現時点で十分な事業資金が集まっていない未来創造塾。この状況を打破すべく、卒業生有志が「失敗伝説」という寄付企画を進めている。寄付とともに卒業生の失敗談を集め、生協食堂のトレイに載せるという珍しい企画だ。締切が来週20日(金)に迫るなか、SFC CLIP編集部は、失敗伝説事務局に同企画の経緯を取材した。

慶應義塾のグローバル・ゲートウェイとして創設される未来創造塾。滞在型教育研究施設が秘める可能性に注目が集まっている。その構想には、大学側や教員だけではなく、SFC生や卒業生も参加して、盛んな議論が為されている。

「失敗伝説」Webページ(http://legend-of-failure.jp/)の様子(24日18:00現在)

失敗談が生協食堂のトレイに 新しいカタチの寄付企画

「失敗伝説」とは、SFCの生協食堂のトレイに失敗談を1000人分載せるというプロジェクトだ。学生が先輩の失敗談を読むことによって「失敗しても、大丈夫」と感じ、挑戦する勇気、そして力を与えることを目的にしている。
 成功体験ではなく、失敗体験を取り上げるという珍しい企画であり、TwitterやFacebookなどのSNSで多くの卒業生が参加を呼びかけ、一部で話題となっている。
 

「ただ寄付するだけでは面白くない」 カヤック柳澤さんが呼びかけ

失敗伝説のきっかけを作ったのは、面白法人カヤック(株式会社カヤック)代表取締役の柳澤大輔さん(環96年卒)。義塾から寄付の依頼を受けたとき、「ただ寄付するだけでは面白くない」と考えた。そこで、SFCらしい新しい寄付のカタチを生み出そうと、柳澤さんが卒業生の有志を募ってアイデアを持ち合い、意見を交わした。
 いくつかのアイデアを義塾に提案したところ、「生協食堂のトレイに先輩からのメッセージを載せる」というアイデアが、未来創造塾開設準備室長を務める村林裕総合政策学部教授の目に留まった。村林教授から「これなら実現可能ではないか」という回答をもらい、企画のベースが決まった。
 当初は、先輩からの告知を載せるというアイデアで進んでいたが、「告知だと読まれないのではないか」という問題点が浮かび上がった。「学生に読んでもらうにはどうすればよいのだろうか」という議論に的を絞り、熟考を重ねた結果、「失敗談を載せる」という結論に至ったという。
 

失敗談はリアリティがある!? ―なぜ「失敗体験」なのか

Webページにはすでに失敗談が並んでいる。(http://legend-of-failure.jp/より)

卒業生たちの「成功体験」は、ニュースやインタビュー記事でよく目にする人も多いだろう。しかし、今回取り上げられるのは「失敗体験」だ。成功ではなく、あえて失敗が選ばれたのはなぜなのか。
 同事務局は「失敗談にはリアリティがある」と次のように回答する。成功体験は自慢話になりがちであり、脚色される場合が多い。しかし、失敗談はありのままに語られやすい。そもそも、世の中は失敗することの方が多く、誰にとっても身近なことでもある。また、「人の不幸は蜜の味」ということわざがあるように、成功談よりも失敗談の方が学生は読みたくなるのではないか、という狙いもある。
 

「変わらずに、変わり続けること」 失敗伝説に込められた思いと期待

失敗伝説には、「変わらずに、変わり続けること」というSFCだからこその思い、そして期待が込められている。変わるためにはチャレンジが必要だ。しかし、チャレンジには失敗がつきものである。多くの先輩が歩んだ、変わらずに変わり続けるということを、「失敗伝説」を通して後輩に伝えようとしている。
 

参加はWebページから 締切は来週20日(金)

失敗伝説への参加は、Webページから行うことができる。

  1. 失敗談の投稿
     フォームから300文字前後の失敗談を投稿する。匿名の投稿も可能。
  2. 寄付金の支払い
     トレイ1枚につき、1口10,000円の寄付金の支払いとなる。口数に上限はない。
  3. 食堂トレイに掲載
     事務局で内容や入金を確認した後、失敗談がSFCの生協食堂のトレイにシールとして貼られる。
     
     失敗伝説に伴う寄付は1口10,000円となる。未来創造塾への寄付は5,000円とし、残りの5,000円は失敗伝説の経費として使用される。経費に余剰金が生じた場合は、未来創造塾の寄付金に充てられる。

Webページでも失敗談を閲覧できる。(http://legend-of-failure.jp/より)

実際に生協食堂のトレイに掲載される期間は4月1日-2016年3月31日の1年間だ。Webページ上ではすでに多くの失敗談を読むことができる。
 

まだまだ募集中!! 生協食堂を失敗談で埋め尽くそう

10日(火)18時の時点で、41の応募、そして155万円の寄付が集まっている。締切は20日(金)。ぜひ、あなたの失敗談でSFCの新たな挑戦を応援しよう。