝え続けるインタビュアーでいたい

昨年7月28日に発売された『ウクライナ戦争日記』には、「一日に、2、300台……いや、500台もの戦車を見た」など、悲惨な現状を24人の日記や声から読むことができる。ページを捲る手が重く感じるほど、ウクライナで生きる人たちの今が伝えられている。

メディアセンターで借りることができる『ウクライナ戦争日記』 メディアセンターで借りることができる『ウクライナ戦争日記』

その中のひとつに、「ある日、(ロシアの)軍人がほかの人にバレないように(ウクライナ人の)私にスニッカーズをくれた」という言葉があった。そして、この人の日記の最後の方にはこの言葉も、書かれていた。

「『あなたたちウクライナ人が、いつか私たちロシア人を許してくれることを祈っているわ』
生まれて初めて見た、この本当の誠意を、私は生涯忘れることはないだろう。」

ロシア人ながらも軍の目をかいくぐってウクライナ人に手を差し伸べる人もいる。当たり前ながら、言葉にされなければ、いないことのように感じられてしまう。これは場所は違えど、Google Mapに載っていない美味しいご飯屋さんや取材されない人たちでも言えることだと思う。

だからこそ、私は、目の前の人を伝え続けることが大切だと感じた。

SFC CLIPの目的は「キャンパスの生の姿を伝え、記憶する」こと。自由度高く、多様な取り組みをしている学生の多いSFCにいる私だからこそ、伝えられることは何か。残りの一年をどう学び、そしてどう伝え続けるか。これからも自問しながら、伝え続ける人でありたいと改めて感じる日だった。

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