19日(土)、SFCにて、Infinity Ventures Summit Spring Workshop 2014 in SFC(以下IVSスプリングWS)が開催された。登壇者の多くをSFCの卒業生が占める、充実したWSとなった。


 IVSとは、Infinity Ventures Summit という、IT業界の国内外の経営者・経営幹部を対象とした、年2回の招待制オフサイト・カンファレンスである。そのIVSが学生向けにもWSを企画しており、これまでにも京都大学や慶應義塾大学日吉キャンパスにて開催されたことがある。今回のIVSスプリングWSは、SFCの卒業生である株式会社コロプラの千葉功太郎氏の提案によって、SFCでの開催が実現した。会場には、SFC生だけでなく、他大学や首都圏以外からもIT業界に興味を持つ人々が詰めかけ、IVSへの関心の高さが伺えた。

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20代の働き方とは?!

 最初のセッションは、20代の働き方・経験の積み方について語られた。セッションの中では20代のうちにしておくべき経験について、それぞれの登壇者が思いを語った。

株式会社ワンオブゼム 武石幸之助氏:

 以前から、「社会に対して影響力を持ちたい」と考えていて、メディアセンターで本を沢山借りて、読書を通じて様々な事柄について学んでいた。しかし徐々に、実際にアクションを起こしている人の側で勉強したり、現場の環境から学び取ったりする方が効率が良いと気付いた。学び方は大きく、「本から学ぶ」「人から学ぶ」「経験から学ぶ」に分けることが出来るが、本からは生きた知恵は学びにくい。若い人はどんどん新しいものに飛び込んで欲しい。

株式会社ディー・エヌ・エー 赤川隼一氏:

 キャリアの中で、自分に過剰な負荷を掛けておくことが、後々、自分の力になっていると実感している。ある程度出来るようなことを毎日やっていても、それほど成長できない。たとえ背伸びだとしても、必死に頑張れば後で振り返った時に成長を実感することができると思う。

コーチ・ユナイテッド株式会社 有安伸宏氏:

 「自らの手で重大な決断を下す」「何か一つのことをやり切る」など、ある意味での「諦めの悪さ」が、社会人としてのレベルアップに繋がった。また、そういう働き方が出来る環境で何か目標を持って働くと、その後の伸びしろに違いが出てくる。

グリー株式会社 荒木英士氏:

 自分は意思が弱く、目標を決めてやり切るということが難しかった。そんな自分にとっては、学生時代に働いていたベンチャーの環境が良かった。「自分がやらなきゃだれもやってくれない。だから、やらざるを得ない」という環境だ。逃げ場がないからこそやらなければならないという環境は社会人になってからも同じで、「やらざるを得ない」という環境に自分から身をおく事が、自己の成長に繋がる。

「新しい仕事を創る」

 2番目のセッション「新しい仕事を創る」では、新しい仕事を作る中で、それぞれが今までに経験したことについて話された。

グリー株式会社 青柳直樹氏:

 新しい仕事を創ることについては、自分が変だなと思った物事について、誰よりも早く自分の目で見に行ってみるということが大きなチャンスに繋がる。また、自分が本当に輝ける場所はどこなのか、考える事も重要。ポテンシャルを活かせる環境に身を置くことで、自分は成長できた。

東洋経済オンライン 佐々木紀彦氏:

 新しい仕事を創る上では、年配の人のいないところを狙うのが重要だと思う。自分は紙媒体の編集部にいるよりも、デジタルの世界に身を置く方が合っていた。古い伝統の中に根付くノウハウを学べたことは貴重な経験だったが、ある程度学んだら、年配の人がいない新しい領域で、学んだノウハウも活かして何か新しいことをするのが良い。

PARTY 川村真司氏:

 会社に所属して働くメリットもあるが、自分で会社を立ち上げれば、「会社では出来ない」ようなことも実現できる。もしやりたい事が出てきて、それが今の会社の中では出来ないと判断したなら、会社を出てしまって良いと思う。会社に所属するメリットを享受できる人とそうでない人がいるので、その点はよく考える事が大事だ。

takram design engineering 渡辺康太郎氏:

 新しいことに挑戦するには、必ずはじめの一歩がある。しかし、はじめの一歩を踏み出すにあたって、「これをしなければならない」というような処方箋はない。その人なりの、はじめの一歩の踏み出し方があると思う。仕事の仕方を相手に合わせるのでなく、自分なりの働き方が出来るということ、そしていかに自分らしさを保ち続けられるかが重要だと、最近思い始めた。

「女性の働き方・生き方」

 登壇者が全員女性によって占められた本セッション。女性としての働き方、働く上での男女の性差についてそれぞれの観点から話すセッションとなった。

ヒューマン・ライツ・ウォッチ 趙正美氏:

 仕事をする上で30歳手前までは、男性と比べての性差を感じることはあまりなかった。しかし、結婚を考えた時や、子供が欲しいと思った時にどうしても第一線を降りて1.5番手、2番手に下がることを余儀なくなる。女性として「2つ」は手に入れられないと気づいた時、性差を強く意識した。

株式会社 Lalitpur 向田麻衣氏:

 「女性であるからどうか」というテーマで何かを語る、という事に違和感を覚える。現代では、「女性である」という理由で、社会人としての不都合を感じたことはそれほどない。女性が男性と比べて制限されていた時代ではなく、そういった所は改善されていると思う。

リクルートライフスタイル 加藤史子氏:

 ジェンダーバイアスはやっぱりあると考える。男性は、どんなに家庭が充実していて幸せな人生を送っていたとしても、仕事で認められないとダメな奴と思われがち。逆に女性は、どんなに出世しても、プライベートが充実していなければ「可哀想な人」というレッテルを貼られてしまう。女性に限ることではないが、こういうことを理解して生きてゆくことは、重要だと思う。

「Let’s start up!」

 4番目のセッションでは、新事業立ち上げの際におきる問題や、共に働きたい人材についてのトークが盛り上がった。

株式会社カヤック 柳澤大輔氏:

 今までに起こった最大の困難は、忘れましたね。経営者には忘却力が大切なので。経営者をしていると、常に過去よりも大きな困難に立ち向かい続ける必要があります。だからこそ、以前の失敗を忘れられる人の方が強いと思います。

株式会社コロプラ 千葉功太郎氏:

 企業が上場する前までは役員生活が待っていると考えていたが、むしろ忙しくなっていく毎日。例えるとしたら、永遠にボスキャラが強くなっていくゲームをプレイしているようなもの。勿論大変なこともあるが、やはり楽しい。自分が思うに、最もメンタルヘルスで大事なことは「まあいいか」と気持ちの面で思えるか否かだ。

株式会社じげん 平尾丈氏:

 欲しい人材について考えると、エネルギー総量の大きい人が良い。次世代起業家を育てたいと考えているので、根っこが行動者、例えば火事があった時に火事だと騒ぐのでなく、火を消しに行くような人材が欲しい。

卒業生代表による人生相談会


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 各セッションの中で、最も盛り上がりを見せたのが、最終セッションである「卒業生代表による人生相談会」だ。当初の予定を20分ほどオーバーし、生きる意味から恋愛事情まで、多種多様な質問が飛び交った。
 「自分は器用貧乏なんですが、どうすれば良いのか」という参加者からの質問には、KLab株式会社COOの五十嵐洋介氏が「自分は大学に入ってからすぐにインターネットと出会えて熱中できたので、質問者のように色々なものに手を出さなかったという面で真逆だった。けれど、目の前のやってみたい事に挑戦して、世界ーの器用貧乏を狙えば良いのではないか」と答え、会場内を沸かせた。 

 また、登壇者・参加者から今回のIVSスプリングWSの感想について、話を聞くことができた。

鶴田拓也さん(立命館大学情報理工学部2年)

 IVSスプリングWSのFacebookページを見て、滋賀県の立命館大学から参加しました。ITの力や可能性を探りたいと考え、このイベントで何か得られたらと考えました。また、「面白そう!」という純粋な気持ちも、参加を決断する大きなきっかけとなりました。

宮坂和憲さん(13年総卒)

 IVSスプリングWSは、社会人の参加枠があるのがすばらしいと感じました。月曜日から金曜日まで働いていると、考える時間を持つことも難しいのですが、今日はセッションを聞きながらじっくりと考えることが出来て本当に良かったです。

仲田絵理さん(総4)

 就職活動が終わった4年生なので、これから自分が進んでいくフィールドについて強い関心を持ちながら、今回のIVSスプリングWSに臨めました。自分よりも大人の方々がこんなにもアクティブに仕事をしているのだから、自分ももっといろいろなことに挑戦していこうと思います。

 セッションの最後には、IVSサマーワークショップ2014の開催も告知され、会場は一層盛り上がりを見せた。IVSサマーワークショップ2014はSFC出身の経営者・経営幹部に限らず、多方面から登壇者を募り、慶應義塾大学日吉キャンパスで開催される予定だ。
 ベンチャー企業のトップランナーが多数登壇するIVSに、これからも注目だ。