22日(土)、早稲田大学7号館321教室にて、2013年度前期早稲田大学雄弁会早慶新人雄弁大会が行われた。毎年義塾と早稲田大学(以下、早稲田)が交互に主催する、言論の慶早戦だ。今回は、SFCから慶應義塾大学辯論部藤沢会より渡邉類さん(総1)、東海林晃さん(総1)、千葉佳織さん(総1)の3人が出場し、東海林さんが見事準優勝を収めた。



弁論とっぷ





 昭和25年(1950年)に第1回が開催されて以来、義塾と早稲田が交互に主催する形で現在まで続いてきた早慶新人雄弁大会。今回で61回目の開催だ。出場弁士は義塾、早稲田からそれぞれ5人ずつで、いずれも今年入学した学生が弁論を行う。

 当日は義塾・早稲田以外の他大学生を含む100名以上の聴衆が参加し、弁論中や質問中には野次が飛び交った。


弁論るい



 第四弁士として登壇した渡邉さんは、「大航海時代」という演題のもと、グローバル経済化の進む現代はあたかも大航海時代のようであると主張。その現代において、起業率の向上こそ経済成長に必要であると唱えた。



 現在、先進国などと比較して日本は起業率が低い。その理由として、銀行などから企業が融資を受ける際の、個人保証制度に問題があると主張。起業者側にはハイリスクが負わされ、一方で金融機関側も貸付金の回収が適切にできていない現状の問題点を指摘した。

弁論るい2



 この現状を変えるために、渡邉さんは新しい保証契約の制度を提唱。経営者の財務状況の詳細を報告することを特約とし、それに違反しない限り個人保証責任が発生せず、また違反した場合は罰則を与えると法律で定めることで、適切な情報開示が行われることを目指す。起業家側・金融機関側の両者にとってより良い保証制度のあり方を示した。

 汗が吹き出るほどの熱弁をもって聴衆に語りかけ、質問にも堂々と答えきった。




弁論しょうじ



 第八弁士として登壇した東海林さんは、「母への感謝をこめて」という演題のもと、母子世帯の貧困問題について言及。我が国の貧困問題の中でも、母子世帯は就業率が高いにもかかわらず所得が低く、すなわち働きながらも貧困状態にある状況を指摘した。

 その原因として、第一には、母子世帯の母親の多くが賃金の低い非正規雇用のサービス業であること、第二には、認知度の低さと支給額の少なさから母子世帯の就労支援システムが機能していない事を挙げた。

弁論しょうじ2



 そこで東海林さんが提案したのが、現在うまく機能していない就労支援システムを廃止し、母親が安心して資格取得に臨めるような新しい母子就学支援制度。同時に、支援窓口の一本化と、母子世帯に対する窓口紹介の義務化により、適切な就労支援アドバイスが受けられるような仕組みも必要と主張した。さらにその窓口には、ケースに併せて相談・指導を行う専門家を配置することで、業務の多忙化にも対応するプランを示した。

 母親に対する感謝を弁論中にも盛り込み、誠実さの滲み出る弁論となった。




弁論ちば



 第十弁士として登壇した千葉さんは、「音色を響かせよ」という演題のもと、障害者に対する現状の支援制度の問題点を指摘した。

 2006年に制定された障害者自立支援法には、問題点が複数存在する。第一に、障害のレベルによって受けられるサービスを分ける制度が適切に機能せず、とくに知的障害者に適切な保護を受けられない人が出ていること。第二に、障害者の所得などに関係なく受けたサービス分の額を障害者自身が負担する応益負担の原則により、サービスの負担額が当事者自身の賃金を超えてしまっていること。

 2011年に障害者総合支援法が施行されたものの、これらの問題に何の対策もされていないことを訴えた。

弁論ちば2



 この現状を改善する為、千葉さんは、障害者総合支援法の改正案を3つ提案した。

 第一に、障害のレベル分けの際、知的障害者のための調査項目を追加すること。第二に、障害者が適切な支援サービスを受けられるよう、本人の状況に合わせた利用計画を策定することの義務化。第三に、応益負担から自分の払える範囲でのみ負担をする応能負担への制度変更を求める。これら3つの政策により、障害者の個性と人格を尊重できるとした。

 自身の障害者施設での演奏ボランティアの経験を引用しつつ、魂を込めた弁論となった。


弁論表彰





 結果、準優勝に東海林さんが入賞した。入賞者には審査員から賞状とメダルが贈呈された。



 なお、各弁士の原稿は後日、辯論部藤沢会のホームページにもアップされる予定なので、興味の湧いた方はぜひそちらも確認してほしい。野球やサッカーに勝るとも劣らない白熱を見せる弁論大会。今後も辯論部藤沢会の活躍に期待しよう。