突然の閉店騒動から約半年。我らがSFC生の愛する洋食店「アローム」が今年4月、遂にリニューアルを果たした。提供するメニューも一新され、これまでのリーズナブルで多種多様なラインナップから、食材にこだわったリッチなコース料理へと変貌を遂げた。

アローム14外装もリニューアル



 もともと、アロームは昨年末をもって店を閉める予定だった。しかし、株式会社えいごやの伊藤雄吉さん(09年政・メ卒)が、「お世話になったアロームに恩返しを」との思いで立ち上がり、2月までの期限付きで再建を手伝うことになっていた。



 アローム閉店危機に、SFC卒業生が救いの手 2月まで存続へ



 この経緯についてSFC CLIPが取り上げたところ、多くの支援者・協力者が現れたという。運営資金やスタッフの確保に成功し、今年4月に満を持して改装オープンする運びとなった。現役のSFC生も、運営に携わっているとのことだ。


豪華コースの高級路線 30年前に立ち返る

アローム13落ち着いた店内、白いテーブルクロスで上品に


 外観や内装は少しアレンジされているものの、店内にはいつもと変わらぬマスターの姿があった。高級感のある純白のテーブルクロスについて尋ねると、マスターは「昔はこうだったんですよ」と、フォークやナイフをセッティングしながら答えてくれた。

 「30年前の開店当初は、こんな風にコース主体の高級スタイルでやっていました。ある時、店に来た学生からの要望で手頃なメニューを出したら、それが評判になってしまって。結果として、何十種類もの料理を常に提供するようになったんです。でも、それだけ毎日仕込みをするのも大変でしたし、採算を取るのも難しいので、リニューアルを機に原点回帰させてもらいました」

 以前のアロームでは決してお目にかかれないような、ズラリと並ぶカトラリーに、思わず背筋がシャンと伸びてしまった。

アローム12ナイフやフォークを置くためのカトラリーレスト…馬と鹿?


 「このカトラリーレストね。本当はネコとイヌが良かったんだけど…在庫がなかったから、ウマとシカになっちゃった。これじゃあ『馬鹿』じゃないか、って。面白いでしょ」

豪華すぎ! 3コース分のレビューを一挙大公開!

 今回注文したのは、「ランチコース(1,200円)」「レディースランチセット(1,500円)」「茅ヶ崎牛ランチコース(2,500円)」の3コースだ。付け合せはライスかパンを選択でき、また食後の飲み物もコーヒー・紅茶から希望のものを注文することができる。なお、コース内のいくつかの料理は、日によって内容が異なる。

【ランチコース】
・本日のスープ
・サラダ
・ポークシチュー中華風
・ライスまたはパン
・デザート盛り合わせ
・コーヒーまたは紅茶

【レディースランチセット】
・本日のスープ
・サラダ
・本日の鮮魚
・サーロインステーキ
・ライスまたはパン
・デザート盛り合わせ
・コーヒーまたは紅茶

【茅ヶ崎牛ランチコース】
・オードブル
・本日のスープ
・サラダ
・本日の鮮魚
・茅ヶ崎黒毛和牛サーロインステーキ
・ライスまたはパン
・デザート盛り合わせ
・コーヒーまたは紅茶

 この日のスープはオニオンスープだった。コンソメベースの甘めのスープには、刻んだオニオン、クルトン、コーンが入っており、それぞれの違った食感が楽しめる。

アローム2【3コース共通】本日のスープ


アローム5【3コース共通】自家製ドレッシングのサラダ


 また、パプリカやスプラウトなど色鮮やかな新鮮野菜のサラダは、見た目にも楽しい。散りばめられたカリカリのコーンフレークが、良いアクセントになっている。

アローム6【ランチコース】ポークシチュー中華風


 ランチコースのメインディッシュは、ポークシチュー中華風。塩味ベースの中華風スープはあっさりしているが、じっくり煮込んだ豚肉との相性は抜群で白髪葱との相性も良く、箸が進む。

アローム8【レディースコース】本日の鮮魚&ステーキ


 レディースコースのメインは、シーフードソテーとサーロインステーキがワンプレートになっている。ホタテや白身魚をたっぷりのバターで炒めたソテーと、あっさりオニオンソースの柔らかなステーキ。異なる旨味を一度に味わうことができる、豪華な一皿だ。

アローム1【茅ヶ崎和牛ステーキコース】オードブル – 鶏のバロティーヌ


 一方、茅ヶ崎和牛ステーキコースだけについていたオードブルは、鶏のバロティーヌ。
 バロティーヌとは、開いた鶏肉にひき肉など詰めて蒸したものを、ソテーした料理である。付けあわせのサーモンや野菜と、ソースを絡めていただく。鶏肉のダシが凝縮されていながらも、後に残らないさっぱりとした味わい。コースのスタートにぴったりの一品である。

アローム9【茅ヶ崎和牛ステーキコース】茅ヶ崎和牛サーロインステーキ


 メインのステーキは一口大にカットされており、箸でも簡単に切れてしまいそうなほど柔らかい。玉ねぎソースをたっぷり絡めて食べると、肉汁とオニオンの旨味がジュワリと口いっぱいに広がる。脂がのっているもののあまりしつこくなく、さらりと食べきることができる。

アローム11【3コース共通】デザート盛り合わせ


 お待ちかねのデザートは、チーズケーキ、バナナのシャーベット、フランボワーズムース、フルーツの盛り合わせ。上品で甘すぎないチーズケーキはふわりとした食感で、まるでスフレのようだ。提供しているスイーツはすべて自家製とのことで、気合の入りようが覗える。

安全・健康・美味しいものを… 新鮮なこだわり食材

 新しくなったアロームは、食材にもこだわっている。
 秋田・八郎潟の有機米、フランス人のパン屋さんから仕入れるフランスパン、きれいに濾過した美味しい水。また店頭では、体に良いきび砂糖などおすすめの食材が直接販売されている。
 サービスとしていただいた小田原産無農薬玉ねぎのオーブン焼きは、驚くほど甘く柔らかく、玉ねぎ嫌いの編集部員でも美味しく味わうことができた。

アローム4しょう油をほんの少し垂らすだけ。小田原産玉ねぎのオーブン焼き


 これら食材の仕入れに携わっているのが、アローム再建に名乗りを上げた伊藤雄吉さんのお父さん、伊藤晃二さんだ。もともと有機食材などを扱う仕事をしており、全国各地の農家と繋がりのある晃二さん。安全で健康に良い、美味しいものをお客さんに食べてもらいたいと、食材調達を始めとするアロームの様々な業務に携わっている。

 「ちょうど今、オマールエビを使ったスペシャルディナーを企画していてね(※15日(日)まで。3,800円。要予約)。父の日も近いですし、ぜひお父さんと一緒にオマールエビや和牛のステーキといった高級食材を楽しんで欲しいなと思っています」

アローム3フランス人のベーカリーから直接仕入れるフランスパン


 コース料理以外にも、数は少ないが800円台のリーズナブルな一品料理は健在。リニューアル後は値段が上がった分、敷居が高くなるかと思っていたが、心配は無用のようだ。
 休日に友人と優雅にランチコースを楽しむもよし、授業後のカフェタイムにスイーツを頬張るもよし、デートで女の子に高級フレンチディナーを奢るもよし。
 これからも、SFC生のみならず地域の人々に末永く愛され続けるアロームであって欲しい。