15日(水)、表参道の裏通りにあるDining bar Ratiaで稲蔭正彦研究会の展覧会「imgl Collection 2006: The Cook Book of Ideas」が開催された。当日は個性豊かな15のプロジェクトによる作品を観るため、多くの企業関係者、研究者、学生などが訪れ、大盛況となった。


 「21世紀は実質空間そのものがコンテンツの場になる」
 稲蔭正彦環境情報学部教授は自信を持って語った。裏通りのバーを展覧会の会場としたのもそういう意図からなのかもしれない。稲蔭教授の言う「21世紀のコンテンツ」の一部を紹介しよう。

バーカウンターに置かれた照明。横を通り過ぎようとしたところで呼び止められた。「ここに指を置いてみてください」おそるおそる黒いボックスの指示された場所に指を置くと、1分と待たないうちに照明が点滅しだした。「あなたの今の心拍数と同期しています。」恥ずかしいような、しかし確実にこれまでに経験したことのない感覚だった。

「ちょっと、これを持って周りを見渡してみてください」手渡された長方形の小型モニターを通して天井を見上げると、そこにいるはずのない小動物が見えた。モニターを動かすと彼もゆらゆら動く。観察していると、色に反応しているようだ。「赤が好きなキャラクター、青が好きなキャラクター、というようにモニターに映る色によってキャラクターが登場し、動きます」ここにはないもの、見えるはずのないものが見えてしまう、身体の感覚を拡張されるような体験。稲蔭教授はそれをシンプルに「生活の身の回りの中での楽しさ」と表現する。

プロジェクトにはかなり大規模なものも含まれる。南カルフォルニア大学との共同研究で進められている「DZ」は10Gbpsのインターネット帯域を必要とするが、実現すれば本格的な「インタラクティブコンテンツ」が可能となる。モニターの向こう側にいる相手と協力して動くことでミッションをクリアする。遠くいるはずの相手の「動き」を感覚的に察知しながら自らも動く。文字どおりインタラクティブ(対話型)なゲームのコンセプトは「共感感覚」だという。
 地下フロアには、バーらしい薄暗い空間に、障子、お香、風鈴などの日本的なモチーフにRFID、電子ペーパーなどの最新技術を取り入れた作品が展示されていた。今後さらに改良を重ね、コンセプトを追求していくという。
 直訳すれば「アイデアの料理本」というタイトルで、新しいコンテンツの多様な可能性を示唆した展覧会には、これまでにない新鮮な感覚があふれていた。