オランダで怒られた。
 自転車専用レーンを自転車が走ってきているのに僕が歩いて渡ったからで、「左右確認して渡りなさい!」と。なんとも不思議な気がした。また、逆に歩道では自転車で走った子供がすごい怒られていた。国が違えば自転車事情もいろいろ。今回は自転車文化についていくつかの国を取り上げてみた。
 日本で自転車は「原則車道を通行する」ことになっているけれど、実際のところ、湘南台からSFCへの歩道が全部そうであるように、多くの歩道は「自転車通行可」なので自転車が歩行者すれすれで疾走するのが大きな問題になっている。でも、原則的には車道を走ることになっていて、どっちなんだと言いたくなる。乗り物の歴史が古く、自転車文化も確立しているヨーロッパでは多くの場合、都市部では自転車専用道路が車道に平行していて、歩道とは隔離されている。つまり、自転車は明らかに車の扱いになる。それだけに、冒頭にあるように歩行者も自転車も守るべきルールがはっきりしている。自転車の文化がある。それだけに自転車の位置付けがはっきりしていて、社会の中で生かしていこうという動きもごく自然にあり、それを後押しする機構もしっかりしている。

オランダ

オランダは世界的にも有名な自転車の国。国土の4分の1が標高0m以下のこの国では地球温暖化による海面上昇は切実な問題で、環境意識が強い。だから、公共交通が充実していて、都市部の通勤時間には車にも負けないくらい自転車が走っている。車道に沿って自転車道が整備され、アムステルダムなど主要な駅には直近に巨大な立体駐輪場がある。だから、駅前に罪の意識を感じながら違法駐輪する必要はもちろんない。管理人だけではなく、自転車屋さんが入っている駐輪場も珍しくなくて、自転車インフラの充実に感動!
 この国では普通の自転車が安くても3万円以上するのが普通で、その代わりに頑丈で壊れにくく、放置自転車なんて問題もほとんどない。自転車を買ってもらうことが大人と認められたようなもので、大切に十数年乗ることもあると聞いた。高価なものだから鍵もバイク顔負けなのが多くて自転車のフレームと同じくらいの太さのワイヤーロックを見たときは驚いた。
 自転車が数千円で売られ、使い捨てされ、自治体はその回収と処分に数億円を投じて頭を悩ませている日本とはだいぶ事情が違う。立派な駐輪場を作ると自転車通勤が増えて、駅前の問題が増えるから良くない、なーんて言っている自治体の職員にぜひ見学に行ってもらいたい国だ。

フランス

シラク大統領が自転車好きで、パリの市長だった時に、自転車道の整備に力を入れていた。フランスでは石油ショックの影響もあって自転車が激増し、自転車は貧乏人の乗り物なんていう雰囲気があったらしいが、最近ではオシャレな乗り物として人気がある。だから、ママチャリは見たことないな。最近、東京の表参道の自転車タクシーが話題になった。パリにも市内の広場で客待ちしている場合が多いけれど、ドライバーがツールドフランス(※注)よろしく、スパッツで腕組みをしていることが多く、なかなか近寄りがたいかも…。

タイ

ヨーロッパばかりなので、ここでアジアで一息。残念ながらタイでは普通に自転車で通勤なんて話は聞いた事がない。サイクルKもここでは話題に乏しい。タイでの自転車は行商に使われている事が多く、干物や果物を荷台で売っている。この国は車にエアコンしかないのが普通で年中暑い。だから自転車だと運動量が多いのかもしれない。それにしても、バンコクの交通渋滞は世界一とも言われ、さらなる公共交通への乗り換え政策が進められている。先日のタイの新聞で運輸大臣が専用車ではなく、乗り換え政策の一環でつくられた高架鉄道を利用して会議に来たことが大きく取り上げられた。乗り物はその人のステータスを表すものであるため、自転車や公共交通機関を利用せずに自家用車を利用する人も多い。そんな中で、自分の見栄ではなく環境を優先させた大臣の行動は特筆すべきものだったのだ。もっとも、タイであまり自転車が使われない理由は見栄によるものだけではない。そもそもタイは非常に暑い国なので、快適さ、利便性の点からも、自転車の利用は大変なのです。
「SFCを、自転車を、もっと楽しく」 サイクルK
(文責:環境4年 松本賢二郎)