11月20日(水)未明、複数のメディアによってH.M.総合政策学部准教授(以下、M准教授)が、愛知県青少年保護育成条例違反(淫行・わいせつ行為禁止)の疑いで、愛知県警西署に逮捕された。SFC CLIP編集部では、義塾の対応や今後の方針、ならびに学生の反応を聞いた。

逮捕までの経緯

メディア各社の報道によると、M准教授は2012年11月4日(日)、愛知県名古屋市中区のホテルで、同市西区在住の女子中学生(当時13歳)が18歳未満であると知りながら、みだらな行為をした疑いがある。警察は現在、女子中学生とM准教授の間に金銭のやりとりがあったとみて調査を進めているという。

SFC CLIPの調査では、逮捕が報道される前の11月18日(月)の夜には、捜査員とみられる集団とともにM准教授がSFCのν棟(デザイン棟)にあるH.M.研究室に入っていくのを複数のSFC生が目撃していたことが分かった。

その日の2時限目には、M准教授による授業「デザインスタディーズ」が開講予定であったが、予告なく突然休講になっていた。また、同日18:30から早稲田大学早稲田キャンパスの大隈記念講堂にて開催された「16th DOMANI・明日展プレイベント」にもパネリストとして参加予定であったが、「急病のため」という理由で欠席していた。

翌日、M准教授は、11月19日(火)に愛知県警西署に逮捕され、本日11月29日(金)13:00現在、M准教授は愛知県警西署に勾留されている状態だ。容疑の認否は留保しているという。

世界的建築学者として活躍していた経歴

M准教授は70年生まれ。89年開成高等学校卒業後、東京芸術大学芸術学部建築科に進学。途中2度の世界旅行を経て25歳で卒業し、モスクワ建築大学研究生として1年間ロシアに渡った後、東京大学大学院工学系研究科建築学専攻修了。

卒業時の修士設計においては、有名建築家の原広司氏などに指導を受けて作品「全長4556mの住居」を発表し、優秀作品として顕彰された。

その後、伊東豊雄建築設計事務所に就職し「せんだいメディアテーク」等の実施設計を務め、01年から日本政府文化庁の派遣芸術家在外研修員として中国に渡り、北京大学で講師も務めている。

05年に個人事務所である北京H.M.建築設計諮詢有限公司を設立、同時に総合政策学部に助教授として着任し、07年に同准教授となり、現職。11年には東京大学から博士学位(環境学)を授与されていた。

建築家としても活躍しており、北京を中心に世界各地で作品を残している。今年は研究室で設計した「コンゴ民主共和国日本文化センター」でグッドデザイン賞を受賞し、同時にベスト100作品に選出され、今月初頭に東京ミッドタウンでプレゼンテーションを行ったばかりであった。

海外にも及んだ逮捕の衝撃

M准教授の逮捕については、北京でも波紋が広がっている。現地メディアは「对于H.M.的被捕, 日本建筑学界相关人士惊讶万分, 身为那位泰斗的门生,竟然能犯下如此猥亵案件,简直是令人无法相信(編集部訳: H.M.の逮捕について、日本の建築学に関する人たちは驚いている。Mという高く評価される人がこのような性犯罪事件を犯すなんて、ただただ信じられない)」などと報じている。

広がる困惑、学生の声

報道各社によってこのニュースが明らかになったのが、SFC最大のイベントであるOpen Research Forum 2013(ORF2013)の2日前であったということもあり、SFC生の間では混乱が広がった。特に各社が一斉に報じた直後、SNS等には、学生たちによる疑問や怒りの声が多くみられた。

なお、ORF2013会場では、M研究会で出展予定であったブース・展示物ともすべて別の教員名義に差し替えられており、セッションもM准教授不在で進行した。

SFC CLIP編集部が、M准教授の授業履修者に個別に話を聞いたところ、「事実なら残念」「信じられない」という声や、「社会的に許されないことなので、履修者に謝罪してほしい」「たった1人のせいで、大学全体が批判されて迷惑」などといった声も少なくなかった。

大学や各所の対応は?

今後の対応について、湘南藤沢事務室は「講義については、他の教員が受け持つなどの対応を含めて検討中」とし、その他のことは、事実調査中で未定の状態だとしている。

M准教授は今年度、「グッドデザイン賞」を受賞している。同賞を主催する公益財団法人日本デザイン振興会事務局に、賞の取り下げなどを含めた何らかの対応を行うかを問い合わせたところ「現在は慶應義塾としての対応を問い合わせているところで、それが分かり次第検討する」とのことであった。

また、今月1日発売の雑誌「新建築」11月号にも、M研究会の設計した建物が掲載されている。何らかの対応を行うか、 株式会社新建築社の新建築編集部に問い合わせたところ、「『新建築』11月号の発売時点では事件が発覚しておらず、発刊してから2週間以上経ってから発覚したことと、『新建築』は増刷しないことから、当該号に関する、ページの差し替えなどの対応は行わない方針」とのことであった。

本塾教員としてのみならず、建築家・建築学者としても活躍していたM准教授の突然の逮捕に、現在もSFCでは波紋が広がっている。SFC CLIPでは、事実関係も含め、今後も調査を続けていく予定である。

【2017年6月23日(金)23:55 編集部追記】
元准教授からの要請を受け、刑期を終えていることなども考慮し、タイトルおよび本文の実名部分を匿名化いたしました。ご理解のほど、よろしくお願いいたします。