20日(日)、21日(月)両日にSFCで 「Open Research Forum 2022」(以下ORF) が開かれる。今年度のORFは「THE NATURE OF SFC」がテーマ。20年ぶりにSFCのキャンパスに戻ったORFはどのようなORFになるのだろうか。ORF2022実行委員長を務める高汐一紀環境情報学部教授に詳しく話を聞いた。

キャンパスに戻ってくるORF

ORF実行委員長を務める高汐一紀教授 ORF実行委員長を務める高汐一紀教授

—— 今年度のORFのテーマにはどのような想いが込められているのでしょうか。

タイトルの「THE NATURE OF SFC」だけでなく、サブタイトルに「BACK TO THE FOREST」と入れているように、大きく2つの想いを込めています。

まず、「THE NATURE OF SFC」には、「SFCとその周囲には新しい生態系(エコシステム)が生まれつつある。私たちはそれを創っている」という想いと自負があります。キャンパスでORFを開催をする理由の一つでもあるのですが、SFCの周辺には地域の方々が実際に住んでいますよね。もともと産官学を含む外部との連携も活発で、地域と大学の距離が近いことから、独自のエコシステムが回り始めていると考えています。

そんな「新しい生態系ができつつある」こと、そして多様な交流から新たな価値を生み出す、“SFCならでは“の知の生態系を、周辺地域の人たちにきちんと見ていただいて、一緒に創っていきたいと考えています。

「BACK TO THE FOREST」は「もう1回原点に戻ろう」のような後ろ向きな発想ではなく、僕らがココで考えて、生み出して、キャンパスの外で実装して評価してきたアイデアや技術をもう一度キャンパスに持ち帰って、地域の皆さんと共有したいということなのです。

ORF2022で「弾みをつけたい」。一方的な発信だった2年間を糧に

—— 続いて、ORFが社会に与える影響について教えていただけますか。

今回のORFは、僕らの取り組みをSFCで発信します。そうすることで、ORFで生まれた新たなアイデアがエコシステムとして、SFCを中心とした地域で回り始めるきっかけになるかもしれないですよね。良いアイデアは、最初の弾みさえつければ勝手に回り始めます。ORFをやる意義というのも、アイデアの足跡を残して「弾みをつけること」にあるのではないでしょうか。

残念ながら去年や一昨年は、一方的な情報発信をするORFになってしまったと反省しています。ただ「止めたら駄目だろう」という強迫観念もあった気がします。だからこそ今回は、たくさん吸収をしたい。僕らもいろいろなテーマで話をするし、来ていただく皆さんからも意見をいただきたいと考えています。つまりは、最初のテーマに戻りますが、キャンパスを中心としたまちでエコシステムを回したいと思っています。

コロナの影響を受け、オンライン開催した2年間 コロナの影響を受け、オンライン開催した2年間

SFCでの開催は20年ぶり ノウハウがないなか手探りで

—— SFCでの開催は20年ぶり、対面での開催は3年ぶりですが高汐先生が苦労した点はありますか。

僕だけではなく、関わった先生方はみんな苦労したと思います。

例年、東京六本木のミッドタウンで開催していたORF 例年、東京六本木のミッドタウンで開催していたORF

キャンパスで開催するノウハウも残っていないし、全部手探り。キャンパスでやると決めて動き出したのが今年の2月ぐらいなのですが、運営方法を検討する中で、学生への説明やウェブの公開も遅れてしまいました。セッションにしても、どの教室でやればいいか等を、キャンパス仕様で考え直さなければならないので大変です。

また「どうやって人を呼ぶか」も課題に感じています。SFCという立地、秋の行楽シーズン、さらには平日の月曜日となると、参加者人数の予想を立てることが本当に難しい。最終的には開けてみないとわからないですね。

歩き疲れるぐらいキャンパス全部を使ったORFに

—— 高汐教授が今回のORFで楽しみにしている点はありますか。

キャンパスワイドで開催することにした点が、とても楽しみです。実は当初、κειοの教室ぐらいでコンパクトに収めようとしていました。ただ、実際に8月中旬に説明会を行い、企画を出してもらったら、教室だけでは収まりきらないアイデアが集まりました。

例えば、テアトロン(バス入構時、左手に見える円形劇場のような貯水池)を使いたいという声があったり、未来創造塾のエリアで展示やセッションをやりたいという先生が現れたり。建築系からは外のスペースに小屋を建てたいという声もありました。そこで、せっかくなら歩き疲れるぐらいキャンパス全部を使った企画をやろうと覚悟を決めました。

それこそ来場者の方が、森の中をくまなく歩いてどんなアクティビティがあるかを、自分たちで体感してくれることが一番いいなと思っています。六本木ではできない良さを感じてほしいです。そして、もし歩き疲れたなら、多数のセッションを用意しているので、休みがてらにいろんな人の話に耳を傾けてほしいですね。

ORFはゴールではない ブートのイベント

—— 今回のORFでアピールしたい点はありますか。

昔を懐かしんでキャンパスでの開催にしたわけではありません。僕らは今、学生寮ができたり、キャンパスまでの鉄道の延伸が現実味を帯びてきたりと、キャンパスタウンを作り始めているターニングポイントにいます。

だからこそ、SFCの未来像もみんなで一緒に作れたら、とても面白いのではないでしょうか。ORFは教員だけでなく、学生も主役です。みんながSFCでやっていることを知ってもらう良い機会にしてくれれば、キャンパスでやる価値は大いにあると思います。

—— 今回のORFで何かが生まれるのでしょうか。

将来的には、何か生まれると思うし、生まれてほしい。ORFはなんとなく1、2日のイベントだけのイメージがあるかもしれませんが、ただ展示をして、喋って終わりにしてほしくはありません。

僕はORFが、今までやってきたことの集大成としての発表ではなく、ORFを起点に何かが始まるブートのようなイベントだと思っています。そこから1年間続いて、来年の今ぐらいの時期に再度エンジンをかける。ここから始まるという意味で本来は、1年中誰でもいつでもORFでの発表にアクセスできるような情報展開をすべきだと考えています。

ちなみに去年や一昨年は、オンラインでコンテンツを作っていたので、アクセス状態を維持することができました。

しかし今回は対面での開催。より気を引き締めて、2日間で終わるわけではなく、そのままずっとエンジンをかけて右肩上がりで活動を続けていく意識が必要な気がしています。例えば、ORFで開催したセッションが、来月以降も毎月1回くらいのペースで、人が変わりながらも続いていけば、最高ですね。

—— 最後にメッセージがあればお願いします。

SFCの中で何をやっているか、特にキャンパスの周りに住んでいる方々には、伝えきれていないと思っています。だからこそ我々がやっていることをぜひ知ってほしいし、調べて理解するだけではなく、関わって欲しい。大学があってまちがあるわけではなく、まちと大学が並びながら両方が成長していけるような関係をつくっていきたいです。

ぜひ学生のみなさんも、まちと大学が成長しあえる関係をつくるつもりでORFに参加してみてください。また、地域から飛び出し、色々な場所でフィールドワークや社会実装を経験して得ることができた評価を持ち帰って、地域の発展に寄与してほしいと思っています。

主体として関わる学生が育つと、次々と新しい生態系ができて、エコシステムも回るようになる。そのきっかけにORFがなれたら、嬉しいです。

—— ありがとうございました。

みんなでORFに参加しよう!

SFCのキャンパス全体を使った今回のORF。六本木ではできないような体験をしにSFCに足を運んでみてはいかがだろうか。

開催日程:11月20日(日)09:00-17:00、11月21日(月)09:00-17:00
会場:慶應義塾大学湘南藤沢キャンパス
入場料:無料(要参加エントリー)

参加エントリーはこちらから。

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