湘南自治会準備会(以下、準備会)が、福利厚生団体の湘南自治会(以下、自治会)として活動していくことへの是非を問う投票が10日(土)まで行われている。今までSFCになかった自治会がどういった活動をこれからしていくのか、メンバーの想いを執行部として活動する5人に取材した。

投票の概要

まずは、今回行われる投票の概要を確認しよう。

今回の投票は、現在有志による未公認団体として活動している「湘南自治会準備会」を、福利厚生団体の「湘南自治会」として改組、設置することへの是非を問うものだ。詳細は以下の通り。

名称湘南自治会設立承認投票
投票命題「湘南自治会」の設立を承認するか否認するか
投票期間3日(土)-10日(土)
投票方法CNSメールを利用したオンライン投票
有権者すべてのSFC生(総環政メ、看護健マネに所属する学生)
自治会の設立条件投票全体の過半数が「賛成」であり、かつ学部生による投票の過半数が「賛成」の場合、湘南自治会が設立される。

今回の投票にはこれまでにないCNSメールを利用した方法が採られている。これは、選挙管理委員会の用意するWebページからリンクされている賛成票、反対票用それぞれのメールアドレスにCNSのメールアカウントからメールを送信することで投票を行う仕組みだ。詳細は湘南自治会設立承認投票ポータルサイトプライバシーポリシー投票ページを確認してほしい。

また、メールで投票を行う点を活用して、自治会について思うこと、要望、批判などを本文に記入すれば、選挙管理委員会を通じて、準備会に匿名で意見を届けられるということだ。(投票自体は本文に意見等を記入しなくても問題なく受理される。)

なお、今回の投票の結果、自治会の設立条件が満たされなかった場合は、準備会は改組せずそのまま非公認団体の準備会として活動を継続するということだ。

"SFCに自治会を作る"ための投票

では、準備会はSFCにどのような自治会をつくろうとしているのだろうか。疑問に思った点などを、準備会の松浦竹之介さん(総2・事務局定例会議議長)、成田凜さん(総3・広報局長)、水上翔太さん(環3・事務局財務局長)、中井才響さん(総3・総務局長)、市川裕也さん(総2・書記局長)に聞いた。聞き手は編集部員の青木(総2)、高橋(総3)、広田(環4)の3人。なお、取材はオンライン(Zoom)で行った。

取材に応じてくれた湘南自治会準備会幹部の皆さん 取材に応じてくれた湘南自治会準備会幹部の皆さん

学生が"キャンパスの自治"に参加するためのStudent Unionを創る

準備会のメンバーが考える自治会の目的は「SFCらしい自治をつくるために、学生による自治への参加を実現すること」だという。準備会のメンバーが集まるきっかけになったのは、19年10月頃に「なんでうち(SFC)に自治会ないんだろう」という話題がTwitter上で持ち上がったことだ。その後当時の塾生代表との協議を経て、準備会を結成し、湘南自治会の設立を目指すことになった。

準備会によると、他大学を含む従来の自治会を名乗る組織は、基本的にはサークル活動の支援など学生同士の間だけで完結してしまっているという。一方で、準備会が目指す自治会は、これまでほとんど教職員のみで行われていたキャンパスの政治に学生が参与することを目指すという。

また、コロナ禍でコミュニケーションチャンネルが減少したことによって生まれる"不便"が去年と今年にかけて特に際立ったことも一因だという。学生がサポートを求めている「今」こそ、学生の声を取りまとめる自治会の必要性が高まったのではないかと話す。

第1ステップとしての"承認投票"

準備会はこれまで未公認団体として、「学生を応援、そして支える」活動として、学生の意見の集約、「SFC20入学式」や「Final Presentation2021」などのイベントの運営や支援等の活動を行ってきた。一方、その活動の中で未公認団体としての準備会ではできる事に限りがあると感じたのだという。

また、現状の準備会はあくまで興味がある人のボランティア集団であり、自治を執り行うに当たっての正当性がないという点も、SFCの自治を目指す組織としての限界を感じる要因だという。

そこで、活動の幅を広げるためには、改めて自分たちへの信を問う必要があった。その思いが今回の「湘南自治会設立承認投票」の実施へと繋がったという。この投票を経れば、少なくとも賛成票をしてくれた人からの承認を得ていることを示すことができ、正当性を裏付けることができると考えているという。

また、準備会は全塾協議会に「仮加盟団体」として参加しているが湘南自治会は「上部団体」となることを目指しており、活動に必要な予算の確保や全塾内での発言力の強化も見込まれる。

「自治会はSFC生のために」

準備会の構想する湘南自治会は、「自治会はSFC生のために」を基本理念として、3つの理念を掲げている。

  1. SFC生の「したい!」を実現。
  2. SFC生の権利を保障。
  3. 主権者は「すべての」SFC生。

そしてこの理念に則った、10章69条に及ぶ湘南自治会憲章(草案)を用意している。今回の投票で湘南自治会が成立した場合、この草案が正式な湘南自治会の憲章となる。

この憲章に則り、湘南自治会は「自由な活動を邪魔せず応援する」組織として以下のような一人一人の悩みを受け付ける。そして希望を叶えるために、多方面から学生の活動を支え、応援していきたいと話す。このような活動を通して、すべてのSFC生が快適に活動できるキャンパスを目指すのだという。

  • 「SFC生に向けたイベントを開催したいけど、どのように情報を広め、そして参加者を集めるべきかわからない…」
  • 「サークル活動として大きな会場で講演を開きたいけど、講演費/会場費が集まらない…」
  • 「大学にこんな施設があればもっと思い通りに研究ができるのに…」

"代表"を置かず、属人化・権益化させない組織 毎年の選挙で局長を選出

また、準備会の構想する自治会はその組織体制にも大きな特徴がある。

まず、湘南自治会においては1人の「代表」を置かず、数人の「執行委員」による集団指導体制を取るという。これにより1人だけに責任を負わせず、またより多様な意見を取り入れることを目的としている。この執行委員は毎年の選挙によって選出される。

この他に自治会内にはさまざまな立場のSFC関係者を集めて意見を集約する場として「部会」が用意される。

また、最高意思決定機関として「SFC生総会」が定められており、SFC生であれば誰でも議題提出や議決に参加できる場が用意されるという。

湘南自治会準備会の呼びかける「対話」

準備会はインタビューの中で、理想とする自治会の形の一つとして「これまでの自治会にとらわれず、5,000人の学生たち、できれば全員のためのユニオンである組織」だと説明した。常に一人一人の学生と可能な限り向き合い、そして応援する存在でありたいと広報局長の成田さんは話す。

加えて、学生との対話を重ねながら、みんなで一緒に「どのような自治会にしていくのか」、そして「どのようなSFCにしたいか」ということを考えていきたいのだという。その理想を実現させるために、「まずは投票という形から、自治会の必要性を聞き、対話をしていきたい」としている。

七夕祭翌日には対話祭"E-FES"を開催

「E-FESは、アートあり討論ありの、24時間のべつ幕なしに対話ばかりのオンライン祭」である。当日は、ミュージックセッションや先生方による議論などが繰り広げられるという。

全く新しい試みであるE-FES、ぜひさまざまな形の「対話」を体験してほしい。詳細はこちらから確認できる。

SFC生へのコメント

松浦 (事務局定例会議議長)

今回の議論を通して「ぜひ興味を持ってほしい。やや仕組みは複雑ですが、知ろうとしてもらえたら嬉しいです」と笑顔を見せた。


成田 (広報局長)

「入れてくれた一票は、賛成でも反対でも絶対に意味があるし、準備会としては保証する責任を持っています。結果には影響しませんが、メールにはどんな自治会を作りたいかというような意見を書いてもらえるようになっています。みんなのSFCだからこそ、みんなで考えていきたい」とSFC生一人一人への思いを語った。


水上 (事務局財務局長)

「準備会のメンバーはそれぞれが理想を持っており、おのおのが体現していくことを目指しています。」「少しでも多く救われるSFC生がいた方がいいと思っているので、正式な自治会になることで、『何か困ったら自治会に』という状態を目指して頑張りたいです。学生自治なのでいろいろな意見があってしかるべきだと思うのですが、共感してくださる方は、ぜひ投票という形で一緒に歩いて行けたら」と伝えた。


中井 (総務局長)

「自治会はSFCにこうあってほしいという思いを反映させやすくするという役割に尽きます。だからこそ、皆さんの思いを届けてもらうことが私たちの活動に必要です。『湘南自治会って何?』『誰ですか?』といった疑問にも答えるし意見もぶつけてほしい」と話した。


市川 (書記局長)

「皆さんと一緒に考えながらSFCという社会をより良くしたいと考えている。SFC生をすごく必要としているので、考えた結果を投票という形で届けていただけたら嬉しいです」と伝えた。


おわりに

新型コロナウイルス感染症の影響でキャンパスでの生活が大きく変化し続けている。取材を進めるなかで、湘南自治会準備会は「SFCらしさ」を全員が問い、形作られた組織だと感じた。SFCのこれからを問う投票。SFCの今後を改めて見つめる機会として、SFC生それぞれが考えていく必要性を感じさせられた。

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