4月14日(金)付の記事で情報技術科目SA・TA不足の問題について取り上げた。この記事のコメント欄に寄せられた指摘から、SFC CLIPでは情報技術基礎や情報技術認定試験に見られる問題点を掘り下げることにした。第1回目は、現在情報技術基礎を受講中の学生が授業についてどう感じているのか、1年生10人にインタビューを行った。


Q1.情報技術基礎を受講していて不満に思うことはありますか?
・初心者にとっては、課題がエグく時間をとる。
・クラスの人数が先生・SAの数に対して多過ぎる。
・授業時間が長く、2コマ続きでディスプレイを見るのはつらい。
・不必要と思えるような内容も含まれている。
・学生の間に習熟度差があるため専門領域に踏み込む人と限られ、差がますます広がるような気がしてならない。
 このように、授業の内容が初心者に対しては重くて辛い、という意見が多数を占めていた。
Q2.逆に、情報技術基礎を受講していて良かったと思うことはなんですか?
・パソコンの使い方だけでなく、仕組みなどの基本的なことがわかるところ。
・クラスの友人やSAとの交流を深めることが出来る
・意外と知らなかった操作上、知識上の穴が埋まる。
・基本的なWEBページを作れるようになるので、表現方法の範囲がぐんと広まった。
・全然パソコンに慣れていないので、学ぶことが多く、なかなか楽しい。
 日常生活でパソコンを使っているだけは得ることの出来ない知識を得られることが良い、といった意見が多く寄せられた。
Q3.入学前からパソコンの基礎をわかっている学生も多いですが、そうでない学生も情報技術基礎の授業でパソコンを使えるようになると思いますか?
・先生やSA、パソコンに詳しい学生に聞けば平気なのではないか。その場合、パソコンに詳しい学生が他の学生から頼られすぎて不満が募るという問題があるかもしれない。
・興味を持ち、根気を持って取り組む人は使えるようになると思う。
・丁寧に教わっているので、習ったことに関しては多少使えるようになると思う。
・授業だけだと厳しいですが、認定試験のために各自勉強しなければならないので使えるようになるのではないでしょうか。
・パソコンが使えない人でも、一学期間こなせばなんとか基本操作くらいは出来るようになると思います。
・基礎の出来ていない学生に対してスタイルシートやサーバのシステム解説などは無意味なのでは?
 入学時にパソコンを使ったことがないような学生でも、本人の努力次第で使えるようになるのではないか、といった意見が多かった。それと同時に、授業内容が複雑で、初心者は理解できないのではないかという指摘もあった。
Q4.クラスによって授業の進度や教える内容に差があることについてはどう思いますか?
・使用している教材が同じで、極端な差がなければ問題はないと思う。先生が違う時点で全く同じにはならないことは明らかなので仕方が無い。
・他のクラスと授業内容が大きく違ったり、授業の質に大きなばらつきがでるのはよくないと思う。
 指導内容に多少の違いがあっても、大筋は統一するべきという声が多かった。
Q5.最後に、情報技術科目(情報技術基礎や、認定試験の制度など)に改善してほしい点はありますか?
・やはり、基礎ができているかどうかの判定は必要だと思うので、認定試験はそのままで良い。
・認定試験の勉強方法をもう少し詳しく説明してほしい。
・情報技術を学ぶことの楽しさを先生にアピールして欲しい。なるべく、情報技術基礎は堅苦しくて難しそう、というイメージを作らないことが重要。
・英語のクラス分けのようにレベル振り分け試験を設けるなど、得意な人は高レベルのクラスに入れるほうがいい。
・パソコンに不慣れな人に対しては基本的な操作を教える機会を与えてほしい。
 全5問のアンケート結果を総合して、入学時の時点でパソコンに慣れている学生と慣れていない学生の間での差が大きいので、そこをカバーするような対策を求める声が多く寄せられた。
 また、SFC-SFSの昨年度春学期末調査の情報技術基礎の評価(全26クラス、回答者512人)では、
・履修してよかったと答えた人428人(約84%)
・基礎が身についたと答えた人285人(約56%)
という結果が出ている。
「履修して良かった」と答える人は全体の8割にのぼるが、「基礎が身についた」と答えるのは約半数。この差は一体どこから生じるのだろうか。
 情報技術基礎は、数少ないクラス単位で受講する授業であり、授業を通してクラス内の友人と親交を深めたりする機会も多い。このような理由から、情報技術基礎の授業は、履修してよかったと思う人が多いようだ。
 それに比べて、授業の本来の目的である「情報技術の基礎となる原理や考え方を理解する」ことが達成できているかというと、必ずしもそうとは言い切れないようである。先ほどのアンケートとあわせて、初心者向けに情報技術の基礎を教えるカリキュラムの必要性が高いのではないかと考えさせられる結果となった。
 次回は、2005年度春学期に情報技術認定試験分析・改善プロジェクトを立ち上げた大岩研究室に焦点を当てる。