3日(火)19:00より、ο22にて、資生堂文化デザイン部部長、小俣千宜氏の講演が行われた。演題は「自己資本」。この講演は、慶應義塾大学文化事業部が主催したもので、学生など約25名程が集まった。


 SFCに来て、カルチャーショックを受けたと言う小俣氏は「自分の大学の頃とは違って、ここには生き物の気配がしない。大丈夫だろうか?」という問いかけから講演を始めた。
 SFCに関する違和感や、自身の学生運動、資生堂ビルの建設にあたっての話などを元に、『技術の進歩はとめることはできないけれど、コミュニケーションツールの発達は「幸せ」を増やすのに役立っているとはいえないと思う。』『「コミュニケーションできない」という欠落感や、失敗、生身のコミュニケーションにある無駄からしか、本当のコミュニケーションは生まれないのではないか。』と、思いを語った。
 そして、『それは商品開発も同じ。わくわくする、心躍るものを生み出すためには自分の「不幸感」をどう共有するかが大切。大量生産・消費という「なんでもある」状態を作ってしまったことによって、消費を喚起できなくなったし、資生堂のブランドは磨り減っていった。その立て直しを今しなくてはならない。だから、『花椿』や「ワードフライデイ」のような一見無駄と思えるような活動をしている。それが企業の自己資本を高めることになる。
 これからは、文化が経済を起こす時代だ。』と自分の今の仕事について語った。
 さらに、講演後の質疑応答でも、学生から、「今は学生でも、無駄なことをするなんて、悠長なことを言ってられない。今の日本には何もないから、スキルを磨くしかない」という反論がなされたり、後藤武・環境情報学部専任講師と、建築に関連した討論が行われたりするなど、プログラムは終了予定の21:00を大幅に越えて、22:00を過ぎるまで続けられた。
 講演の模様は近日中に文化事業部のwebサイトでも公開される予定だ。
 今回の講演に関して、文化事業部代表の根本ちひろさん(総1)は、「このプログラムは「SFCに文化を、SFCから文化を」をモットーに始めました。絶対おもしろくなる!という確信はありましたが、予想以上でした。それはSFCが作り出した”場”の力だと思います。」と感想を述べた。
 次回の講演会は1月、『”アート”と社会』をテーマにする予定とのこと。また、文化事業部では、今回の講演会に関連したメールマガジンの発行も予定している。
《プロフィール紹介》
【小俣 千宜氏 OMATA Chiyoshi】
株式会社資生堂 文化デザイン部長、『花椿』編集長、『WORD』編集長。慶應義塾大学法学部卒業。資生堂入社後、『花椿』の編集に携わる。東京コピーライターズ新人賞、全国PR紙コンクール総合優秀賞を4回受賞など、数々の賞を受賞。93年から同誌編集長。2000年文化デザイン部長に就任。「東京銀座資生堂ビル」を拠点に文化発信活動をプロデュースする。毎週金曜日に開催される新しいタイプの講演会「ワードフライデイ」、旅のプログラム「ワード逍遥」などを企画運営している。