23日(水)、メディアセンター地下1階のAVホールにて第3回16ミリフィルム上映会「シュルレアリスム特集」が行われ、1920年代に勃興した芸術運動シュルレアリスムに関係する映画が上映された。


 3回目となる今回上映されたのは、1920年代に勃興した芸術運動シュルレアリスムに関係した3本の映画で、いずれも1920年代フランスを代表する作品だ。当日は、最初にメディアセンター所長である堀茂樹総合政策学部教授による講話が行われ、今回、日吉キャンパス所蔵のフィルムをあえてSFCに持ち込み上映することによって、「SFC生が芸術に触れる機会をつくりたかった」との説明があった。


16ミリフィルム 訂正





 その後、國枝孝弘総合政策学部教授より、シュルレアリスムとは何かということに関して簡単な解説がなされ、学生との問いかけのなかで、シュルレアリスム運動全体を概観した。

 上映された映画は、『アンダルシアの犬』『アネミック・シネマ』『幕間』の3本。

 『アンダルシアの犬』はルイス・ブニュエル監督の作品。女性の眼球をカミソリで切るシーンから始まり、車道で本を読む女性、手のひらにうごめく蟻などといった奇妙なシーンの連続で、会場も驚きの反応で包まれた。

 『アネミック・シネマ』はマルセル・デュシャンによって1926年に制作された、無音でうずまきが延々と回転するという実験映画である。

 最後の『幕間』は、ルネ・クレールによる1924年の作品。文字通り、幕間に映写するために撮影された映像で、さまざまな撮影技法をつかい、現実にはありえないような視覚効果を狙ったものだった。

 

 上映後、メディアセンターから関連書籍の検索方法についての詳しい解説も行われた。参加した学生にとっては、これらの映画やその他のシュルレアリスムに関する資料も効率よく得られるよい機会になったに違いない。



 SFC CLIP編集部では、今回の上映会に関して、國枝教授に個別にお話をうかがうことができた。

16ミリフィルム


–堀教授から「SFC生に芸術に触れる機会をつくりたかった」というお話がありました。國枝教授はSFCで芸術を学ぶ意味についてどうお考えですか?





 SFCで芸術を学ぶ意味は、2つあると考えています。

 まず1つは、SFCが時代を洞察するキャンパスで、芸術も同様に、現代への洞察が重要であるということです。

 たとえば、上映された『アネミック・シネマ』を撮ったマルセル・デュシャンは、芸術作品の展覧会に、『泉』というタイトルを付けただけの男性用便器を出品したことがあります。大変な物議をかもしましたが、これは芸術への固定観念が強かった時代に「芸術とは何か」という問いをぶつけるものだったのです。

 このような時代への鋭い感性は、優れた作品を生み出します。つまりSFCにおいて芸術を学ぶことが、このキャンパスの特徴を存分に活かすことだと思うのです。



 もう1つは、芸術だけでなく人文科学の分野全体に言えることですが、過去の成功と失敗に学ぶことは、とても有意義だということです。

 たとえば自分が今悩んだり考えたりしていることを、過去にすでに誰かが悩んだり考えたりしたことがあったとしたら、まず先にその事例を学ぶことによって、その考えの到達点から考えを進めることができますよね。



 また、同じ手法で過去の誰かがやり損ねたことを、現代でやり直すということも面白いでしょう。

 例えば、『幕間』は今見ると稚拙に映ります。ルネ・クレールは様々な視覚効果を試していますが、それが成功しているとは言えませんね。しかし、彼がやろうとしたことと「目には捉えられないものを捉える」という狙いは、現代でも高く評価できます。

 この作品を深く学んで、現代の技術を応用すれば、より洗練された形で彼の狙いを達成することができるのではないでしょうか。


–しかし、SFCではこのような知識を教える授業はありませんよね。





 そうですね。このような知識は「人文知」と呼ばれるものですが、これを学べる授業は、残念ながらSFCには多くはありません。しかし、例えば三田キャンパスになら、これに関する授業が多々あります。知識を得るチャンスはいろいろな所にありますので、SFCの学生には、ぜひ視野を広く持って、自分に必要な知識を求めて行動してほしいと思います。



 このようなフィルムは貴重であり、普段はなかなか触れることはできないが、メディアセンターでは、この他にも特別な資料に触れられるイベントが多く開催されている。ぜひ積極的に活用しよう。