「学生みんなが調査官。アメリカから世界をみる」
 日本の政策決定者の依頼を受け、アメリカの特定の問題について研究調査を行ない、自分が政策決定者だったらどういった判断をするかというケーススタディの形をとっている草野研究室。今回のテロ事件とその後のアメリカの報復行動に関しても熱く議論が交わされたことだろう。21日にo16で行なわれた「草野研究室説明会」にて、長井祐介さん(総3)と鈴木広崇さん(総2)に研究会の活動内容について話を伺ってみた。

【2023/10/17更新 現在のWEBに合わせて書式を更新しました】

—— どんな研究をしていますか?

基本的にグループワークの形式をとっています。報告方法には「委託調査」と「ロールプレイ」の二つの方法があります。先生からお題が出て、発表するもが委託調査。「ロールプレイ」はハーバード大学の公共政策研究科(ケネディスクール)で行なわれているようなケーススタディです。ケーススタディというのは、なんらかの事件や政治的な決定などの記録を見て、自分達が政策決定者だったら、どういう判断をするかということを考えようというものです。このケーススタディは今学期から始めたもので、来学期も続けていく予定です。「委託調査」というのは、WEBにある報告書を参考にして欲しいんですが、簡単に概略をまとめて自分達なりの意見を発表するというものです。

—— 研究会の目的、コンセプトは何ですか?

世界を動かす原動力として、リーダーシップというところにアメリカが必ず関わってくると思うんです。アメリカを知り、アメリカのことを説明できるようになろうというのが一番の目的であり、コンセプトです。

—— グループワークのテーマはどのように決めているんですか?

先生から毎回、これを調べてきてくださいと、2週間前に発表され、それに対して学生は2週間の間に準備するという形をとっています。テーマは、先生と大学院生が相談して決めているんですが、タイムリーな時事問題やアメリカの政治制度の例としていいとしてケースを扱ったりします。
 この前、合宿のときに扱ったのは、1980年に起きた、在テヘラン米国大使館に対する、イラン学生による占拠事件です。それに対して、ホワイトハウスがどのような行動をとったかというケーススタディを行いました。メディア、政治政策過程、イランとアメリカの関係、世界的な視点など、様々な視点があります。「この視点から見たときはどうなのか?」「抜け落ちている部分はないのか?」などというような先生や院生からの質問がでます。それに答えられるということも大切なんですが、それ以上に答えていく過程で、そんな視点があったのか、ここは確かに足りなかったとか、気付かされることがあるんです。事例研究を通じて、もっと本質的な政治とメディアの大きな枠組みの中で自分の意見や考えを確かめることができるという点でとても有意義なものだと思います。

—— 質問に答えるのは大変ではないですか?

この前の合宿の時は、博士の方が質問してきたので、「気がつかなかった」だとか、「ここはつっこまれると思った」というところを質問してくるので、受け答えに窮する場合があるんですが、質問は深めるためのものなので、厳しいけれども、とても勉強になります。

—— 調査はどのように進めていくのですか?

雑誌、論文、新聞、書籍、政府の公式発表など、あらゆるものを扱います。グループワークでは、まず調査をし、それをどうまとめるかということが第一になってきます。意見をもち、意見を交わすというのは、その後です。2週間あったら10日くらいは情報収集とその整理に追われて、ここから何が見えてくるのかということを話しあって、だいたいいつも、ひとつの意見にまとまりますね。

—— 今後のビジョンは?

9月に起きたテロをひとつの大きな軸として、日本の立場から、アメリカの立場から、メディアの立場から、中東の立場からと、いろんな切り口で見ていくんです。臨機応変にその時々のトピックをつかまえて、それをアメリカや日米関係に関して掘り下げていくということの関しては、今後も変わらないと思います。それは、時として、理論などが若干弱くなってしまうことがある側面もあると思うのですが、それをある程度犠牲にして、自分達が自己責任で行なうことによって、タイムリーな話題を掘り下げていけるというのは、大きいと思います。あと、草野研究会の強みとして、博士と修士の方が一緒にやっているということがあるので、プレゼンでの疑問点などを聞いて、参考図書を紹介してもらったり、補足で意見をもらったりということを、もっと体系立てて、より積極的にやっていけたらなと思っています。

—— 他研究室や企業とのコラボレーションはありますか?

防衛大学の村井先生のゼミと年に一度、合同ゼミを行ないます。今年は、テロについてで、日本がテロ対策に関してどのように国際協調ができるかということを議論をしました。去年行なったのが、米中・日中関係でした。草野研が米中関係について、村井先生のゼミが日中関係について調査して、日米中のトライアングルについて考えました。
 あとは、草野先生がメディア検証機構という、報道の内容を分析してそれを広く告知していくという団体があるんですが、そこと草野研究会というのは、比較的密接な関係を持っていますね。研究会生の中からも何人かメンバーになっている人はいます。そういう意味では、その自分達の中だけで政治とメディアが動いているというのではなくて、メディア検証機構というところに身を置いて、活動していくことで、実体験的にテレビとメディアの関係や政治とメディアの関係を学んでいけると思います。

—— 長井さんは、奥田研にも所属しているそうですが、草野研とどのようにリンクさせて研究しているんですか?

実は、僕は9月11日にワシントンにいたんです。テロ事件の報道を現地で見て、直感的にオサマ・ビン・ラディンだと推測したんです。彼らのバックにはイスラム原理主義というものがあるということ、そして、パレスチナでのテロを絶賛する映像が流れたことがきっかけでした。草野研究会にいただけでは、テロのことはアメリカや国際社会などの視点からしかわかりません。イスラムの側からアメリカがどう見えるのかに興味がわいて、今学期履修しました。やはり、アメリカがもっているイスラム観と彼らの自分自身のイメージにギャップがあると思うんです。そういったものを奥田研のディスカッションを通じて明らかになってきました。

—— 欲しいスキルは?

研究会として欲しいスキルというのは特にないですね。国際関係や日米関係、アメリカ政治に興味があればできると思います。

—— 提供できるスキルは何ですか?

他の授業でのグループワークで、比較的中心になってとりまとめることができるということでしょうか。

—— どのような人にすすめたいですか?

あまり勉強の仕方がわからないとか、これまで勉強があまり好きではなかったという人や右も左もわからなかったという人にもいいと思います。グループワークなので先輩方から教わることができます。そろそろ勉強したい、勉強の仕方がわからないという人にはいいんじゃないでしょうか。1年間で成長した人は沢山します。研究会としては、もともとできる人というよりは、成長できるようなやる気のある人材が欲しいですね。

—— お二人が研究会に入ったきっかけは何ですか?

長井さん:国際関係がやりたかったからです。
鈴木さん:草野先生が担当していた「政治システム(今の「戦後日本外交論」)」をとったんですが、その時に、グループワークを通して何か学習していきたいと思ったからです。あとは、国際関係をやりたかったからですね。入ってみて、院生や博士の方からアドバイバスもいただけるし、とてもモチベーションが高い研究会だと思うので非常によかったなと思います。

—— 気になる研究会はありますか?

鈴木さん:研究会全体ではあまりないですね。個人的には奥田研究会や履修している加藤秀樹研究会ですね。そのような比較的草野研の対極に位置する考え方をする研究会で、議論を交わすということが大切なのではないかと思います。
 長井さん:例えば、今回のテロの報復だったら草野研や阿川研の人は報復 賛成と言って、他の研究会の人は報復反対というのが多いと思うんですが、両方に軸足を置いておくと面白いですね。
 鈴木さん:草野研の人はかなり一色になってしまうので、新鮮ですよ、こんなに反対意見があるのだという発見ができて。

—— では、実際に草野研にはアメリカを好きな人が多いんですか?

鈴木さん:いえ、逆に大嫌いという人もいます。僕も特にアメリカが好きというわけではなくて、やはり影響力や存在の大きさを無視することはできないと思うんです。

—— 不満に思っていること、足りないものはありますか?

2週間のグループワークがやりきりになりがちだということですね。今週の研究会では、このようなことが発表され、このような質疑応答があったということがあったということをメーリングリストで流すだとか、研究会の会報みたいなのを作ってくばるとか、いろんな媒体を使っての情報の共有があったらいいなと思います。

—— 研究会のトレンドは?

あとは、草野先生のログイン名である『bobby』の看板です。アメリカに行った草野研の院生がおみやげに『bobby』と書いてある車のナンバープレートを買ってきたんです。研究室のドアに貼ってあります。

—— 最新キーワードは何ですか?

『寸前暗黒』(黒川小太郎著)という小渕首相から小泉首相までの流れを書いた実名政治小説です。草野先生のオススメです。

—— 主な就職先はどこですか?

メディアを中心に民間シンクタンク、コンサルティング、政界、進学など様々です。

—— アクセス方法は?

WEBを見てみてください。メールは総合政策学部4年 我那覇圭さん([email protected])まで

—— 一言PRをお願いします。

「エグイ」というイメージがあると人も多いですが、そんなことはありません。前提知識はの必要は特にないので、やる気のある方を待っています。
 なお、草野研究室は1月28日(月)にも、5:00から16:30にかけてo13にて説明会を行なう予定だ。興味がある方は訪れてみるとよいだろう。

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