塾野球部の4年間、慶應が勝つために -野球はなくなったら困るもの 第4回:長田秀一郎さん(総4、体育会野球部投手)
第4回では、慶應義塾体育会野球部でエース投手として大活躍中の長田秀一郎さん(総4)にお話を伺った。AO入試で99年にSFCに入学し、1年生の時から神宮で活躍している。今季六大学リーグ戦では、レベルの高い投手群の中、1.31と好成績を修めた。学外活動として、横浜ベースターズのキャンプや、全日本大学野球選手権大会に参加するなど将来有望な選手の一人として注目を浴びている。先日行なわれた慶早戦について、また長田さんの野球に対する姿勢に迫った。

「慶早戦だけ伝統がある」
今季リーグ戦の始め、ちょっと怪我をしていたから、どうなるか分からなかったのですが、東大戦で初めて投げて、21奪三振という良い結果になったし、慶早戦までだんだん調子は上がっていたから、よかったとは思うんですが。
今年は2年、3年、4年生も含めて慶早戦に初めて出る選手が多かったから、その分、かたくなってしまったかなと思います。でも春に経験を積めたと思えば、秋は戦えると思います。今年の春も一点差で負けるなど惜しい試合がずいぶんあって、それは経験が無くて甘かったと考えれば、秋は大丈夫だと思います。
六大学の試合に限らず、他の大学の試合と比べても、慶早戦だけ伝統があって、あれだけ観客が入るのはないので、やっぱりそこで早稲田に勝ちたいという思いはあります。 みんな慶早戦という大舞台で野球が出来ることを喜びに感じて、それで勝った時、またみんなで喜べたらいいと思っています。
マウンドに立って集中してしまうと、ほとんど聞こえないですね。バッターもそうだと思うんですけど、打席に入って集中してしまうと聞こえないものだと思います。でも慶應が攻撃中で、ベンチから見ている時だと聞こえます。あと、早稲田に点が入った時は紺碧の空がいっぱい聞こえます。(笑)
応援歌は若き血が一番好きです。観客のみんなも若き血が好きだと思うので、たくさん若き血を歌ってもらえるよう、がんばって点を入れないといけませんね。
体育会野球部はリーグ戦優勝するか、慶早戦に勝たないといけない。優勝できなくても慶早戦に勝たなければならない、と言われてきています。しかし、今回はその両方とも出来なかったので、秋に向けてがんばりたいと思います。今回、嬉しかったことが少なかったので、秋はうれし泣き出来るくらいいい事があるように、がんばりたいです。
「野球は今、もしなくなったら困るもの」
小学校3年生の頃、野球を始めました。それまでは剣道をやっていたのですが、野球を初めて練習した時に、剣道より楽しいと思ったので、野球をやるようになりました。最初は守りをやっていて、5年生くらいからピッチャーになりました。小学校の頃は土日練習して、中学で野球部に入りました。高校はスポーツ推薦ではなく、受験して第一志望の学校に入り、また野球を部活でやりました。
高校の時は甲子園に出たいと思ってやっていました。でもそれは無理でした。うちの高校はそこそこ野球は強くて、監督もそれなりに厳しい人だったので、本当に高校野球という感じの厳しいところでしたが、自分の中では楽しく野球が出来ました。
高校の時は、監督にやらされているという部分があったのですけど、大学では、特に慶應は自分でやらないとだめという部分が強いので、そこは大学と高校で違う思います。
始めの頃は、どうしてこんなにやるのかと思ったこともありました。下級生に罰でランニングとかもあって、そういうのをつらいと感じたことはありましたね。十分下級生が悪かったんですけどね。
でも野球部での飲み会は楽しかったりしました。
自分が1年生で4年生を見た時、どう考えても自分は出られないなと思い、試合に出られるよう努力しました。1年生で試合に出られたのは、将来を考えて出させてもらった部分もあったかもしれないのですが、自分の中では頑張って出られたからよかったと思います。
部員約100人のうちピッチャーが20名ほどでいて、でもベンチ入り出来る人は5、6人なんですね。その5、6人の中に1年生はどうしたら入ることが出来るか、また何を練習したら伸びるのか、足りない体力をどう補うか、またそれをどのようにトレーニングしたらいいかなど、そういうことを考えてやっていました。
最初の頃は緊張して、どうなるか不安だったけど、今となっては緊張もしますが、逆に気合いが入るくらいです。
そうなったら、とにかく切り替えて落ち着くしかないですね。もし打たれたとしても、それをひきずっていたら、次のバッターの対戦にもよくないと思うから、そのバッターごとで切り替えるようにしています。そういう精神的な面は、誰かに教えられてできるようなことではないので、自分でやるしかないですね。
自分だったら、一人でランニングしていると落ち着いたりできるので、それが逆に試合でも活かせるんではないかなと思って、試合前の練習でも走っています。最近それに気が付きました。
「精神的に強く、そしてチーム全体も強くなる」
大学までいくと、選手達の意識も高校までとは違い、自分が何をしたらいいか悪いかが、はっきり分かってくると思います。大学生はその分、チームの練習も必要ではあるけど、ひとりの時間になった時に、どうがんばるかが大切だと思います。そういう事をみんながみんな出来たら強くなると思いますね。
また、プレッシャーがかかることが多いです。テストと違ったプレッシャーというか、ここで負けたら後がないというようなプレッシャーに勝つために、自分も強くなっていく。自分のためにやっている部分もありますが、やっぱり慶早戦に勝つため、慶應のためにやってるという気持ちをみんな持っています。慶應を優勝させるという思いから、みんな少しづつ強くなっていくと思います。
今年で4年目になりましたが、やっぱり4年間色々な仲間と、同級生含めて後輩、先輩、そのつながりで、思い出になる練習や試合が出来たことが一番よかったと思います。また、試合で勝った時、特に去年の秋の寺田(総4)のさよならホームランで、負けるだろうと思っていたのに、勝てた。そういう時が一番感動しましたね。でも逆に、さよなら負けしてしまった時とか、勝てると思っていたのにミスで負けてしまった試合も記憶に残りますね。
午前中授業があったら、午後練習に出て、午後授業だったら午前中出るといった感じで、午前午後、約4、5時間練習しています。慶早戦後一週間ほど休みがありましたが、また秋のリーグ戦が終わるまで4日練習・1日の休みのサイクルで練習していきます。その間にテスト休みは入りますけどね。
今やっていて一番楽しいこと。それなりに充実して出来ているかなと思います。今、もしなくなったら困るものですね。
「神宮でやりたかった」
高校の時、球団からのスカウトもあって、SFCのAO入試一回目で落ちた時は、ドラフトがあるからどうするかということで、悩んだ時もありました。でも、大学に行くことが先決、神宮で野球をしたいという気持ちがありました。その頃は慶應が全然強かったので、どうせやるなら慶應でやりたいという思いで、慶應入学を目指しました。
やっぱり何ていうか、自由だと思いますね。授業中にごはんを食べるのも、絶対にありえないことですし、日吉の野球部の人たちに言うとみんな驚きますよ。だからその分、責任があると思います。明るくていい所だと思います。
「大学生活最後エンジョイしたい」
でもSFCにはあまり来ないからね。(笑)たしかに友達がいて、見たよとか言われると、嬉しかったり、がんばる気持ちにもなるからいいですね。もっと学校の友達も増やしたいですね。そのためにも学校に来ないといけませんね。
今まで野球ばかりで、そんなにSFCに来る機会がなかったのですけど、秋の11月で野球は終わるので、それからは最後の最後ですが、SFCに来て、学生生活をエンジョイしたいなと思っています。
一回くらい全部の授業に出席してみようかなと思っています。1学期間の最初から最後まで全回出席してみたいです。
それは全くないです。テストもレポートも一緒です。強いていえば、比較的楽な授業を取っているだけです。単位は順調に取れていて、残り少ないんで、大丈夫だと思います。
大変だったことはたくさんありますね。特に最後のテストが苦労します。例えば、慶早戦前にレポート提出があった時は大変でした。去年まではだいたい出していたけど、今年は出せなかったですね。勉強のことをしている場合じゃないなという時もあるんで、そういう時は大変ですね。
スポーツに関して、共同でレポートを書いたりしています。ほとんど野球部でかたまってしまい、野球のことを書いて提出する感じですね。
「野球はどんなかたちであれ、続けたい」
野球は続けたいと思っています。どんなかたちであれ、野球はできたらいいなと思っています。そのためには、今がんばらないといけないなと思っています。
気になるのはSFCの授業。4年生の野球部のSFC生が自分以外に6人いるので、まず7人で野球をがんばって、あとは7人で単位を取れるようにがんばりたいです。あとSFCで他の体育会に所属している友達もいるから、スポーツは違うけど彼らとも励ましあって、がんばっていきたいです。
SFCも慶應なので、やっぱりもっと多くの人に、野球を含めて、ラグビーの慶早戦やサッカーの慶早戦にも足を運んで、もっと熱くなって欲しいですね。そうすれば、やっている方も、応援する方も、今まで以上に慶應に来てよかったと思うようになると思います。自分達もがんばりますので、SFCの人達も神宮に来てください!!慶應生なのだから、若き血も歌えるようになって欲しいと思います。
【長田秀一郎】プロフィール

生年月日:1980(昭和55)年5月6日生まれ、21歳
略歴:鎌倉学園2年夏に県大会4強。3年夏は西神奈川大会8強入りしたが、甲子園出場は、残念ながらなし。99年慶大入学、1年秋の立大2回戦でリーグ戦初登板。01年秋季に初の東京六大学リーグベストナイン。その後も140キロ代の速球とスライダーが武器の本格派右腕でチームのエースとして活躍。 02年春季リーグでは、対東大戦で9連続奪三振、合計で21奪三振という歴代2位(1位は明大・秋山投手)の記録。
ポジション:投手(右投げ、右打ち)
尊敬する人:父(父が言ったことに間違いはない)
座右の銘:無事是名馬 性格:おおざっぱ・最後にがんばるタイプ、 野球に関してはこつこつやる時もある
履修した語学:英語・マレーインドネシア語
野球の練習がOFFの時にしていること: 寝ている。たまに買い物へ行く。飲みに行く。
SFCでたまにいるところ:食堂のSOUTH
好きな応援歌:若き血