10月半ばにSFC内に出店したキッチンカーをはじめ、現在SFCでは食に関するプロジェクトが活発になっている。先日のキッチンカー出店の際には、「藤沢野菜のほっこりカレー」や「みやじ豚弁当」、「タンドリーチキン丼」などを食べた人も多いであろう。

SFC CLIP編集部は、食環境改善タスクフォースとSFC事務局を代表して3人の担当者の方々(管財・国際・メディアセンター)を取材し、これまでのSFC内での食に関する取り組みを含め、今回のキッチンカー出店の実現に至った経緯とその評価を聞いた。

以下の3名が、今回インタビューに応じてくださった「食環境改善タスクフォース事務局」メンバーの方々。

  • SFC 総務(管財)担当 矢ノ目優 課長

  • SFC 学事(国際)担当 源堅一郎 主任

  • 湘南藤沢メディアセンター パブリックサービス担当 長野裕恵さん(取材当時。現・日吉メディアセンターパブリックサービス担当)

食環境だけではなく、アメニティ全体を見直す「食環境改善タスクフォース」

—— 「食環境改善タスクフォース」という名前は大半の学生には馴染みがないかと思うのですが、具体的に何をしているチームなのでしょうか。

総務(管財) 矢ノ目さん:
この活動は10年くらい前にも一度ありました。当時、食堂の撤退をうけて、職員と先生方が中心となって同じような活動をしたんです。その時に、今の生協・タブリエ・SUBWAYがSFCに入りました。

学校の食堂というのは基本的に春期休暇・夏期休暇があって、売り上げは良くないのが通常です。特にこのSFCはあまり良くありません。そのため、生協が「夏休みは閉める」とか「夕方は早く閉める」とか、いろいろ対策を取りたいと。そうなると、元々SFCは周囲にご飯を食べられる場所があまりないので、皆さんが食事に困るんじゃないかという話になりました。そこで「もう一度考え直しましょう」ということで始まったのが食環境改善タスクフォースなんです。

総務(管財) 矢ノ目さん 総務(管財) 矢ノ目さん

つまり、タスクフォースができたきっかけは、生協の売り上げの問題です。しかしそれだけではなく、それをきっかけにこのキャンパスのアメニティ全体の改善までを視野に入れて、教職員からメンバーを募って議論をしているんです。先日もかなり膨大なアンケートを実施していろいろな意見や非常に良いデータが出たので、それをどう活用するか考えています。

他にタスクフォースがやっていることとして挙げられるのは、短期的には今回やったようなキッチンカー出店のトライアルだとか、今まで非常に短い時間しか開放していなかったサウス食堂を10:00-20:00まで開けるようにしたりとか。また、無人コンビニなど、他に何かできないかと議論しています。長期的には、今の建物が本当にその場所でいいのかとか、そこまで言及しようと考えています。ただ、「言及する」イコール「実施する」ではないですが。

学事(国際) 源さん:
食環境改善タスクフォースがまず第1弾でやったのが、アンケートです。アンケートの回答者数は1,345人でした。この総環エリアと看護エリア、それから中高の教職員の方々、計5,000人程いらっしゃるうちの約4分の1の方々から回答を頂いたので、回答率は相当良かったと感じています。

学事(国際) 源さん 学事(国際) 源さん

アンケート実施後には、他大学の調査を行いました。SFCと似たような環境にある大学がどのように夏期休暇期間の食環境を維持しているのか、ということを計7、8大学で調査し分析しました。その中で、非常に大きなキャンパスを持つある大学がキッチンカーにすごく力を入れているというお話がありました。食堂が1箇所にしかないエリアでも、キッチンカーがあると皆がそこに行くというような形で、キッチンカーは学生さんや教職員からのニーズがすごくあったということでした。毎日メニューが変わるため飽きないということもポイントかと思います。

そういったお話をタスクフォースに持ち帰って報告したところ、「キッチンたまり場」(編集部補足: 「キッチンたまり場」は、昨年からSFC周辺で出店を行っているキッチンカー)の柴田君のような学生さんがSFCにいることを教授に伺い、今回のキッチンカー出店のトライアルが実現しました。実際、今回のキッチンカーでは毎日200-250食くらい売れたので、非常にニーズが高かったということが実証されたのかなと思います。また、他大学を調査しますと「ワンコイン」というのがキーワードだったんです。「ワンコイン」は500円を指していまして、今回のトライアルにおいても価格は500円でお願いしました。

タスクフォースとしては、もちろんキッチンカーで終了というわけではありません。その他アメニティも含め、学生・教職員の皆さんがいかに過ごしやすい環境を作るかというのがミッションだと思っています。居住空間においても食環境においても過ごしやすい環境を作ることで、なるべく多くの学生さんにキャンパス内に滞在して頂くことを目指して活動しています。

今はキッチンカーにスポットが当たっていますが、SUBWAYでもモーニングメニュー・イブニングメニューというものをスタートして頂きました。まだ大きな構造改革にまでは至っていませんが、学生さんに喜んでもらえるような仕組みを徐々に構築していけたらいいなと思っています。

総務(管財) 矢ノ目さん:
アンケートの「自由記述」で食環境に関わらず自由に述べてもらうと、「暗い」とか「暑い」というのも含めて色々な意見が出てきているんです。そういう意見もせっかくの機会だから取り入れて、アメニティ全体の向上に結び付けられたらと思っています。「自由記述」だけで200ページくらいの記載になるんですが、それだけ皆さんがこのキャンパスの環境について意見があるということです。

学事(国際) 源さん:
あとは、アンケートで「どのような種類の食堂がSFCのキャンパスに合っているか」という質問をしました。約6割の780人が回答したのが「生協食堂のように比較的安価で食事が提供される食堂」で、一番多い回答でした。続いて多かったのが「栄養やカロリーに気を遣ってくれる食堂」でしたね。

少し話はずれますが、アンケートの結果で少し面白いのがあって、「どのような点でアメニティが不足していますか? 」と聞いた時に、一番多かったのが「仮眠や横になれるスペース」という回答だったんです。このキャンパスはご存知の通り通学時間が長い方が多く、通学だけで疲れちゃうという方が多いので、そういうスペースが重要なんじゃないかなというところが今後のアメニティ改善点ですね。

その次にはほとんど同じくらいの量で「食環境」という回答が出ていましたので、やはり非常に多くの方が食環境に対してかなり関心があるのかなと思います。逆にそこがダメだと本当に「ダメなキャンパス」と思われてしまうような、重要なファクターになっているのかなと思っています。

今回のキッチンカー出店の総評

今回のキッチンカー出店の様子 今回のキッチンカー出店の様子

—— 今回はトライアルでキッチンカーを出店したとのことですが、タスクフォースの方から見てこの2週間の総評をお願いします。

学事(国際) 源さん:
色んな側面から分析しないといけないと思いますが、まず売り上げの面からだと毎日完売だったので、学生さんへのインパクトという部分については評価できる点なのかなと思います。キッチンカーとも反省会をしましたが、改善点はやっぱり、質ですね。ごはんが硬いとか、野菜がどうだとか、味に関する改善点は結構あったのかなという風には思います。

あとは看護医療学部は人数が絶対的に少ないエリアなので、生協のメニューも少ないんです。そこで、今回は看護エリアでも出店して頂くというのが一つの目玉だったんですけども、看護エリアでは売れたのが毎日40食ほどで、そんなに多くは売れませんでした。そもそも看護エリアは100人ぐらいしかいない状況でしたので40食も出れば逆に良い方なのかもしれませんが、人数が少ないからといって食環境を雑にしてはいけないという観点からも、今後どの曜日に来てもらうかはもう少し検討しないといけないなと思います。

総務(管財) 矢ノ目さん:
今回の反省点として、やはりキッチンカーのそばに食べられるスペースが必要だろうなというのが挙げられます。生協の前は椅子があるから良いですけど、メディアの前には少ししかないですよね。その場所で食べられるかっていうのは結構大きいんだろうなと思いました。例えば今後冬にやる時に外でいいのかとか、そういうのも一緒に全体的なサイトで考えなきゃいけないんだろうなと思います。

もう1つは、SFCの特徴である短い休み時間に提供しなければならないという点です。20分で何食作れるのか、学生が並んだのに結局買えないという問題がありますし、これはおそらく供給するキッチンカーの人達が今後考えなきゃならないことなんだと思います。

学事(国際) 源さん:
非常に短い時間に一気に人が来るような状況なので、そこをどう捌いていくかというのが課題かなと思います。しかし、たくさん作り置きをすると料理が冷めてしまってキッチンカーの良さがなくなっちゃうので、そこも課題ですね。

—— メディアのラウンジが飲食可能エリアとして開放されたことについて、何か反響はありましたか。

湘南藤沢メディアセンター 長野さん:
正直、大きな反響はあまりなかったです。結構ラウンジの存在自体を「知らなかった」という人が多くて、実際に来てみて「ここに自販機があるんだ」などの声が多いのが印象的でした。また我々としては、他の場所でこっそり食べてそこでゴミを捨てられるよりは、ラウンジを飲食可能にして、ある程度こちらでも雑巾置いたりゴミ箱を用意したりすることができれば、むしろメリットになるというのも発見だったかなと思います。

湘南藤沢メディアセンター 長野さん 湘南藤沢メディアセンター 長野さん

総務(管財) 矢ノ目さん:
他キャンパスでは飲食なんてとんでもないです。ただ、メディアセンターというのはSFCの真ん中にあり、特に1階は非常に活気のあるエリアでいわゆる「図書館」という感じの場所ではありません。今回こういうことをしたらメディアにとってどんな影響があるのかということも判断してのことでした。

学事(国際) 源さん:
実際にアンケートの結果に基づくと、「授業以外の時間はどこで過ごしていますか」という質問の圧倒的1位の回答はメディアセンターなんです。なので、今回こういう風にメディアセンターのラウンジを食事場所として開放したというのは非常に意義のあることでした。

今後のキッチンカー展開は

キッチンカー出店の様子 キッチンカー出店の様子

—— 今後のキッチンカー出店についての方針をお聞かせください。

総務(管財) 矢ノ目さん:
キッチンカーは1つの候補ですが、一方で既存の給食事業者さんが撤退するようなインパクトを与えてしまっていいのかということもあります。パイを取り合うのではなく、もっと大きなパイになるようにしなきゃいけないんですよ。なので単純に「キッチンカー良かったね、じゃ今後も導入しよう」という風にはいかなくて、既存の給食事業者さんの意見を率直に聞きながら今後やれるかどうかというのを考えます。また、安定して供給できるキッチンカーを探さなければなりません。

キッチンカーについては、今のところ非常に良い、好印象です。できるのであれば、どこかでやっていきたいなとは思っています。

学事(国際) 源さん:
やはり柴田君のような現役の在校生の方がやるというのは非常に大きいですね。

総務(管財) 矢ノ目さん:
SFCらしいですよね。

学事(国際) 源さん:
そうですね、とてもSFCらしい。学生がキッチンカーを出店するとなるとハードルが高くなるのは、大学機関としてはあると思います。しかしそこを今回は柴田君に頑張ってもらおうということになりました。学生が大学内で活躍できるんだという点でも、SFCらしさを出せた企画だったんじゃないかなと思っています。

—— ありがとうございました。

学生も積極的に参加してキャンパス環境向上を

食環境改善のトライアルとして実施された今回のキッチンカー出店。定常的に出店するにはまだまだ道のりは長いようであるが、大学側も学生側も「キャンパス環境を良くしたい」という気持ちは同じだ。学生側にも意見を述べるチャンスは与えられているので、このSFCをより良くするため、積極的に参加しよう。

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