辻下直美さん(環3)監督の短編映像作品「運筆」と「Mary’sDiet」、注目を集めている。
 特に「Mary’s Diet」は、文化庁メディア芸術祭エンターテイメント部門・映像 審査委員会推薦作品に選ばれ、今月から来月にかけて、東京都写真美術館での展示会が決定している。


 これはサントリー「DAKARA」のコマーシャル作品や「機動戦士ガンダム MS IGLOO 1年戦争秘録」などと並んで、評価を受けているものである。また、「運筆」・「Mary’s Diet」の二作品ともSantaFe × shockwave.com Internet Shortfilm Festival 2005コンペティションプログラムで配信されており、今月19日(土)までウェブでの投票が受け付けられている。
 さらに、「運筆」はインディーズムービーフェスティバル入選作品となり、現在グランプリ決定のための投票期間である。※各賞および展覧会の詳細、作品の詳細はこの記事末尾に掲載。
 SFC CLIPは辻下さんにメールインタビューを行なった。
–映像作品をつくりはじめたきっかけは?
 ヤン・シュヴァンクマイエル(チェコ)やサルバドール・ダリ(スペイン)等のシュルレアリストのショートフィルムを観て心惹かれました。それまで映画というと「2時間」「映画館で観る」「レンタルされるもの」という概念、またハリウッドの「エンターテイメント性の高い作品」がイメージとしてありました。
 しかし、これらの作品に出会い、映画を自主制作するコミュニティでは短編映画が主流なことを知り、また、映画という媒体が、作家性をアピールするための一手段になり得るのだということも、改めて感じさせられました。
 早速、手探りで脚本を書き、実家にあったHi8カメラで撮影し、ビデオデッキによる編集を行いました。しかし、「再生→録画」の繰り返しによるアナログ編集では当然画質は悪くなり、カットのつなぎもノイズだらけの作品が出来上がりました。
 結果的には、失敗ともいえる仕上がりにしかならなかったのです。後に、この経験が失敗の原因を解決するためにはどのような角度からアプローチすればよいのか。また、それを遂行する技術をどのように習得すべきかといった積極的な姿勢を学ぶきっかけとなりました。
–どのようにして映像作品をつくる技術を習得したのですか?
 当時(高校2年)地元で映画の講座が開講され、その受講生を中心に「宝塚映画研究会ZUKA」が結成されました。私は結成当時の最年少メンバーとして所属していました。この研究会の最年長の方がデジタル編集を心得ており、私の編集技術の師匠となってくださったのです。そこからデジタル技術のツールの使い方を勉強させてもらい、演技や撮影についても知識を蓄えることができました。
 しかし、教えてもらえることはすべて基本です。やり方がわかったら、あとの応用的な技術はすべて独学で勉強しました。映画の編集本や監督術を熟読し、技術力をつけることに必死になった時期もあります。
 中でも一番自分を成長させてくれたのは、制作の現場での経験です。制作で思いもしなかった問題に出くわし、ひとつひとつ解決していくことがとても重要だと思います。
 ですから、私は良き先輩や仲間と協力しあった制作によって、作品を作る技術を磨いていったとのだと感じています。
–通常、どのようにして一つの作品をつくりあげていくのですか?
 通常、映画制作は準備段階、撮影、編集段階と3つの工程を踏みます。

  1. 準備段階
    まず、作品のモチーフやネタ、世界観などを探します。
     それをあらすじのような短い文章でストーリーを構成し、完成作品の長さを設定します。脚本に起こす段階で綿密にキャラクターや台詞を固め、最終的には漫画のような絵コンテに起こします。
     そこで作品に携わってほしいメンバーを勧誘します。撮影、照明、録音、記録、音響、音楽、CG、合成などです。(学生の場合兼任が多いです)
     撮影準備、撮影場所の確保、役者の確保などもこの期間に行います。
  2. 撮影
    朝から晩までかけて撮影を行います。
     この日だけはどうして太陽は沈むんだろう、と本気で思います。
  3. 編集段階
    撮影素材の編集、加工、仕上げを行います。
     音楽を制作してもらい、音響によってリアリティを増す映像が作られます。また私の作品には実写合成が多いので、3DCGで制作した「現実にはあるはずのないもの」を「現実にあるように」合成します。
     ここでデジタル技術が大きな役割を持つように感じています。実写とCGの合成作品はまだ可能性が限りなくあり、アイデアによりまだ見たことのない世界へ視聴者を連れて行けると思います。
    –今後はどのような作品をつくりたいと考えていますか?
     人の心に忘れられない印象を与える作品が作りたいです。
     時に柔らかく、時に激しく、時に無に帰れるようなそんなイメージです。作品は形になって残ります。大げさですが、作品に出会ったときは自分の人間性の全てで理解すると思います。
     ある人が作品を始めてみたときの印象、1年後、10年後は大きく違います。作品を通して未熟だった自分を感じ、成長を感じることができる。私はそんな素晴らしい作品にいくつか出会ってきました。作品は鏡のように自分を映し出し、また作品を作ることも同意だと感じています。見る人に語りかけるような作品を目指します。
    –ありがとうございました。
    以下、各賞および展覧会の詳細、作品の詳細
    ▼SantaFe × shockwave.com Internet Shortfilm Festival 2005
    http://santafe-shockwave.com/
    コンペティションプログラムで投票受付中
    ・作品:「Mary’s Diet」、「運筆」
    ・投票期間:1月7日-1月19日
    ▼平成16年度 文化庁メディア芸術祭 エンターテイメント部門・映像 審査委員会推薦作品
    http://plaza.bunka.go.jp/festival.html
    展示会
    ・作品:「Mary’s Diet」
    ・日時:2月25日(金)-3月6日(日)
    ・会場:東京都写真美術館 1F/2F/3F
    ▼第7回インディーズムービーフェスティバル短編CG部門入選作品
    http://www.broadstar.jp/film_fes/imf/movie2004/
    インディーズムービーフェスティバル http://www.the-indies.com/
    グランプリ決定のための投票受付中
    ※購入も可
    ・作品:「運筆」
    ・投票期間:5月31日(月)まで
    ●「運筆」 制作/goose
    原作・監督・編集/辻下 直美
    プロデュース・照明・2D合成/小山 裕基
    撮影監督/ディン アリス
    3DCG・音響・美術/荒川 孝宏
    音楽/小山 嘉崇
    出演/藤田 祐介、白井 ノリ子、横室 宏紀、花澤 さのすけ
    ●「Mary’sDiet」 制作/PROPAN
    監督、脚本、編集/辻下直美
    3DCG/荒川孝宏
    撮影/小山裕基
    照明/近松光
    記録/福田麻衣子
    音響/三浦北斗
    音楽/伊藤明日香
    出演/小島あやね、伊藤マリ奈(声)