今回から、「SFCの遠隔教育」に焦点を当てた連載を開始する。SFCではインターネット上での遠隔授業や、ビデオミーティングなどが盛んに行われている。例えば「SFC Global Campus」をはじめ、授業、研究プロジェクトの会議など、利用は様々な用途・場面に及ぶ。本連載では、遠隔教育を広義的に捉え、どのようなことが実際に行われているのかを取り上げ、またその問題点などを検証する。


 第1回目は、リニューアルを終えたAVホールを取り上げる。メディアセンター北側、地下1階にあるAVホールは、10面の連続ガラススクリーンが特徴で、ネットワークカメラを駆使することで、リアルに近いビジュアルコミュニケーションが可能となる。6日(金)から利用を再開した。
 かつてのコンクリートむき出しだった部屋が、リニューアルによって、白を基調とした非常に綺麗な部屋となった。このホールの一番の特徴として上げられるのは、国内では珍しい10面の連続体のガラススクリーンだ。コの字型の壁一面がディスプレイとなっており、ホールに居ながら「ヴァーチャルな世界をよりリアルに近づける」ことが目的となっている。

壁一面がスクリーン。ホワイトボードにもなっている
 残り一面の正面スクリーンには、150インチ、5.1chサラウンドのスクリーンを設け、半ば映画館のような迫力あるスクリーンとなっている。それぞれのスクリーンには、PCが一台ずつ接続されているが、部屋からは隠してあり、裏部屋に操作卓と共にまとめて置いてある。そのため教室内は、非常にすっきりとした印象になっている。教室内でどのスクリーンに表示させるかは、専用PDAなどで操作を行う。

150インチスクリーン

接続されているPC

操作卓
 このAVホールのリニューアルの背景について、湘南藤沢メディアセンター事務長の村上篤太郎さんは、「昨年、慶應義塾の『デジタルメディア・コンテンツ統合研究機構(DMC)』が文部科学省科学技術振興調整費(スーパーCOE)に採用され、各キャンパスにコンテンツを作る道具として工房というものを作りました。工房の連携のため、各地域に遠隔ビデオシステムを作ることになりましたが、他キャンパスでは、空間の中にパソコンとカメラがあるのに対して、SFCでは違う視点で作ってみようということになりました。教授らとメディアセンターが、アイディアを出しながらこのホールの仕様を決定していきました」とした。

取材に応じていただいた、村上さん
 スーパーCOEは5年の期間の中で行われ、3年目に中間評価が行われる。昨年は環境整備に費やしたため、今年はコンテンツ作りの勝負の年となる。当然、他キャンパス間でのコンテンツ制作を支援するホールとなるわけだが、このスクリーンシステムには録画システムも組み込まれており、授業・ミーティング自体がコンテンツの一つとなり、「コンテンツの底辺を広げていくことができる」というまた、学生がこの設備に見合った、コンテンツ・アプリケーションを作成することも期待しているそうだ。
 ただ注意したいのは以前のAVホールとは利用方法が大幅に変更になった点だ。このAVホール改修には、DMCの予算が使われていることから、メディアセンター側としては、予算にあった使い方をしたいという意向。「今までのように、サブゼミ、クラブ活動、サークルのような団体が使うのは、お断りしたい」ということも付け加えられた。当然、将来的な一般開放への含みを残したが、現状はDMC関連のものに使ってもらいたいという。
 申込者は教職員、リサーチアソシエイト、授業・研究会TA、SAに限られるため、一般の学生の申し込みはできない。利用目的は、遠隔会議システムおよびプレゼンテーション機能を使った学術利用、公開も可能なアドミニストレーション業務に限っている。ホール使用にあたっては、6人のリサーチアソシエイトが補助を行う。利用希望者は、利用1週間前までに申し込みを行う必要がある。 
 一方で、AVホールの前にある、ホワイエと呼ばれる空間は、誰でも自由に使用することができ、占有予約をすることも可能だ。稲蔭正彦研究室が制作した、「Smart Wall」という作品の展示もある。

AVホール前、「ホワイエ」
 まだリニューアルオープンしたばかりのAVホールで、利用実績がないが、今後その活用方法は無限に出てくることとなりそうだ。またこれらの活用したコンテンツ・アプリケーション作りにも期待したい。