来る18日(金)および19日(土)、六本木・東京ミッドタウンにてSFCの研究発表の場「Open Research Forum 2016」(以下、ORF)が開催される。今年度のテーマは、「かえる」。多くの同音異義語が存在するこの言葉だが、この「かえる」はいったい何を意味しての「かえる」なのだろうか。昨年に引き続き、ORF2016実行委員長を務める中澤仁環境情報学部准教授に話を聞いた。

「かえる」が未来を「変える」?

ORF実行委員長を務める中澤仁准教授

ORF実行委員長を務める中澤仁准教授

— 今年度のORFのテーマ「かえる」にはどのような思いが込められているのでしょうか。

突然ですが、皆さんは発生生物学の権威である黒田裕樹先生(環境情報学部准教授)をご存じでしょうか。一般に動物は「脊椎動物」と「無脊椎動物」に大別されますが、われわれ「脊椎動物」は進化のどの過程で誕生したと思いますか? 黒田先生は、ずばりそれを突き止めた方なんです。彼の研究にはカエルが一役買っています。そんなORF実行委員にも在籍している彼の提案もあって、今年度のORFテーマは「かえる」になりました。

……などという楽屋話もありますが、もちろん他の思いも込められています。ORFは今年で21回目、そしてSFCは創設26年目です。すでに四半世紀を迎えているわけですね。25+1ということは、これはある種の1年目。四半世紀を一周し、また新たな1年目を踏み出す上で、一度初心に「返る」という意味がひとつあります。

SFCも、25年も経てばいろいろなところが成熟し、落ち着いてくると思うんですよね。僕はSFC5期生ということもあり約20年前のSFCの様子を知っているのですが、さらに先輩の1期生の方々に話を聞くと、かなり滅茶苦茶なことを当時やっていたと聞きます。それに比べ、最近のSFCは全体として随分と落ち着いており、先生たちも小慣れてきてしまったのかあまり変化が感じられません。だから、創設当初のような活気あふれるキャンパスに「返って」ほしいんですね。

創設当初のSFCは、皆が世の中を変えることに燃えていました。それぞれが問題を見つけ、それを解決することで世の中が「変わる」。そしてそのようなSFCを目指すには、SFC発の技術や制度、「SFC発の○○」が必要不可欠です。そうしたものがSFCから「孵って」いってほしいという思いも込められています。またこれはORFに直接的には関係ありませんが、2日目の夜にホームカミングデーという催しが予定されています。これはSFC三田会が主宰する同窓会のようなものなので、ORFはSFCの卒業生にとって "昔いた場所に「帰る」"場所でもあるんですよね。

— 今年度も数多くのセッションが予定されていますよね。セッションにもORFのテーマが反映されているのでしょうか。

「かえる」をセッションに反映させたものとしては、1日目(18日)に開催される小川克彦先生(環境情報学部教授)の「人工知能はネットビジネスをどのように変えるのか?」、そして古谷知之先生(総合政策学部教授)の「ドローン共創社会 〜デジタル社会が導く第4次産業革命、ドローンと協働する社会のあり方と技術展開〜」があります。いずれのセッションも、「世界をどう変えていくか」に重きが置かれています。

一方、IT以外の技術からの「変える」に焦点を当てた、神保謙先生(総合政策学部准教授)が中心となって開催される「安全保障と技術の新展開」というセッションもあります。安全保障には、ミサイルや潜水艦といった技術が大きく絡んでいる。そうした先端技術は世界の軍事バランスをどう変えていくのか。ひいては、国の安全保障に関わる技術そのものはどう変わっていくのか。このような議論が予定されています。

また2日目(19日)には、「人工知能は2020年に東京をどう変えるか」という徳田英幸先生(環境情報学部教授)とNTTドコモの協賛セッションがあります。2020年は東京オリンピックの年ですよね。現在、人工知能に関する研究は第3波に差し掛かっており、インターネット上には人工知能を用いた機械学習が簡単にできるツールがたくさん転がっている状況です。それくらい人工知能が一般人口に膾炙しつつあるわけですね。来る2020年まではあと4年しかないけれど、4年もあれば世の中はガラッと変わるし、変えられます。そんな意味で東京オリンピックは、世界に先駆けての人工知能革命となるかもしれません。

もちろん、「かえる」のテーマに固執することなく、いろいろな先生方が好きなように発表をし、それを聞きに来た方々が独自に楽しさを感じていただければと思っています。

マンネリ化したORF? 今年の特徴は

— 近年ORFがマンネリ化しつつあると聞きますが、それは本当でしょうか。

今年度のORFが去年までと大きく違うかというと、特にそういったことはありません。そろそろ別の会場も検討した方がいいかもと思っているんです。ORFは毎年多くの先生方から出展希望をいただくのですが、キャパシティの都合上、すべての要望に応えることはできていません。もしすべての方に希望通りの出展面積を割り当てられれば、もっと効果的な展示ができると思いませんか?

ですけどすぐに会場を変えるというわけにもいきません。たとえば候補地の会場の予約が向こう1年間いっぱいだったり、あるいはとてつもなく高額だったり……。あとは六本木でORFを行うこと自体にブランド力を感じている人も、もしかしたらいるんじゃないかな(笑)?

したがって、今年度のORFも大筋は変わりません。ただし、今年はプラチナスポンサーが3社と例年に比べ多く入っていただいています。スポンサーとの共同研究には注目ですね。例えば、渡辺光博研究会のブースでは「杜仲茶」が展示されます。杜仲茶は若返り効果とかのある胆汁酸の分泌を促進するらしく、渡辺光博先生(環境情報学部教授)とプラチナスポンサーである小林製薬さんがこの効能について共同研究されています。ブースでは、この研究の成果を展示しつつ、当日アンケートに答えてくれた人には杜仲茶を提供するそうですよ。

このように、SFCの研究会は様々な企業との共同研究を行っており、ORFではそれらを巧みに展示しています。

初めてORFへ参加する人へ向けて ORFのすゝめ

— 初めてORFへ参加する人へ向けて、楽しむコツのようなものがあれば教えてください。

まだ研究会に所属していない学生にとって、ORFは自分がどの分野に関心があるかを探す場としてとても適しているのではないでしょうか。どこの研究会に入るか考えながら展示を見て回れば、「あぁ、この研究会はこんなことをやっていたのか」という新発見がきっとあると思います。

そして何より、ORFは学生が主体となって発表する場です。各ブースへ直接足を運んで積極的に質問することも大切ですが、一般の方々が学生に質問し、それに答えるシーンをじっと観察することも重要です。「自分は将来こんなことができるようにならなくてはいけないのか」「SFCの学生はこうでなくてはいけないのか」、そういった先輩方のロールモデルが見られたらいいですね。逆に出展する側の学生も、そういった見方で見られることを自覚し、後輩たちの見本となる対応を心がけてほしいですね。

セッションについては、セッションの場で先生方が何を話すかがその実かなり注目に値します。私もそうですが、学生から見た教員は、普段はただの「授業する人」に過ぎません。しかしセッションでは、教員は授業とは独立した自身の考えを伝えることができます。これにより、「この先生は普段こんなことを考えているのか」「先生たちはこんなことを発信しようとしているのか」といったことを把握できます。

また、セッションでは外部の方々も多数お呼びします。普段のSFCは藤沢に閉じていることもあり、大学の外の考えは見えづらい環境です。是非ORFへおもむき、メディアを介さない一般の方々の生の声、そして世の中に存在する様々な考え方を見て聞いて知ってほしいと思います。

SFC創立から26年 変わったのは誰だ!?

— 突然ですが、先生から見てSFC生は「変わる」必要があると思いますか。

君はどう思う? 私の観点から見れば、学生は変わらなくてよいと思います。より正しく言えば、学生は25年前から変わっていないと思うんです。

まずSFCの学生を捉えるには、「1、2期生」と「それ以外」という捉え方をしなくてはなりません。なぜなら、1期生はキャンパスに自分たちしかいなかったから。この広いキャンパスにたったの900人しかいない。そうすると流石にそれは普通じゃないから、その人たちはある程度特殊と言えるでしょう。2期生に関しても、先輩がほとんどいない中でキャンパスを探索していかなくてはならなかったから、同じですね。そんなイレギュラーな環境を差し引いて考えると、3期生以降の学生はほとんど変わっていないと思うんですよね。むしろ変わったのは教員の方なのではないでしょうか。具体的には、大人しくなっている気がします。

どういうことかというと、教員が学生とつるんで何かをすることがめっぽう少なくなりました。昔はフレッシュマンキャンプという、今の初期メンターのような制度がありました。およそ15人くらいの人数で、アドバイザリーグループを作っていたんですね。そのアドグルで、4月の開校記念日にどこかへ泊まりがけで行ったり、キャンパス内でバーベキューをしてたんですよ。でもだんだんと教員の熱意が下がってきて、なくなってしまいました。結果、学生と教員とのコミュニケーションが至って希薄になりました。そして、やがて学生が見えなくなっていったのでしょうね。

— 最後に、先生がORFに期待していることを教えてください。

出展に関わる学生にとって、ORFはこの上ないトレーニングの場です。ORFは自身の研究成果を発表する場ですが、"誰に対して"発表するかということを忘れてはいけません。ORFには一般の企業の方や、父兄の方、はたまた受験を控えた高校生など、非常に多くの方々がいらっしゃいます。たとえ彼ら全員に全く同じ話し方をしても、絶対に同じようには伝わらないし、伝えられない。

もちろん、自分の研究の価値を本質的にきちんと理解し、その理解をそれぞれの相手に合わせた形で伝えるのはものすごく難しいことです。しかしながら、大学を卒業し就職すると、こうした機会はより多くなります。自分の取り組んでいることをきちんと理解し、相手にわかりやすく伝えること、この2つは非常に大切なトレーニングになるし、頑張る甲斐があると思います。今年度運悪くORFに出展できなかった学生さんは、是非来年度は研究会の先生を焚きつけて、出展を目指してくれたら嬉しいですね。

— ありがとうございました!

SFCの創設から四半世紀が過ぎ、新たな一歩を踏み出したORF。SFC生諸君も、一度「カエル」になってみてはどうだろうか。

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