5月24日(水)、メディアセンターにて「SFCヘボコンforルーキー」が開催された。「ヘボコン」が開催されるのは、2015年以来2回目。技術力の低いロボットたちが「ヘボい」バトルを繰り広げた。

ヘボくなきゃダメ!? 「ヘボコン」とは

「ヘボコン」は、簡単にいうとロボット相撲の大会だ。参加者たちがロボットを作って持参し、ロボット同士を戦わせる。ただし、参加条件は「技術力が稚拙なこと」。高度な技術を駆使して制作したロボットや金にモノを言わせて完成されたロボットは参加が認められない。

フィールド(机の上)から相手のロボットを押し出したり倒したりした方が勝ちとなる。勝負がつかない場合は、双方の移動距離を比較して、距離の長い方に勝ちの判定が下される。

しかし、ヘボコンにおいては勝った方が"偉い"わけではない。ヘボコンの一番の目的は、皆が一体となってロボットを愛でることだ。

出場ロボット&参加者紹介

今回参加したロボットは6体。

菅田悠介さん(環3)作「モッタイ騎士」

「モッタイ騎士」は、全て捨ててしまえそうな材料で構成されている。ボディを覆うのは授業で作った紙製のニワトリ。ボディ下部は粘土の箱で、心臓は壊れた扇風機だ。どれも「捨てるのがもったいない」と思った菅田さんは、ロボットに再利用した。

菅田さんは毎月「モッタイナイト」というイベントを開催している。食材廃棄問題を楽しく解決しようという理念のもとに、各家庭で余った食材を持ち寄って料理するイベントだ。今回の「モッタイ騎士」にも菅田さんの哲学が込められていることが感じられる。

高木昭さん(環1)作: 「黒金(クロガネ)の豚」

このロボットは、昭さんが大好きなジブリ映画「紅の豚」がモデルになっている。銀色に着色された姿が高級感を醸し出す。ロボットの動力は、なんとボディ後部に取り付けてある風船だ。「飛べない豚はただの豚なので、今回は翼をつけて飛べるようにしました」と高木さんは語る。

後藤圭さん(環4)作: 「地獄のハネムーン」

後藤さんは、昨年開催されたヘボコンにて「MOSTヘボ賞」を受賞した。メッツとマウンテンデューの缶がアメリカンな雰囲気を漂わせている。前方の車には、サラミが取り付けてある。ここから「地獄のハネムーン」が始まるのか…!?

小出貴也さん(総3)作: 「地獄のメディアセンター」

こちらは、なんとも世紀末感を匂わせる作品だ。当初はてんとう虫に人形を乗せるだけだったはずが、人形が重すぎてロボットが動かないことが判明した。そのため、小出さんは改善策としてボディの後ろにリモコンでコントロールできるネズミを取り付けた。

ストーリー設定としては、女の子(人形)に恋したネズミが後ろから追いかけているという話らしい。なかなかホラーなストーリーだ。

淺野義弘さん(政メ2)作「友だち特急」

淺野さんは、なんと今回のヘボコンの主催者だ。主催側が自ら参加してしまうのがSFCヘボコンの面白さだ。「友だち特急」は、名前のごとく電車の模型がボディになっている。

実はこの電車は九州を走る「湯布院の森号」であり、淺野さんが学部4年生の時に卒業旅行で友だちと乗車したそうだ。その時に一緒にいた友だちが第1回ヘボコンに出場してくれたらしい。しかし、第2回である今回のヘボコンに、都合上その友だちは参加できなかった。そんな寂しさを込められたのがこの「友だち特急」だ。

本堂莉理さん(総1)作「どすこいハム子」

本堂さんは、今回の大会で唯一の1年生。「ルーキー」だ。自分のロボットの技術力があまりにも低く、出場直前に不安に襲われたそうだ。本人ですら「どすこいハム子」と命名した理由はわからないらしい。

「ヘボい」ロボットたちによる熱い闘い

第1試合「モッタイ騎士」vs「地獄のメディアセンター」

試合が始まるとともに両者は激突。そして、止まった。「モッタイ騎士」の動力部分である心臓(壊れた扇風機)が動こうとするが、なかなか前に進めない。膠着状態が続いた末、時間切れに。移動距離の長かった「地獄のメディアセンター」に勝利の判定が下された。

第2試合「黒金の豚」vs「友だち特急」

こちらの試合はあっという間に決着が着いた。双方がぶつかり、衝撃に耐えかねた「黒金の豚」が倒れた。同時に、倒れた衝撃で「黒金の豚」の背中に接着してあったダビデ像がポキッと折れてしまった。勝者は「友だち特急」。

第3試合「地獄のメディアセンター」vs「地獄のハネムーン」

地獄のロボット同士の闘いだ。さらに、双方ともリモコンで遠隔操作できることが特徴だ。第1ラウンドを勝ち抜いた「地獄のメディアセンター」にとっては2回目の闘いとなる。両者がリモコンを用いているためか、バトルは今回のヘボコンで最も技術力の高いものとなった。お互いに相手を押し出そうとぶつかり合うが、時間切れに。移動距離を測ると、「地獄のハネムーン」の方が僅かに短かった。勝者は「地獄のメディアセンター」。

第4試合「どすこいハム子」vs「友だち特急」

「どすこいハム子」には動力が存在しない。そのため、「どすこいハム子」はMacbookで作った傾斜を転がり落ちることになった。試合が始まると、Macbookの坂を「どすこいハム子」が勢いよく進んでいった。「友だち特急」も走る。しかし、「どすこいハム子」の勢いに負けた「友だち特急」は横転してしまった。「どすこいハム子」がシードの意地を見せて勝利した。

決勝戦「どすこいハム子」vs「地獄のメディアセンター」

いよいよ決勝戦だ。ついにルーキーの「どすこいハム子」が決勝に来てしまった。試合開始とともに、「どすこいハム子」がMacbookの坂を駆け下りる。しかし、「地獄のメディアセンター」の動きも素早かった。「地獄のメディアセンター」は、「どすこいハム子」の動きを止めてしまい、動力がない「どすこいハム子」には成す術がなかった。移動距離の長さから、「地獄のメディアセンター」の優勝が決まった。

深まったロボットへの愛

「SFCヘボコンforルーキー」の優勝者は、「地獄のメディアセンター」制作者の小出さんとなった。トロフィーを受け取った小出さんは、「決勝戦でルーキーを倒してしまって申し訳ない」と笑った。

一方で、最もヘボいと認定されたロボットに与えられる「最ヘボ賞」は、主催者・参加者全員による投票の結果、1年生ルーキー本堂さんの「どすこいハム子」に決まった。「ヘボコンが私のことを受け入れてくれるか不安だったけど、こんな風に受け入れてもらえて嬉しかったです」と本堂さんは語った。

ヘボコンはどんなに技術力の低い参加者でも受け入れるイベントだ。普通であれば「技術」が求められるロボットに、あえて「技術」を求めない。反対に、「技術のなさ」を評価する。どんなに技術がない人でも、モノづくりの楽しさに触れることができる。次回開催された際には、ぜひ参加してみてはいかがだろうか。

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