16日(金)、慶應義塾大学出版会より小熊英二総合政策学部助教授と上野陽子さん(02年総卒)の共著で「<癒し>のナショナリズム」が出版された。


 内容は、「新しい歴史教科書をつくる会」の事例を元に、現代日本の社会的・心理的な状況の一端を論じたもの。具体的には、上野さんの卒業論文の「新しい歴史教科書をつくる会」神奈川県支部の実地調査と、小熊助教授による「つくる会」周辺の論調分析が掲載されている。
 上野さんは、SFC CLIP の取材に対して以下のようなコメントを寄せた。

上野さんのコメント

卒業論文として執筆した「〈普通〉の市民たちによる「つくる会」のエスノグラフィー」が小熊英二助教授との共著という形で出版されました。ご一読いただければ幸いです。
 論文を執筆するにあたり、つくる会の有志の集まりに参加して、フィールドワークを行いました。現場では「保守系(俗にいうと右寄り)」の方が勉強会を開いており、私も彼らと一緒に勉強し、交流を深めると同時に、観察者として一定の距離を保ちつつ、約1年間取材を続けました。
 なぜ「右」なのか、なぜ「左」なのか、そもそもなぜ「右・左」という枠組みにアツくなるのか、いったい彼らはどんな人たちなのか?という問題関心からフィールドワークが始まりました。題材が「右」「左」といった、いささか刺激的なものですので、私自身がどちらかに傾くことのないよう、執筆の際には苦労しました。
 「つくる会」ブームが去ったのだから、もう賞味期限切れじゃない?と言わず、ぱらぱらっと生協でページをめくってみてください。「つくる会」の分析を通して、最近の右傾化、保守化について小熊氏の鋭い考察が楽しめます。
 ちなみに、初版の著者略歴の欄に「2003年卒」と書いてありますが、私は「2002年卒」です。大切なところでミスタイプしてしまったのはご愛嬌…。失礼いたしました。