5月2日にオープンした「湘南台温泉らく」を運営する株式会社テクストの奥畑哲代表取締役インタビュー。今回は後編をお届けする。前編では、温浴施設の開業に至る経緯から、空間づくりに仕掛けたこだわりに迫った。後編では、学生という湘南台では外せないターゲットから、湘南台のまちづくりに対する思いまでを聞く。

以下、奥畑代表インタビュー後編をお届けする。前編に続けてご覧いただきたい。

「学生」は外せないターゲット 22時間営業の理由にも

— これまでコンセプトについて伺いました。もうひとつ大事なのがターゲット設定。それは、ご年配の方や子どもが育った家族連れ、友だち連れ……

もちろん、学生も入っていますよ。このまちで学生をとばしてはいけません。

— よかったです(笑)。やはり湘南台で学生の存在感は大きいのですね。

そう。学生がまちのなかに組み込まれています。実は、22時間営業をしている理由の半分は、学生です。

もう半分は、湘南台で働いている方。例えば、飲み屋で働いている方は、始発を待つ以外、仕事終わりに行くところがありません。終電に乗り遅れたビジネスマンも同じです。

— 半分は学生ですか。22時間営業に対する反響はとても大きかったです。

やはり夜間のターゲットのベースは学生。慶應をはじめ、日大もあるし、文教もあるし、多摩大も。学生にとっても、湘南台はいまだに遊ぶところがありません。夜も飲み屋はありますが、そもそも最近の学生はそんなに飲まなくなっていますよね。学生のまちだから飲み屋をつくればよい、というわけではなくて、もうちょっと違うサービス業を提供しようということです。

夜の湘南台のまちに浮かび上がる「ゆ」の文字。

「飲み」ではなく「お風呂」という選択 料金設定の裏側

— ちょっと言いにくいのですが、料金設定が高めではないかという反応も学生からありました。

そこなんですよ。申し訳ないですが、料金設定の判断に学生を入れることはできませんでした。それは「温泉」にこだわったからなんです。

温泉を持ってくると、そのコストと一人150円の入湯税で入館料が上がってしまいます。逆に言えば、温泉を持ってこなければ、数百円下げることができます。例えば800円のお風呂屋さんがいいのか、1250円(平日)で温泉に入れるのがいいのか、どっちをとるか。

差別化もありますが、さきほども話したように、湘南台のまちを考えたとき、「うち(湘南台)のお風呂には温泉がある」というグレード感を与えたかったのです。

— それで1250円を選んだ、と。夜間ターゲットの半分は学生とのことですが、夜間料金(翌1:00以降も滞在)は2400円ですよね。

学生には高いかもしれませんが、夜間の重要なターゲットである学生のことを全く考えていないわけではありません。じゃぁ、夜間料金の2400円は何をもって設定したのか。それは、居酒屋のコンパ料金です。

— 飲み代ですか!? 確かに、飲み放題付きコースで3000円くらいです。

だから、それ以下のところで設定したというわけです。いまは学生が必ずしも飲むとは限らないですよね。

— つまり、友だちとの夜の過ごし方として、飲み会ではなくお風呂屋さんという選択を提案するということですか。

そういうことです。別の見方をすれば、漫画喫茶・ネットカフェのプラスα。ただ静かに寝るのではなくて、夜も会話してコミュニケーションや情報交換ができるような空間を提供しているのです。もちろん終電に乗り遅れたビジネスマンは静かに寝ているだろうけど、片一方で学生さんについてはそういうイメージです。

— ちゃんと私たち学生のことも考えてくださっているのですね。

実際、学生さんにも多くご利用いただいています。想定したように、小声でおしゃべりしたり、カードゲームやスマホ・ゲーム機で遊んだりするなど、それぞれに夜の過ごし方を見つけてくださっています。

畳の上に寝転べる縁側ラウンジ。おしゃべりにも最適。

“大学が逃げない”おもしろいまちを目指せ

— また一つ湘南台にお店が増えましたね。今後、湘南台のまちづくりはどうあるべきでしょうか?

やはり、駅前に商業施設を集積しないと何もなくなっちゃうのではないかという思いが強いです。まちは、新しくマンションが建って売れているときは元気でも、ニュータウンと一緒で30年もすれば衰退してしまいます。湘南台も、何もないところからマンションは建ったけど、正直あまり変わっていません。

— 住宅地のままでは衰退してしまう、と。

はい。そこで重要なのは大学という存在。私の一番の危惧は、大学がどこかへ行ってしまったらどうしようということなのです。大学があれば、30年経ってもまちが若いままで活気が続きます。だから、「大学が逃げないまち」をつくればよいのです。卒業後も自慢できるようなまちを。

— 湘南台が活気ある学生街になるためには……?

そのためには、東京や横浜という大きな都市を意識して競争しなければいけません。別の視点で見れば、20年30年経ったら当時の学生がお店を開いているということも必要です。そうしなければ、学生街にはなりません。

まちと学生との間に良い協力関係ができるのが理想です。学生にとって面白いまちになってほしい。私たちが目指すべき次のステップはそれですね。

常にまちづくりをベースとして語る奥畑代表からは、活力とともに湘南台のまちに対する強い信念が伝わってきた。温泉に浸かって学生生活の疲れを癒やしながら、SFCと湘南台の関わりについて仲間と一緒におしゃべりしてみてはいかがだろうか。

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