20日(木)11:00-12:30、ユビキタス時代のビジネスモデルを演題としてメインパネル・セッションが行われた。司会は、國領二郎環境情報学部教授、パネリストには、株式会社インクスのCEOを務める山田眞次郎氏、経済産業省商務情報政策局情報経済課長の新原浩朗氏、株式会社アイスタイルの代表取締役兼CEOを務める吉松徹郎氏が参加した。

会場の様子
 まず、國領教授からパネリストの紹介が行われ、いかにして情報産業のビジネスモデルを構築するかというメインパネルの議題を説明し、パネリストの3人にコメントを求めた。
  
 インクスCEOの山田氏は、金型という古来からの製造業でのIT導入例を説明。インクスでは、IT導入で徹底的に効率化したことで、金型が45時間で作成することができるという。次に、アイスタイル代表の吉松氏により、@コスメというネットでの化粧品ビジネスの説明が行われた。その中で吉松氏は、「顧客情報を個々でとっていくと、一つの企業が蓄積していくのには限界があるのではないか。コミュニティーとしてとらえ、共同化するという第3者的なマネジメントが必要だ」という@コスメにおけるCRMのコンセプトを述べた。

國領教授、山田氏
 そして、経済産業省の新原氏は、企業のIT利用に関して「うまく利用している企業はどんどん伸びている。しかし、IT投資がうまく企業の利益に結びついていないという状況も多い。バブル崩壊できちんとITと企業の問題を考えることのできる環境が整った」とコメントした。
 また山田氏は、インクスで携帯電話の金型の700工程をITで結んだことを例にあげ、「今ある工程をいくら結んでも無理、ドキュメントマネジメントをしてもだめだ。新しい工程を一番最初に作ったものが勝つ」と主張し、それに対し國領教授は、「最終製品が出来るまでに色々な業者が関わってくる。最終的には産業全体を変えていかなければならない」とコメントした。さらに、吉松氏は「強くなるのは非連続性のビジネス。全く新しいプロセスを作れる会社が強い」と新しいプロセスを作り出すことの重要性を強調した。
 新原氏は「よくマーケットインと言われるが、新しいビジネスができるときには、経営者がとんでもないことを考えることから始まる。誰か一人が革新的なことをやることが大事」とコメントした。

新原氏、吉松氏
 國領氏が日本独特の強みとは何かというテーマを設定すると、山田氏は「ITというのは産業革命の蒸気エンジン。蒸気エンジンが回るだけでは、何も生まない。ものづくりの生産力のある日本は強い」と日本のものづくりの強さが日本の強さになることを強調した。また吉松氏は、マーケティングの視点から、日本の流通が発展していることを指摘し「企業が持っている情報は思ったより多い。また、ブームの流れも速い。ユーザーの声を聞くという視点にチャンスがあるのではないか」とコメントした。
 最後に國領氏はまとめとして、伝統的なところにこそ新しいチャンスがあること、今までの仕組みを引き継いではだめで、プロセスを改善、まっさらな段階で考えることが必要なこと、革新の作業はとっぽいリーダーが必要だということなどをあげた。