日本政府の公職就任に伴い来学期より2年間休職することになる、阿川尚之・総合政策学部教授を送るパーティが、18日(木)学生食堂サウスウイングにて行なわれた。これは、阿川研究室、SFC REVIEW 編集部、KOEなどの学生が中心となり企画されたもので、教授・学生など約100人が参加した。


 阿川教授は、98年4月より非常勤講師としてSFCに赴任したのち、99年春学期に専任の教授となった。現在、研究活動のほか、運営委員(交流担当)や、湘南藤沢学会 SFC REVIEW 担当など、キャンパス運営にも尽力している。また、アカペラ・サークル「KOE」の顧問として、コーラスの練習に参加するなど、学生との交流を積極的に図る教授としても知られている。今後は、秋より米国ワシントンにて公職に就くことが決定しているが、現段階では具体的な役職名は伏せられており、25日(木)に明らかになり、8月上旬に正式な発令が出る予定。これを受け、阿川教授は、8月末頃に渡米するとのこと。
 パーティは、阿川教授入場後、小島朋之・総合政策学部長の挨拶で始まっ た。小島学部長は、「阿川先生は、SFCでの3年半の蓄積を活かし、国際社会 に貢献していくわけですが、さらに2年後にはその経験をSFCに持ち帰ってきてほしい。」と激励の言葉を述べ、乾杯の音頭をとった。会場には、阿川教授に知らせずに葉子夫人も出席しており、驚く教授のリアクションが周囲の笑いを誘う一幕も見られた。
 上映されたメッセージ・ビデオでは、竹中平蔵客員教授、八木欣之介教授、 小沢太郎助教授、有沢誠教授ら多数の教職員から、それぞれメッセージが送られた。中でも、パーティにも出席していた奥田敦・総合政策学部助教授は、「イスラム法とアメリカ憲法を同じキャンパスで教えているのは、おそらく日本でSFCだけなので、阿川先生がいなくなって、自分としては非常にさびしい」というメッセージを寄せ会場を湧かせた。
 その後、3年間顧問を務めているKOEによるライブが行なわれ、3曲目では、「リードボーカルがしたかった」という阿川教授の予ねてよりの願いが叶い、その歌声を披露した。阿川研究室にも所属する、KOEメンバーの井上理穂子さん(政・メ修士1)は、「阿川先生は研究の楽しさを教えてくれた。KOEの活動でも、練習に参加してくれたり、コンサートに来てくれたり、大変お世話になった。」と感謝の言葉を送った。
 また、阿川教授が編集担当を務めている SFC REVIEW 編集部からは、元編集長の北本かおりさん(総4)が、教授の日常の様子を振る返るとともに、教授との思い出を涙交じりで語り、花束を贈呈した。
 阿川教授は、SFC CLIP 編集部の取材に対し、SFCでの一番の思い出として、自主ゼミとして始まった研究会のことを挙げ、「最初は10人で始まった研究会も、今では50人を超える規模になった。大学での教員の役割は“教える”ということでなく、“共に学ぶ”ことであると強く感じた。」と3年半のSFCでの研究生活を振り返った。
 また、SFC生の特徴については、「よく勉強する点は本当に感心する。でもまじめすぎる。」と述べた。そして、「もっと遊んだほうがいい。もっとバカになろう。元気出せ。ついでに勉強も完璧に。」とSFC生にメッセージを残し、「2年後には必ず戻ってきます。」としばしの別れを告げた。
【阿川尚之(あがわ・なおゆき)氏】
 1951年生まれ。慶應義塾大学法学部政治学科中退。77年5月 米国ジョージタウン大学外交政治学部卒業。ソニー株式会社に入社。84年 米国ジョージタウン大学ロースクール卒業、85年 米国ニューヨーク州弁護士資格取得、翌年米国コロンビア特別区弁護士資格取得。87年ソニー退社後、米国ギブソン・ダン・クラッチャー法律事務所入所。95年から96年にかけて、米国ヴァージニア大学ロースクール客員研究員。96年から西村総合法律事務所勤務。99年より、同法律事務所顧問を兼職し、慶應義塾大学総合政策学部教授。また、2002年3月より、外務本省の外務省改革に関する「変える会」のメンバーとして活動を行なっている。著書に、『アメリカが嫌いですか』 (新潮社、1992年)、『世界標準で生きられますか』(徳間書店、1999年、竹中平蔵教授と共著)など多数。近著には、『海の友情:米国海軍と海上自衛隊』(中央公論社、2001年)がある。