27日(金)、θ館にてJR東日本による寄付講座「情報交流に関するセッション」が開催された。1992年から始まり、今年で20周年を迎える本講座では、JR東日本とSFCとの共同研究や技術交流について発表やディスカッションが行われた。


 講座は清木康環境情報学部教授の挨拶によって始まった。「情報交流に関するセッション」では、2つの特別講演と、JR東日本研究開発部門と慶應義塾大学教授陣によるディスカッションが行われた。
 最初の特別講演は、JR東日本研究開発センター所長の荒井稔氏によって行われた。「JR東日本の研究開発の取り組み」というテーマで、JR東日本がこれまでに投資した事業や研究開発を紹介した。鉄道の進化と歴史はそのまま鉄道事故の歴史であるとも言え、これまで多くの安全への投資を行なってきたという。安全への投資とその効果、そしてSuicaに代表される革新的技術を紹介し、JR東日本の技術力をアピールした。
 次の特別講演には、清木教授が登壇した。「ICTを利用した新しいサービスの可能性」をテーマに、鉄道に関するデータを可視化するという手法の分析と、それによって得られる情報を紹介した。

(無題)

途中休憩後には、パネルディスカッションが行われた。セッションが始まる際には、寄付講座初代委員長の相磯秀夫名誉教授が来賓として紹介された。
 古谷知之総合政策学部准教授による司会の下、中川氏による「JR東日本とSFCの共同研究の紹介」と、登壇者によるディスカッションが行われた。
登壇者
JR東日本研究開発センターフロンティアサービス研究所
・技術アドバイザー 長谷川文雄氏
・同研究所所長 石塚哲夫氏
・同研究所情報デザイングループ 課長 中川剛志氏
慶應義塾大学
・清木康環境情報学部教授
・小川克彦環境情報学部教授
・古谷知之総合政策学部准教授(司会)
 フロンティアサービス研究所とSFCは2003年から連携をしており、様々な研究が行われているという。今回は、徳田英幸研究室と共同で行われた「ユビキタスを活用したSmartStation構想」、安村通晃研究室と共同で行われた「電車展」、清木康研究室による「旅客の動向や流動の分析研究」、小川克彦研究室の「感情語で旅先の検索などを行う研究」、の4つが紹介された。JR東日本とSFCとのつながりの深さが感じられる内容だった。
 また、フロンティアサービス研究所の石塚氏は「202X年の駅に求められるもの」を考え、様々な研究を行なっていると述べた。
 ディスカッションの最後では、「JR×AR」と銘打たれたデモンストレーションが行われた。紹介されたのは、駅構内に設置されているマーカーをスマートフォンを通して見ることで、構内の案内などの立体映像を利用できるARアプリケーション。

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ディスカッションの後、司会の古谷教授が学生からの質問を募集した。学生からは、JR東日本が行なっているSmartStation構想に関連したことや、JR×ARアプリについて、その他JR東日本全体に関して様々な質問が挙がった。
 また、相磯名誉教授も質問を行った。地域の中心としての駅が今後関東などで大災害が起きた時十分機能するのか、先の震災に関連した質問がなされた。石塚氏によると、防災に関しても研究と実行策が練られているとのこと。今後もより一層対策に励みたい、そして対策の方法を考えていきたいとコメントしていた。
 最後に、登壇者によるコメントがなされた。
 中川氏「何かをする上で、なんだかよくわからない状態にいるとき、頼りになるのは勉強していることだ。学生時代に研究したことは、社会人になった今でも考え方の根幹にある」
 石塚氏「これからの鉄道を考える上で、SFCというのは既存の体型にとらわれない素晴らしいところである。SFCの学生の考え方を吸収していきたい」
 長谷川氏「鉄道を考えるときには、鉄道を考える者、利用者、沿線地域のそれぞれの視点を忘れずに持つ必要がある。鉄道は、3つの視点の数式、三元連立方程式であり、鉄道の駅を考えることはその解を求めることだ。また、共同研究で活用されているICT技術を駆使し、自身のライフスタイルをどこでも実現できる環境の構築を目指すべきだ」
 清木教授「ITCでどのように理想を実現していくのか、研究を行い実現のための技術力を高める必要がある。また、鉄道空間は世代を超えた情報共有の場であり、いかにして若い世代に楽しく生きる術を提供していくかを考えていきたい」
 小川教授「本日の講演がJR東日本のものなのに、車両や鉄道路線の写真や話が一切出てこなくてびっくりした。SFCは様々な研究が行われているので、発想の転換を一緒に行いたい」
 コメントの後、講演は終了した。講演後は生協サウス食堂にて第2部の食事会が行われた。