2007年度からSFCに導入されるカリキュラムの改定作業が進められている。その進捗状況や現場での課題などについて、作業をまとめる萩野達也環境情報学部教授にインタビューした。第1回目は改定の経緯、教員からあがっている大胆な案などについてお話を伺った。


[改定作業はまだ途中]
–今回、私たちがインタビューをお願いすることになったきっかけは、主に受験生用に作成された慶應義塾の広報パンフレットに2007年度以降のカリキュラムに関する記述を発見したためです。このパンフレットに掲載されている科目群や分野の区別のされ方は、ほぼ2007年度のカリキュラム改定の内容と考えてよろしいんでしょうか。
 いえ。このパンフレットは来年の受験生などに配るため、早くリリースしなければならなかったものでした。そこで、現時点ではまだ決定していないカリキュラムの内容については触れずに、教員の合意を得た内容のみを暫定的に掲載しました。
–あくまで臨時的なものだったのですね。
 はい、急遽作ったものだ、と思っていただいた方がいいですね。
–では、パンフレットにある内容が変わる可能性もあるのですね。
 はい。10系列35分野が紹介されていますが、これはあくまでも現在ある研究プロジェクトの該当分野を挙げたものであって、SFCで教えられている科目の分野を示すものではありません。
–これまでの「汎用」「専門」「クラスター」といった科目区分名から、「シフト系」「創造系」「先端系」といった名称に変更されているようですが、これも暫定的なものでしょうか。
 いえ、科目区分名については、パンフレットにあるもので決定しています。
[カリキュラムは常に見直す必要がある]
–では、そもそもどのような経緯からカリキュラムを改定されることになったのか教えていただけますか。
 難しい質問ですね。一度全員が納得する形で確定したカリキュラムであっても、徐々に実情と合わない部分がでてくるものです。ですから、何年かに一度は改定をした方が良いという意見があります。実際、SFCのカリキュラムも小さなものを含めれば何度も改定を繰り返しています。2006年度現在で採用されているカリキュラムは、いわゆる「Ver.2.0」と呼ばれる、2001年度の大改革で定められたものです。今回は、それから5年以上が経過したため、見直そうという動きから始まりました。
–それでは「Ver.3.0」と呼ばれるものができるのでしょうか。
 命名はなんにせよ、「Ver.2.0」の「研究会を中心とするカリキュラム構成」という考えを受け継ぐことはほぼ確定的です。
 ただし、「研究プロジェクト」を「研究会」と呼んだり、「卒業制作」を「卒業プロジェクト」と言い換えることなどがすでに決まっています。
 また、現在の「Ver.2.0」では環境系、総合系、複合系という風に科目を3つに区分していますが、2007年度からは環境系と総合系の2つにはっきりと線引きすることになりそうです。
–なぜ、複合系という区分を廃止するのですか。
 あまりにも多くの学生が、複合系の授業を取り過ぎるからです(笑)。1年生が難易度の高すぎる複合系のクラスター科目や専門科目を必修単位欲しさに履修する傾向がありますね。その結果、それらの科目のレベルが相対的に下がってしまっています。
[100個のクラスターを作るという意見もある]
–「クラスター」という言葉の意味がわかりにくいという指摘は以前からあったようですが。
 「クラスター」は科目の集りです。ところが、それを専門領域の似通った教員らの集まりという風に誤解している人も多い。つまり、三田キャンパスなどで言う「学科」のように捉えられている側面がある。
 このままでは、本来SFCが目指すべき、分野横断的な学際キャンパスが実現されない。「クラスター」を見直そうという動きはもう数年前からはじまっています。
–どういった意見があがっているのでしょうか。
 クラスターを研究会の数だけ、極端に言えば100個くらい作ってはどうか、と考える教員もいます。
–それは大胆な(笑)
 もちろん、まだ決まっておりませんが。
–専任教員だけで100人以上いるキャンパスですから、意見をまとめるのは大変そうですね……。
次回は、現行のカリキュラムに対する教員の意見や、実際の改定作業がどのように進められているかについて、インタビューの続編をお届けする。