今年度も多くの人で賑わうORF2013。今回、なんと全てのエリアにブースを出展している井庭崇研究会を取材した。

iba1井庭崇総合政策学部准教授




–今年のORFの準備はいつ頃から始まりましたか?



 今年は2月からプロジェクトを開始しました。春学期の終わりの段階でORFに出展するものを選別し、夏休みの間にブラッシュアップしました。直前になっても毎週磨きをかけ続けるなど、長期的に準備しました。特に今年は、このORF2013で成果を披露することを目標に、1年間の研究会のプランを立てていました。

 プランニング自体は前年度の12月から始まりました。昨年のORFが終わった段階で、プロジェクトを決め、新規生の募集もかけてしまいました。2月からプロジェクトを動かすためです。これまでの経験から、4月からじゃ間に合わないってことが分かったので、春休みを待たずに始めました。こうすることで、1年生もORFに関わることができます。前倒し、前倒し、ですね。


–昨年との違いとして、今年は初めて5つ全てのエリアで出展されると聞きました。



 実は、もうひとつあって全部で6つあります。井庭研ブースとしては5箇所ですが、「ジェネレーティブビューティープロジェクト」もブースを出しました。昨年は、「コラボレーション・パターン」というように、井庭研で大きなものをひとつ作っていたのですが、今年は、40人規模の研究会で20ものプロジェクトが同時並行で動いているんです。つまり、いろんなタイプの「パターン・ランゲージ」を作るということを実践しています。だから僕は、カンブリア爆発だ! とか思っているんだけど(笑)。

 今年はすごいですよ。つっこみのパターンからウエディングのパターンまであります。多種多様な場で、「パターン・ランゲージ」が使えることを表現したかったので、ひとつの井庭研ブースで「ほら、こんなに!」ではなく、それぞれの領域に井庭研が出向いて、小さい出店みたいな感じで見せていく方がいいんじゃないかと思ったのです。井庭研に興味がある人だけでなく、各領域に興味がある人が、こんなのもあるんだ、と知ってもらえるようになります。

iba4ブースの様子




–来場者は各ブースでどのように研究に触れることができるのですか?



 たとえば「ジェネレーティブビューティープロジェクト」では、新しいシステムとして、写真と言葉で日常を書き込む「フォースプレイス」というサイトを作りました。SNSのようにせわしく流れてくるのではなく、落ち着いていて、隠れ家的な日記のようなものです。ふっと落ち着いて、自分を見つめ直せるようなサイトになっています。これは、今回WEBサービスとして、ORF開催と同時に公開しますが、ORFのその場でも、手書きで体験してもらうことができます。

 他にも井庭研では、セッションやオープンエリアでも発表の場を設けています。こうして場をちょっとずつ変えながら、研究に触れてもらうことができます。また、内容だけじゃなくて、表現もこだわっています。たとえば、つっこみのパターンは、漫画にようになっていたり、おもてなしのパターンは、水彩画になっていたり。ORFを通して、新しい表現がたくさん生まれてきています。こうしたバリエーションも楽しんで頂きたいです。

iba2ジェネレーティブビューティープロジェクト




–スタンプラリーも実施されるそうですね。



 今回、あちこちにブースがあるので、ただ分散させるのではなく、それらをつなぐ必要があると思いました。その時に思いついたのが、スタンプラリー。5つもブースがあると、どこに行ったか分かんなくなっちゃうと思ってね。1つだけじゃなくて2つ3つ聞きたいな、って思わせるような形がよかったんですよ。

 今回の井庭研のテーマは、「創造社会へのパスポート」。創造社会とは、自分たちで自分たちのモノを作ることができる社会。「パターン・ランゲージ」は創造を誘発する役割があります。だから、パスポートなのです。パスポートには地図が描かれていて、会場が世界地図のようになっています。そこに、入国スタンプとして各ブースのスタンプを押してもらう、というコンセプトです。サイズも本物と同じ。ちなみに、スタンプそのものも自作です。全て集めると井庭研オリジナルのステッカーがもらえます。楽しみにしていて下さい。


–来場者も主体的に楽しめますね!



 去年も人が賑わって、アンケートでも高評価を得ることができましたが、だからと言って同じことをやってもつまらないな、と思いました。コンテンツを磨いただけでは、去年と一緒になっちゃうので。「創造」を謳っているのにもかかわらず、去年の成功体験をそのまま使うというのは、嫌で。僕たちなりの、現状に合わせた、一番いい発表の形は何か? それが、今回各ブースを分散させ、それを巡っていくという形だったのです。スタンプラリーで巡るということは、領域の広さを実感させるものですから、来場者の方には、「パターン・ランゲージ」の広がりも味わって頂きたいです。

iba3パスポートを象ったスタンプラリーも実施




–当日の目玉企画について教えて下さい。



 「サバイバル・ランゲージ」を紹介します。これは数あるプロジェクトのひとつですが、日頃の備えや地震が起きた瞬間の行動を「パターン・ランゲージ」で支援するという試みです。防災研究をしている大木聖子研究会(以下、大木研)からの聴講生もいて、このプロジェクトに参加してくれています。こんなことができるのも、複数の研究を跨ぐことのできるSFCならではですね。最近また地震が増えつつあるなか、このパターンは覚えやすくて自分なりに生活に取り入れられるので、イチオシです。

 また、連動企画として、海外出張の際に撮りためてきた「パターン・ランゲージ」の関係者のインタビュー映像の紹介もあります。各インタビューは、ORFに合わせて、随時特設サイトに連載していきます。


–ORFという場を最大限活用しようという試みが散りばめられていまね。



 そうそう! 来年はまた違う形になりますが、今年はこのようにしました。今年ならではですね。その場の体験ひとつにとどまらず、継続して味わうことのできる仕組みも提供したかったので、今回はWEBサイトも運営するに至りました。興味を持った企画があれば、パスポートに記載されているURLをチェックして見て下さい。


–最後に、当日ご来場される方に対してメッセージをお願いします。



 「パターン・ランゲージ」は、自分たちのよりよい未来をつくっていくためにあるのですが、生活面もあれば、仕事面もあり、あらゆる場面に出てきます。昨年までは、その説明をすることに重きを置いていました。しかし今年は、そんなあらゆる場面、領域にパターンが存在することを実感してほしいと思い、様々な工夫を凝らしました。来場者の皆さんには、自分にとっての「発想のきっかけ」を探しながら、ブースを渡り歩いてほしいです。



 細かいところまでこだわりが見える、井庭研の「パターン・ランゲージ」。興味を持って頂けただろうか。明日、23日(祝)もミッドタウンにて、ブース展示やセッションがあるので、ぜひ足を運んでもらいたい。