新年度よりNHKラジオ・ドイツ語講座で平高史也・総合政策学部教授が講師を務めている。担当するのは応用編で、毎週2回、金曜日と土曜日の6:45-7:05に放送。SFC CLIP では、平高教授に講師をすることになった経緯、台本製作・収録から、SFCの外国語教育までに関してお話を伺った。


 また、フランス語ではテレビ/ラジオとも、講師をSFCの教員である古石篤子・総合政策学部教授、國枝孝弘・総合政策学部助教授が務めている。次号のSFC CLIP では、古石教授、國枝助教授のインタビューを掲載する。
【 NHKラジオ講座の講師 】

●今回、どのようなきっかけでラジオの講師をされることになったのか教えてください。NHKラジオ/テレビ フランス語講座もSFCの先生がご担当なさっていますが、何かつながりはあるのでしょうか。

いや、偶然です。前回のときも古石先生と同じ時期で、それも偶然だったんです。NHKフランス語とはまったく別個に、NHKドイツ語の中で、SFCの先生にも頼んでみようということになったのでしょう。亡くなられた関口先生が、SFCに着任される前にNHKで長くテレビの講師をなさっていたので、その関係もあると思います。前回のときは、それで話が来ました。前回のディレクターと今回のディレクターはほぼ同じと言っていいので、たぶんそれもあると思います。ただ、SFCの中にテレビとかラジオとか頼みたい人が少なくない、というのは事実だと思います。例えば、英語の霜崎先生も高校の英語をやってらっしゃいますよね。だから、そいう方がたまたま多いということは言えるのではないでしょうか。

●先生は、「メディアと言語教育」というテーマで研究プロジェクトを担当なさっていますよね。“教育”に多く携わっているからこそこのような依頼は来るのでしょうか。

そうですね。それもあるでしょう。あと、日本独文学会の中のドイツ語教育部会の部会長を今、私が務めているので、そういうことからも依頼が来たのかもしれません。直接NHKとは関係ありませんが。たまたまそういうポストが私がいるということで依頼が来たのかもしれません。と、いうのも、NHKのディレクターが学会の春秋の大会に見に来ていますから。

●インテンも担当されて、NHKも講師となると、お忙しいでしょう。

忙しいです。さっき、間に合わないと言っていたのは、NHKの明日までの仕事です。明日、収録なんです。台本を全部書いていかなくてはならないので、それが間に合いそうにないんです。

●先生は応用編を担当されていますよね。テキストを見たところ、ずいぶんボリュームたっぷりのような気がします。

私も引き受けたときに、前回入門編の講師をしたときよりは、少ないだろうと思っていたんです。入門編が4日で、応用編が2日なので、半分だと思っていたんです。でも、実際はそうじゃなくて、テキストの一日あたりのページ数は倍あるので、同じなんですよ。でも、放送日が少ないからスタジオに入る日は少ないですね。スタジオに入ればなんとか1時間から2時間くらいで終わりますし、ラジオは編集ができるから、何回か話せばだいだいOKがでます。でも、その前の仕事が大変です。台本はスタジオに入る前にディレクターに出さなくてはなりませんから。そこまでできちゃえば、あとは、一回20分の放送をとるのに、最高1時間かかったとしても、2本なら2時間で終わります。

●台本というのは、テキストに書かかれていない部分、例えば「こんにちは、ドイツ語講座の時間です」などというのも先生が書いているのですか。

そうです。全部書いています。「それでは繰り返してください」というのも書いています。芝居の台詞と同じようなかんじですね。ディレクターが編集してくれるので、時間配分まではあまり考える必要はありませんが、台本の一字一句を考えなければならないといういうのは難しいですね。
【 SFCの語学教育の変化 】

●最近SFCの語学に、大きなうねりがあるように思います。去年から朝鮮語のインテンシブは春学期から始まりました。フランス語やスペイン語にも履修方法に変化がありました。ドイツ語にも変化があったのでしょうか。

今学期初めて、インテンシブ外国語を秋からではなく春から開講しています。これからは、いつからでも1、2、3期のインテンシブを始められるようにしようというドイツ語の大きなヴィジョンのもとに始めました。今学期はその移行時期にあたります。ベーシックの履修希望者は、私達が予想をはるかに超える人数で、クラスを増やさなければならないくらいになっています。

●今後の解決すべき問題点などありますか。

今後の問題点は、インテンシブを1期から開講しても、情報処理や体育などの授業と重なってしまって、このようなシステムの問題は、外国語だけではなく、SFC全体で考えていかなくてはならないところだと思います。

●以前は、「言語文化総合講座」という授業を履修してからのインテンシブ履修でした。入学していきなり春からインテンシブを始めたのは、学生のニーズがあったからでしょうか?

私個人的には、言語文化総合講座は意味のある講座だと思うんですが、意義がだんだん浸透しなかったんですね。単なる語種登録のための講座ではなく、そもそも言語を学ぶということの意義は何かということ、SFCでなぜこの11言語を扱っているのか、それをどのように学んでいったらいいのか、ということを伝える授業は必要だと思うんです。ただ、この私達の考える意図が伝わっていなかったのだと思います。昔の授業評価で一番下だったこともありますから。新入生全員対象ということで、評価が大変だというころにも問題がありました。学生によっては、取る言語を決めているのに、どうして他の言語の話も聞かなくてならないのか、という不満の声も出ていましたし。これは、私達の意図が伝わっていない証拠なんだけれども、だんだん出席率が悪くなってきたんですね。
 もうひとつは、SFC開設当初から少しずつ変ってきたことなんですが、初めのころは、受験勉強で疲れた頭を少し休ませて、外国語教育は英語だけじゃないということをじっくり考えて、それから外国語の勉強を始めましたよね。でも、入学してすぐに勉強したいっていう学生も無視できない数になってきています。実際にベーシックは、フランス語もドイツ語も朝鮮語も溢れていますから、なんらかの形で勉強したいという学生は随分いるんだろうなと感じています。
 ほかには、塾内の交換留学の選考の不利などです。他に学部では春から始まるのに、秋がから始まるというのは進路の到達度の関係でちょっと遅れてしまうんですね。
【 平高研究プロジェクト(2) 】
 導入の段階でCD-ROMを配布しています。以前担当だった藁谷先生の研究会で作ったものなんですが。開発した発音研究のソフトです。新しくドイツ語を始めた学生に配っています。このCD-ROMに改良を加えていきます。
 SFCの教材に出てくる名詞を日本とドイツの実際のものを撮影します。例えばドイツのお城を学生が研修に行ったときにデジカメで、撮影してきてもらい、映像バンクみたいなものを作っています。ドイツ語は男性・中性・女性名詞があるから、その名詞の性当てクイズも作っています。
 今後は、ITを使って、従来のフェイスツーフェースの言語学習をどうサポートしていけるのか、そのために教材を開発していこうと思っています。

●最後に一言お願いします。

このNHKの応用編の講座を作るときに、少しやさしめに作ってくださいと、言われたんですね。全国放送なので、いろいろな視聴者の方、全員を満足させることは難しいかもしれないんだけど、私はそのとき考えたのは、SFCの学生が補修的に聞けるような講座を作ろうかなと思って。全国放送を利用してはいけないんですが、SFCのインテン2期3期からそのちょっと先くらいを意識して作っているんですよ。だから一般の方はもちろん、2期履修者や3期に入ったという人がちょっと力を入れてやっていくには、とてもいいコースだと思います。一緒にやってるスタッフもSFCのリースラント先生だし、もうひとりのドイツ語と日本語のバイリンガルの女性もSFCの2期か3期の卒業生です。

●ありがとうございました。

台本の準備・収録など、お忙しい中の取材でした。取材当日の朝も、次の日の収録のために、台本を書いてから学校にいらっしゃったそうです。ありがとうございました。