22日(金)、ORF2013にて上山信一研究会は、セッション「ORF2013セッション これからの民主主義・資本主義のゆくえ – インターネットは人間を幸せにするのか?」を開催した。セッションでは、アメリカで経営学の知識を培った上山信一総合政策学部教授、フランス文学が専門の堀茂樹総合政策学部教授、イスラーム法が専門の奥田敦総合政策学部教授による、異色のコラボレーションが展開された。

(無題)


暴走する資本主義と民主主義の機能不全


 セッションは2部構成で、第1部は学生によるプレゼンだ。資本主義の歴史を解説し、定義した上で問題点を挙げた。このプレゼンテーションの特徴的なところは、資本主義の成長と並行して、民主主義の歴史を解説している点である。資本主義をコントロールするはずの民主主義が機能不全に陥り、資本主義が暴走するという、 資本主義の民主主義の2つの相互関係を説き、第2部へとつないだ。

(無題)学生プレゼンの様子


民主主義は機能するのか?


(無題)今井理沙さん(11年卒)


 今井理沙さん(11年卒)のキレのある司会で第2部がテンポ良く開始された。上山教授は「私の人生を振り返ると、資本主義の暴走をやっていた(笑)」と、運輸省やマッキンゼーなどでの自分の経験を踏まえつつ語る。
 「資本主義は少なくとも200年は続くと思う。民主主義がそれを制御するものとしてずっと機能するかと言えば私は疑問だ」と民主主義の機能に対して懐疑的に語る上山教授。
 対して堀教授は「資本主義そのものを変えるのは難しい。政治の介入によって一定の規制を与えるしかない。しかし、民主主義の可能性に対する考え方は、上山教授と違っていて、機能不全以前に民主主義はその役割を達成し得ていない。だから、まだまだ可能性がある」と語った。

人間任せの資本主義


(無題)奥田敦総合政策学部教授


 議論が資本主義に及んだところで、ミッドタウンへの道中に渋滞の影響を受けた奥田教授が、遅れて到着した。「こんな道路渋滞も資本主義による問題ですね」と冗談で会場を沸かすと、「資本主義、民主主義の問題は人間を信頼しすぎていること」と議論を展開した。
 「イスラームの場合でいえば、儲けたならばそれを共同体に還元しなければならないことが義務になっている。ボランティアなどの人間の心に任せるものではない。資本主義は、義務として儲けた分を社会に還元するという部分が弱い」と資本主義の脆さを指摘した上で「それでも資本主義がこれまで続いているのは、倫理の下支えがあったからだ。これからも資本主義を活かすならば、ここを考えなければいけない。これは個人の道徳に留まらない社会の問題だ」と語った。

これからの資本主義との戦い


(無題)上山信一総合政策学部教授


 「それでも資本主義はパワフル」と上山教授。「かつては、労働者と資本家の戦いであったが、今は、システムと人間の戦い。資本主義の勝利者のような顔をしている大企業の社長であっても、解任されてしまえば、ただの失業者だ」と話す。「フローに関しては、福祉国家などによって分配のルールはある程度コントロールできる。一方、ストックをどうするか。これが難しく、これからの資本主義との戦いになるだろう」とこれからの闘争を語る。

欠落するスピリチュアルな価値


(無題)堀茂樹総合政策学部教授


 資本主義や民主主義をコントロールするには、個人を律することだけが解決策なのかという話に議論が及ぶ。その中で堀教授は「スピリチュアルな価値」という一つの軸を唱えた。「スピリチュアルな価値が欠落しているのは確か。それよりも政治の価値、さらに経済の価値を追う世の中になっている」と堀教授。スピリチュアルとは、人が心身を捧げることができる価値のことだ。かつては、宗教や国家、革命を指していたが、「そういった垂直的なものにスピリチュアルはあるのではなく、もっと身近な家族や友人への愛にこそ聖なる価値はあるのではないだろうか」と今後の世界を語った。