ORF2015の2日目の21日(土)、セッション「SFCコスモポリタン―多言語入試と多言語教育」が開催された。総合政策学部と環境情報学部では2016年度より、一般入試の外国語科目の一部にドイツ語とフランス語が導入される。本セッションでは多言語入試を導入する意図を明らかにするとともに、多言語教育の意味をあらためて問い直す。

SFC CLIP編集部ではコラム『Languages』にて、多言語入試の導入に向けて、昨年12月に國枝孝弘総合政策学部教授にインタビューをしている。こちらも参考にされたい。

■パネリスト

  • 藁谷郁美 総合政策学部教授(ドイツ語)
  • 宮代康丈 総合政策学部准教授(フランス語)
  • 長谷部葉子 環境情報学部准教授(英語)
  • 平高史也 総合政策学部教授(ドイツ語・日本語)
  • 白井宏美 総合政策学部准教授(ドイツ語)
  • 堀茂樹 総合政策学部教授(フランス語)

ついにSFCでも「多言語入試」導入! その意図とは

2016年度より、総合政策学部と環境情報学部の一般入試の外国語科目が多言語化される。従来の外国語科目の問題は英語のみであったが、来年度より問題の一部をドイツ語またはフランス語で解答できるようになる。「SFCに入ってからは多言語だが、入り口が英語だけだった。多言語入試の導入により、入り口が少し多言語化される」と平高教授は述べた。

「外国語の入試問題のすべてをドイツ語やフランス語にせず、英語を必須とした意図は何か」という来場者の質問に対し、平高教授は「3つ以上の言語を操る『複言語話者』を取り込みたいため」と説明した。

多言語入試について説明する平高教授

多言語入試について説明する平高教授

多言語入試自体は他学部や他大学で実施されている例もある。しかし「ごく少数の受験生しか利用していないのが現状」だと藁谷教授は指摘する。慶應義塾内でも多言語入試をとりやめた学部もある。このような状況にも関わらず、いったいどのような意図でSFCは多言語入試を導入するのか。

意外と知られていない、SFCの充実した外国語教育

SFCの外国語教育は必ずしも言語を学ぶことそのものを目的とはしておらず、研究や自己発信のためのツールとして位置づけられている。このことは14学則で「言語コミュニケーション科目」が「基盤科目」とされていることからも読み取れる。

SFCでは「言語コミュニケーション科目」として、アラビア語、イタリア語、英語、スペイン語、中国語、朝鮮語、ドイツ語、日本語、フランス語、マレー・インドネシア語、ロシア語という、11の言語を学ぶことができる。豊富な言語学習の土壌をもとに、いわゆる「第二外国語」にとどまらない外国語の実用的な運用能力を育てるように設計されている。外国語大学でもなければ外国語学部でもない大学や学部で、ここまで充実した外国語教育を受けられるというのは極めて珍しい。外国語を専門としない学生でも多種多様な外国語を実用的なレベルにまで学習できる環境が、SFCには用意されている。

外国語教育を受けることを目的にSFCに入学する学生も少なくないという。堀教授は「東京外国語大学や上智大学外国語学部への入学を辞退してSFCに入学した学生を3人知っている」と意外なエピソードを明かす。

とはいえ、SFCの充実した外国語教育は広くは知られていない。「充実した外国語教育で知られる高校を訪れた際、SFCの外国語教育について話すと驚かれる」と平高教授。外国語教育としては東京外大や上智大などが有名だが、そこにSFCの名前は挙がらない。藁谷教授は「SFCの外国語教育をどのように世の中に発信していくべきかが課題」と強調した。

SFCの外国語教育の魅力を語る藁谷教授

SFCの外国語教育の魅力を語る藁谷教授

「多言語入試はSFCが社会へ投げかけるメッセージ」

「日本では、中等教育で英語だけを教えている学校が9割を超える。ここまで英語一辺倒な言語教育をする国は、世界的に見て極めて珍しい」と堀教授は切り出す。「確かに、近年英語の重要性は圧倒的に増してきている。しかし、多様性を認めることができなければ、人類は『ひとつ』にはなれない。異国の文化、他者の文化に関心をもつということが重要だが、日本ではあまり行われていない」と苦言。「日本の中等教育に対して、ひとつの『発信』をするという志をもって、我々は多言語入試を導入した。日本全体に対して『提言する』というつもりではじめる」と続けた。さらに藁谷教授は「我々が社会に投げかけるひとつのメッセージを、多言語入試に込めている」と補足した。

多言語入試に込める思いを語る堀教授

多言語入試に込める思いを語る堀教授

セッションのタイトルにある「コスモポリタン」は「地球市民」という訳があてられ、国籍や民族の枠を越えて生活する人々のことを指す。SFCの卒業生には長谷部准教授の研究会での活動が契機となりコンゴでアルティメットフリスビーを普及させた卒業生や、ドイツ語海外研修が契機となってドイツ語を学びドイツ人との共著で書籍を執筆する卒業生もいる。SFCはまさに「コスモポリタン」を体現するような卒業生を多く輩出しているのだ。

卒業生の壮大なエピソードを語る長谷部准教授

卒業生の壮大なエピソードを語る長谷部准教授

日本の外国語教育が「英語一辺倒」から脱し「コスモポリタン」を育成できるような社会になるために、SFCの外国語入試が果たせる役割はどれほどのものだろうか。今後の動向を注視していきたい。

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