ORF2日目のプレミアムセッション「新しい公共と日本の社会ビジョン」では、鳩山由紀夫前首相・衆議院議員を中心としたゲストとSFCの学生らにより、これからの日本が目指していくべきビジョンや新しい公共についての議論がなされた。


■パネリスト
・鳩山由紀夫氏(衆議院議員/前首相)
・小城武彦氏(丸善株式会社代表取締役社長)
・土井香苗氏(ヒューマン・ライツ・ウォッチ日本代表)
・清水唯一朗総合政策学部教授
・金子郁容政策・メディア研究科教授
■学生パネリスト(公募)
・本田哲也(総4)
・神野翔(総3)
・下向依梨(総2)

会場の雰囲気

開口一番、経済が成長したにも関わらず幸せを実感できない日本の現状に嘆いた鳩山氏は「新しい公共」の必要性を訴えた。そしてその解決策の一つとして、金子教授と連携し、NPO・NGOの寄付税制の変更をしたことを明かした。

鳩山氏

鳩山氏は「新しい公共の構成員は企業である」と発言。企業再生に携わる小城氏も「企業の存在価値は社会貢献である。元気のなくなっている企業はすべからく社会貢献のことを忘れている。」とし、鳩山氏の発言を支持した。

小城氏

国際NGOの日本代表を務めている土井氏は「NGO・NPOには有能で志の高い人はたくさんいるがやはりお金がない。」とNGOの現状を吐露。鳩山氏の寄付税制の変更自体は支持したものの、「日本には寄付という文化がない。」などの問題点を指摘した。

土井氏

下向依梨さんから「国民1人1人が思っている助けたいという気持ちを寄付に結び付ける方法はあるのか?」という問いが鳩山氏に飛んだ。鳩山氏は「あるのでしょうか?」と疑問形の答えを返したあとに「まだ寄付することがパフォーマンスだと評価されてしまう。他人の幸せの喜びを自分の幸せに変える。これが新しい公共だ。」と返答。寄付する本人の心がけより、寄付を偽善と皆してしまう社会の方に問題があるというスタンスを見せた。

学生

神野翔さんは「官と民の間と、新しい公共との関係性はどのようになっているのか?」という質問に対し、鳩山氏は図を用いて回答し「官しかできないところをもっと民がやるべき。皆さんがほしい社会のために作られるのが新しい公共。」と民の積極的な自立を求めた。

新しい公共

本田哲也さんは慶應で行われた「リアル熟議」が他大学へスピンアウトした実績を強調し、「もっと議論は国民がすべきである。」とした。
 鳩山氏に意見を求める形で進行していたセッションであったが、清水准教授が鳩山氏の意見のみを聞くのがこのセッションの目的ではない、と発言。流れが変わった。
 清水准教授はそのままの流れで問題提起。「新しい公共を広めるため、引っ張ったり盛り上げたりする人を日本社会全体で作っていくにはどうしたらよいのか?」と人材育成に言及。これに金子教授が「身近な人からやっていき、それが広まればいい。少ない人とやってそこから学んでいくのがよい。」と答えた。
 また土井氏の「新しい公共に問題があるとすれば"内向き"という点。もっと世界に発信していってほしい。」という発言に対して鳩山氏は「同感です。日本が世界に向けて発信するべきです。」と同意した。
 「この場が私を質問責めし、頼り切る場ではないように、新しい公共も政府に頼むのではなく彼ら自身で考えてやってほしいこと。」と自ら動くことを求めた。

鳩山氏2

最後に鳩山氏が「人々それぞれがそれぞれの思いを貫いてほしい。」とメッセージを送り、セッションは締めくくられた。
 会場を移して行われたアフタートークでは来場者からの質問にゲストが答え、会場との意見交換がされた。