23日(土)、SFC Open Research Forum 2002において竹中平蔵経済財政政策・金融担当大臣と村井純SFC研究所所長の基調対談が「対論-改革、成功の本質」という議題で行われた。会場は総合政策・環境情報学部の両学部長をはじめとした教授らも出席。SFC生、一般の人などで約600人収容のθ館は満員となり、この対談に対する注目ぶりが伺えた。

竹中大臣は終始、政治において政策プロセスが重要なことを説いた。「政策は合理性があっても、プロセスを重視しなければ意味が無い。小泉のやることは遅いという批判もあるが、民主主義には国民の合意などのプロセスが重要である」とイギリスのサッチャーが行った国営企業の民営化が長期にわたったことを例に挙げて述べ、一連の小泉内閣の行動の遅さに対する指摘を一蹴した。
 また市場のメカニズムにも言及し、「実際に市場が反応するまでのタイムラグがあり、トレンドの変化には時間がかかる」と解説した。公的資金注入などの今後の政策決定に向けて、市場とのバイアスに対応した政策が重要だとした。
 竹中氏は、政策プロセスにおける柔軟性に注目し、村井氏がSFC設立当初に神奈川県二宮市にあるアメリカからの海底ケーブルを回線を、河川を伝わせてSFCまで引っ張り、SFCに拠点を作ろうというアイディアもあったそうだが、河川法などに引っかかり実現が難しかったというエピソードを紹介した。「アメリカでは矛盾した政策があっても、裁判の判例で成熟させる」という、日本とアメリカの法風土の違いも指摘し、柔軟に政策を立案していくべきだと述べた。柔軟な政策の一環として、最近では「特区」の設置に向けて動きが活発化しているという。

また、そのプロセスを重視することを大学でも留意することを求めた。民主主義社会においては、国民一人一人がビジョンを持つことが重要だという。このような土壌を持つために、大学はどう貢献できるかを考えることが大切だと語った。
 今まで、マスコミ・研究者・シンクタンクなどからの検討に値する対案が出たことがないことを紹介し、批判ばかりではなくきちんとした意見を出してほしいと述べた。「今後日本に求められるのは応援だけでなく、行動する人(activist)が必要である」とし、日本にほとんど無い政策NPOなどが育ってくるべきであるとした。
 同様に村井氏も、企業において、そして政治においても意思決定のプロセスが重要であると述べた。今後は情報のディスクローズ・透明性が重要になってくる。これを軽視すれば今後の変化に追随できなくなると警鐘を鳴らした。一方実効性のあるリーダーシップを育てるには、国民一人一人が責任を持つことが今後の社会で重要となってくるとし、SFCの学生にもぜひビジョンを持ってほしいという言葉を残した。