ORF2日目、セッション「インターネットと日本の選挙 – これからの民主主義を考える -」が開催された。インターネットが選挙においてどのような役割を果たすかが議論された。2012年はアメリカ大統領選挙、韓国大統領選挙など、世界的に重要な選挙が行われる年。日本もまた、12月16日に衆議院議員総選挙を控える中、タイムリーなセッションだった。


■パネリスト

・李政勲氏 韓国延世大学国際大学院准教授

・佐藤大吾氏 NPO法人ドットジェイピー理事長

・中山俊宏氏 青山学院大学国際政治経済学部教授

・國領二郎総合政策学部教授

・上山信一総合政策学部教授


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 まず、各パネリストの紹介と、それぞれの活動や研究についてのプレゼンテーションが行われた。司会を務める國領二郎総合政策学部長は「単なる選挙だけの話ではなく、世界のガバナンスがどう変化しつつあるかを計る、非常に大きなテーマだ」と冒頭で語った。


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 佐藤氏は、NPO法人ドットジェイピーの理事長。NPO法人ドットジェイピーは、議員インターシッププログラムを運営する組織で、若者の政治に対する意識を高め、投票率を向上させることを目的としている。佐藤氏はセッションの中で、若者を政治に参加させるだけでなく、若者のいる場所へ政治を届けることの必要性を説いた。またインターネットがそのための場となるよう、環境とルールを整備していきたいと述べた。


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 中山氏は、アメリカの選挙においてインターネットがどのような役割をしたのかを考えている。アメリカの事例を見ながら、日本の選挙に取り入れられるものも探しているという。今年のアメリカ大統領選挙において、民主党のオバマ陣営は大々的にインターネットキャンペーンを行った。ただし、双方向性を生かしたというよりも、メッセージの発信としての利用が主だった。また若者は、政治について友達がどのように行動したかに反応するので、若者の獲得という意味でソーシャルメディアの影響は大きい、と中山氏は述べた。


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 韓国では12月19日に大統領選の投開票が行われる。李氏は韓国におけるインターネットと選挙について語った。韓国では、90年代半ばからインターネットが選挙キャンペーンのツールとして定着している。また、2002年の選挙においては、候補者がインターネットを利用して支持率を上げ、逆転勝利した例もある。昨年のソウル市長選挙においてもSNSが威力を発揮、次の大統領選挙においてもSNSには変わらぬ注目が集まっている。有権者自身がインターネットを通じて情報を発信できることは、政治参加の意識を高めるだろうと、李氏は締めくくった。


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 上山教授は、大阪維新の会、日本維新の会のブレーンとして、自治体の経営改革に関するアドバイザーとして活動している。上山教授は、インターネットよりもテレビのほうがまだ、メディアとして強い力を持っていると語る。一方でインターネットは、マスメディアの誤動作を防ぎ、質を高めることに役立っているという。また政治家は、ブログ等を報道に対して反論するためのツールにできると述べた。



 このセッションは、「若者」と「選挙」がキーワードとなっており、学生の多く集まるORFで開催された意味は大きい。また、インターネットと政治の関わり方については、まだまだ大きな可能性がある。未来の話に加え、既にインターネットが選挙においてどういった役割を果たしたかも議論された、貴重なセッションであった。